【氏と名に関する制度(命名・変更)の全体・変遷】
1 氏・名の変更に関するルールの変遷
2 戸籍法の命名=出生届のルール(概要)
3 戸籍法の『氏・名』変更のルール
4 氏・名の変更許可の共通する基準(目安)
1 氏・名の変更に関するルールの変遷
戸籍法には氏(苗字)と名(名前)に関するルールが規定されています。
本記事では,氏・名に関する制度やルールの基本的事項を説明します。
最初に,氏・名に関するルールが作られた経緯についてまとめます。
<氏・名の変更に関するルールの変遷>
あ 戦前
ア 氏の変更
原則的に変更が許されなかった
イ 名の変更
地方長官の許可により一定の制限内で変更できた
→許可基準が形成されつつあった
い 昭和23年戸籍法施行
ア 氏の変更
家裁による許可制度が新設された(後記※1)
イ 名の変更
すでに許可基準が形成されていた
制度移行直後に行政見解が示されている
※昭和23年1月31日民甲37号最高裁判所民事部長回答
詳しくはこちら|名の変更の一般的・抽象的な許可基準
※斎藤秀夫ほか『注解 家事審判規則(特別家事審判規則)改訂』青林書院1994年p509
2 戸籍法の命名=出生届のルール(概要)
名(名前)は,通常,出生届によって決まり,戸籍に記録されます。
名は完全に自由に決められるわけではありません。
名に使える文字は戸籍法で決まっています。
また,非常識な名を命名すると出生届が受理されません。
<戸籍法の命名=出生届のルール(概要)>
あ 名の文字の制限
名として用いることができる文字には制限がある
使用可能文字=人名用漢字・平仮名・片仮名
※戸籍法50条
詳しくはこちら|名の常用平易性(使用可能文字)の基本
い 命名権濫用
常識を逸脱する名の出生届について
→命名権濫用となることがある
=役所が出生届の受理を拒否することができる
※東京家裁八王子支部平成6年1月31日;悪魔くん事件(未確定)
詳しくはこちら|悪魔くん事件(命名権の濫用・出生届受理の拒否)
3 戸籍法の『氏・名』変更のルール
氏・名を変更するというケースが実際にあります。
戸籍法では,氏や名の変更には家裁の許可が必要とされています。
つまり,氏や名の変更する際には家裁の審判を申し立てるのです。
<戸籍法の『氏・名』変更のルール>
あ 共通する手続
家庭裁判所の許可(審判)が必要である
別表第1事件として分類されている
詳しくはこちら|家事事件(案件)の種類の分類(別表第1/2事件・一般/特殊調停)
い 『氏』=苗字の変更の要件(※1)
『やむを得ない事由』がある場合
→家裁が許可する
ハードルの高さ=高
※戸籍法107条1項
詳しくはこちら|氏(苗字)の変更許可制度の基本(規定・許可基準)
う 『名』の変更の要件
『正当な事由』がある場合
→家裁が許可する
ハードルの高さ=中
※戸籍法107条の2
詳しくはこちら|名の変更の一般的・抽象的な許可基準
※斎藤秀夫ほか『注解 家事審判規則(特別家事審判規則)改訂』青林書院1994年p508
4 氏・名の変更許可の共通する基準(目安)
氏や名の変更許可の基準は,裁判例や公的見解により形成されています(前記)。
ここでは,氏と名の変更で共通する,大まかな許可の基準をまとめます。
<氏・名の変更許可の共通する基準(目安)>
あ 同一性の保持
同一性を保持すること
い 利益・不利益の比較衡量
次の事項を比較衡量する
ア 変更することに存する本人・社会の利益イ 変更することに存する本人・社会の不利益
※山本政幸『氏の変更におけるやむを得ない事由および名の変更における正当な事由』日法18巻3号
※『名の変更事由としての通用』戸籍64号・66号
※『氏名変更事由としての通用』私法11号
※『氏名の変更』/『家族法論集』1962年p24〜
氏の変更,名の変更それぞれの許可基準については,別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|氏(苗字)の変更許可制度の基本(規定・許可基準)
詳しくはこちら|名の変更の一般的・抽象的な許可基準
多額の資金をめぐる離婚の実務ケーススタディ
財産分与・婚姻費用・養育費の高額算定表
2021年10月発売 / 収録時間:各巻60分
相続や離婚でもめる原因となる隠し財産の調査手法を紹介。調査する財産と入手経路を一覧表にまとめ、網羅解説。「ここに財産があるはず」という閃き、調査嘱託採用までのハードルの乗り越え方は、経験豊富な講師だから話せるノウハウです。