【借地の更新料の支払義務(全体・更新料特約なし)】
1 更新料の支払義務(総論)
借地契約において更新料が支払われることはよくあることです。
詳しくはこちら|借地の更新料の基本(更新料の意味と支払の実情)
しかし、これが法的な義務かどうかは別の問題です。
実際に地主が更新料の支払を請求し、借地人が拒否するという対立(トラブル)はよく生じています。
本記事では、更新料の支払義務の有無を説明します。
2 特約なしでの更新料支払義務
最初に、借地の契約その他で、更新料を支払う合意(特約)がないというケースを前提にします。
この場合は、最高裁の判断として更新料の支払義務は否定されています。
特約なしでの更新料支払義務
あ 法律上の規定
借地借家法・借地法において
更新料の支払義務を定める規定はない
い 慣習法
法定更新の際に更新を支払うことについて
商慣習・事実たる慣習は存在しない
→慣習による更新料支払義務はない
※民法92条
う 法定更新の趣旨
賃借人の金銭的負担なしで更新の効果が生じる
え 結論
更新料の請求は認められない
※最高裁昭和51年10月1日;宅地の賃貸借について
※東京地裁昭和51年9月14日;借地について
※東京地裁平成20年8月25日;借地について
※東京地裁平成24年12月20日;借地について
3 合意更新における更新料支払の効力
更新料を支払う合意がなくても、実際に更新料が支払われることはとても多いです。
詳しくはこちら|借地の更新料の基本(更新料の意味と支払の実情)
一方、このようなケースでは更新料の支払義務はないはずです(前記)。
そうすると、借地人は既払いの更新料を返還請求できると思えます。
しかし『更新料を払う合意』は有効に成立します。
そこで返還請求はできないことになります。
合意更新における更新料支払の効力
あ 合意更新における更新料
更新の際、更新料が支払われた場合
→法定更新ではなく合意更新である
い 更新料支払の効力
更新料支払の効力は否定しない
→借地人は返還請求できない
※東京地裁昭和51年9月14日
4 更新料支払特約の有効性(概要)
以上は更新料を支払うという特約(合意)がないという前提でした。実際には、借地契約で更新料を払う特約が設定されていることも多いです。更新料を支払う特約は原則として有効です。そこで、このような特約があれば原則として更新料の支払義務も発生します。特約があるのに更新料の支払がなされない場合には借地契約の解除が認められることもあります。
ただし、特約が不明確である、あるいは更新料が高額すぎるような場合には特約が無効となることもあります。
詳しくはこちら|借地の更新料特約の有効性(基本)
5 借地と借家の更新料の比較(参考)
本記事で説明しているのは借地の更新料です。この点、借家の場合は、更新料支払義務の判断が借地とは大きく違います。
参考としてまとめておきます。
借地と借家の更新料の比較(参考)
あ 更新料の特約なし(借地・借家)
更新料を支払う合意(特約)がない場合
→借地・借家ともに更新料の支払義務はない
い 更新料の特約の有効性(借地・借家)
更新料を支払う特約がある場合
→借地・借家ともに特約は有効となる傾向がある
う 更新料特約と法定更新(借地)
法定更新においては更新料支払義務が否定される傾向がある
ただし、特約の内容(文言)によっては肯定される可能性もある
詳しくはこちら|更新料特約の法定更新への適用(更新料支払義務)の有無
え 更新料特約と法定更新(借家)
更新料特約が法定更新を含む内容(文言)である場合
→更新料支払義務が肯定される傾向がある
詳しくはこちら|建物賃貸借の更新料の合意の法定更新への適用
本記事では、借地の更新料の支払義務について説明しました。
実際には、個別的事情により法的判断や主張として活かす方法、最適な対応方法は違ってきます。
実際に借地の期間満了や更新に関する問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。