【借地の更新料特約の有効性(基本)】

1 借地の更新料特約の有効性(基本)

借地契約の中に、更新料の支払の特約(条項)がなければ、更新料支払義務はありません。
詳しくはこちら|借地の更新料の支払義務(全体・更新料特約なし)
この点、実際のケースでは、借地契約の中に更新料特約があるというケースも多いです。しかし、特約どおりに更新料支払義務が発生するとは限りません。
本記事では、借地契約における更新料特約の有効性について説明します。

2 更新料特約の有効性に関係する法律(規定)

更新料特約は借地借家法や消費者契約法の強行法規との抵触が問題となります。仮に更新料特約がこれらの法律に違反する場合、特約が無効となることがあるのです。そこで抵触するかどうかが問題となるのです。

更新料特約の有効性に関係する法律(規定)

あ 更新料に関する規定の有無

『ア・イ』の法律において
→更新に伴う金銭の授受(禁止)の規定はない
ア 旧借地法イ 借地借家法(普通借地)

い 法定更新の強行法規性との関係

更新請求・使用継続による法定更新について
→強行法規である
更新を制限する特約のうち借地人に不利なものについて
→無効となる
※借地借家法9条、借地法11条

う 消費者契約法との関係

借地契約が『消費者契約』に該当する場合
→消費者に不利な合意は無効となることがある
※消費者契約法10条;不当条項
詳しくはこちら|消費者契約法|不当条項|事業者の責任免除・消費者の負担加重

3 更新料特約の有効性(一般的見解=有効)

借地契約の中の更新料特約は実務では原則として有効とされます。検討過程、理由については違いがありますが、多くの学説が有効と判断しています。

更新料特約の有効性(一般的見解=有効)

あ 有効説(一般的な見解)

・・・借地の更新料は、更新料を支払うことにより期間の定めのある長期間の賃貸借が保証され、旧借地権にあっては建物の朽廃による借地権消滅のリスクが回避されるほか、借地期間中の建替えや増改築、賃料の改定等に少なからず借地権者の利益に働くことが事実上存することから、更新料支払の慣行の合理性が認められる
したがって、借地における更新料支払の合意は、その額が更新料の支払の時期において、近隣の更新料の額、土地価格に対する更新料割合が特段の事情がないのに著しく高額である場合を除き、旧借地法11条、借地借家法9条に違反して無効であるとはいえない
また、当該借地契約が消費者契約である場合においても、上記と同様の条件の下においては、消費者契約法10条に該当し無効となることはないものと解される。
※澤野順彦著『論点 借地借家法』青林書院2013年p270
※星野英一『法律学全集26 借地・借家法』有斐閣1969年p66、67(同趣旨)
※他の多くの学説(同結論)

い 有効説(異議権放棄対価を含める見解)

賃料の補充+異議権放棄の対価として認める
※広中俊雄『不動産賃貸借法の研究』p193

う 合意更新限定で有効とする見解

合意更新の付款として認める
※鈴木禄弥『借地法(上)改訂版』青林書院1980年p523

4 更新料特約の有効性(裁判例=有効傾向)

借地契約の更新料特約は、多くの裁判例も有効であると判断しています。正確には、特約が有効であることを前提として、別の事項を検討している、という判例、裁判例が多くあります。

更新料特約の有効性(裁判例=有効傾向)

多くの判例・裁判例において
更新料支払の合意自体は有効であることを前提にしている
※最高裁昭和59年4月20日(不払による解除の有効性判断)
※東京高裁昭和45年12月18日(法定更新への適用の有無)
詳しくはこちら|更新料特約に反する不払による解除の有効性

5 更新料特約の有効性を否定する方向の見解

一方、借地契約の更新料特約を無効であると判断する方向性の見解(学説)も一応あります。以上で説明しましたように、このような見解は実務では通常採用されていません。

更新料特約の有効性を否定する方向の見解

あ 原則無効

法定更新には強行法規性がある
→更新料支払の合意は無効である
※東京地裁昭和46年1月25日

い 例外

地主が正当事由を具備した場合にのみ
『合意更新+更新料支払義務』を認める
※篠塚昭次『不動産法の常識(下巻)』p81、82
※山田卓生『借家相談 増補版』p399

6 更新料特約の文言による効力の判断

ところで、実際のケースでは、具体的な更新料特約の文言(言葉)が曖昧であり、特約の文言が何を意味するのか、ということが問題になることもよくあります。このようなケースでは、純粋な文言の解釈(言葉の意味)だけでなく、法律(借地借家法や消費者契約法)との抵触も含めて考慮して、最終的にどのような範囲で更新料の支払義務が発生するのかを判断することになります。

更新料特約の文言による効力の判断

あ 更新の有無とリンクする文言

『更新料を支払わなければ更新しない』
→法定更新の強行法規性に反する
→確実に無効となる
※借地借家法9条、借地法11条
※澤野順彦『判例にみる 借地・借家における特約の効力』新日本法規出版2008年p165

い 合意更新に限定する文言

特約(合意)内容が合意更新に限定されている場合
→合意更新の時だけ更新料支払義務が生じる
法定更新の時は更新料支払義務は生じない
※東京高裁平成11年6月28日
詳しくはこちら|更新料特約の法定更新への適用(更新料支払義務)の有無

7 更新料特約の法定更新への適用(概要)

以上は、更新料特約の有効性についての基本的な説明でした。この点、更新料特約は有効ではあることを前提として、法定更新にも適用されるか(合意更新だけに適用されるのではないか)ということが問題となることも多いです。
これについては別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|更新料特約の法定更新への適用(更新料支払義務)の有無

8 建物賃貸借における更新料特約の有効性(参考)

ところで、更新料特約の有効性が問題となるのは借地だけでなく建物賃貸借(借家)でも同じです。借地の更新料特約と借家の更新料特約の法的扱いは、大枠としては同じといえますが、借家の方は、有効となるために、特約の文言の明確性更新料が高すぎないことが(借地よりは)より強く要求されるという傾向があります。
借家の更新料特約の有効性については別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|建物賃貸借の更新料特約の有効性判断基準と不払いによる解除の効力

本記事では、借地の更新料特約の有効性についての基本的事項を説明しました。
実際には、個別的な事情によって、法的判断や最適な対応方法は違ってきます。
実際に借地の更新料に関する問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

共有不動産の紛争解決の実務第2版

使用方法・共有物分割の協議・訴訟から登記・税務まで

共有不動産の紛争解決の実務 第2版 弁護士・司法書士 三平聡史 著 使用方法・共有物分割の協議・訴訟から登記、税務まで 第2班では、背景にある判例、学説の考え方を追加して事例検討をより深化させるとともに、改正債権法・相続法が紛争解決に与える影響など最新の実務動向を丁寧に追録して大幅改訂増補! 共有物分割、共有物持分買取権行使、共有持分放棄、共有持分譲渡などの手続きを上手に使い分けるためこ指針を示した定番書!

実務で使用する書式、知っておくべき判例を多数収録した待望の改訂版!

  • 第2版では、背景にある判例・学説の考え方を追加して事例検討をより深化させるとともに、改正債権法・相続法が紛争解決に与える影響など最新の実務動向を丁寧に追録して大幅改訂増補!
  • 共有物分割、共有持分買取権行使、共有持分放棄、共有持分譲渡などの手続を上手に使い分けるための指針を示した定番書!
  • 他の共有者等に対する通知書・合意書、共有物分割の類型ごとの訴状、紛争当事者の関係図を多数収録しており、実務に至便!
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINE
【借地の更新料の支払義務(全体・更新料特約なし)】
【更新料特約の法定更新への適用(更新料支払義務)の有無】

関連記事

無料相談予約 受付中

0120-96-1040

受付時間 平日9:00 - 20:00