【旧借地法における建物再築に対する地主の異議の方法と内容】
1 借地法の建物再築に対する地主の異議の内容(総論)
2 再築に対する地主の異議の方式と内容
3 再築に対する地主の異議の『遅滞なく』
1 借地法の建物再築に対する地主の異議の内容(総論)
借地法では,建物の再築について地主の異議がない場合,借地期間が延長します。
詳しくはこちら|旧借地法における異議のない建物再築による期間延長(基本)
実際には『異議』に該当するものがあったかどうかについて見解の対立が生じることもあります。
本記事では,地主の『異議』の内容,つまり方法や通知の内容について説明します。
2 再築に対する地主の異議の方式と内容
再築に対し,地主が異議を述べる具体的な方式は特に決められていません。
実務では,記録(証拠)にするために内容証明郵便を用います。
異議の理由は不要で,通知の内容は最低限,再築や大修繕に反対するというもので足ります。
<再築に対する地主の異議の方式と内容>
あ 方式
方式は規定されていない
→特別な方式はない
実務では一般的に内容証明郵便による通知を用いる
い 異議の内容の具体例
『ア・イ』のような具体例がある
ア 残存期間を超える耐用年数をもった建物の築造に反対するイ 残存期間を超える耐用年数をもつような大修繕に反対する
う 期間延長への言及(不要)
異議の内容は,期間延長を否定する旨でなくてよい
※幾代通ほか『新版注釈民法(15)債権(6)増補版』有斐閣1996年p450
え 異議の理由(不要)
異議に理由は不要である
※幾代通ほか『新版注釈民法(15)債権(6)増補版』有斐閣1996年p451
3 再築に対する地主の異議の『遅滞なく』
再築に対する地主の異議は,条文上『遅滞なく』行う必要があります。
『遅滞』があるかどうかの判断について,見解の対立が生じるケースもあります。
少なくとも地主が再築の事実を知ってから1,2週間程度であれば『遅滞なく』といえるでしょう。
<再築に対する地主の異議の『遅滞なく』>
あ 条文規定
(築造に対し)遅滞なく異議を述べる
い 2か月遅れと『遅滞なく』の判断
再築の事実を知りうべき時から
2か月余を経てから述べた異議について
→遅滞がある
※東京地裁昭和15年5月17日
う 完成間際と『遅滞なく』の判断
築造着手を知り完成間際に述べた異議について
→遅滞がある
※高松高裁昭和47年10月31日
え 地主の認識と『遅滞なく』の判断
借地人の任意取壊しを地主が知らなかった場合
→遅滞にはあたらない
(『遅滞なく異議がない』にはあたらない)
※鈴木禄弥『借地法(上)改訂版』青林書院1980年p366,367
※水本浩ほか『基本法コンメンタール 借地借家法 第2版増補版』日本評論社2009年p188