【借地条件変更の裁判の実質的要件(判断基準)】
1 借地条件変更の実質的基準(総論)
2 実質的要件の条文上の規定
3 『法令による土地利用の規制の変更』の例
4 『付近の土地の利用状況の変化』の例
5 状況変化のない借地条件変更
6 財産上の給付の相場(参考)
1 借地条件変更の実質的基準(総論)
借地条件を変更するには,通常,地主の承諾が必要です。
地主が承諾しない場合には,裁判所が代わって許可をする制度があります。
詳しくはこちら|借地条件変更・増改築許可の裁判手続(基本・新旧法振り分け)
本記事では,裁判所が許可する基準を説明します。
これを実質的基準と呼びます。
2 実質的要件の条文上の規定
条文上は,借地条件変更を認める要件として状況変化によって変更することが『相当である』と規定されています。
<実質的要件の条文上の規定>
あ 状況の変化・変更
『ア〜ウ』のいずれかが生じた
ア 法令による土地利用の規制の変更(後記※1)イ 付近の土地の利用状況の変化(後記※2)ウ その他の事情の変更
い 相当性
『あ』によって
現在の借地条件とは異なる借地条件が相当である
※借地借家法17条1項
3 『法令による土地利用の規制の変更』の例
条文の規定のうち,法令による土地利用の規制の変更の内容はいくつかあります。
これらに該当するケースでは裁判所が借地条件変更を認める傾向が強くなります。
<『法令による土地利用の規制の変更』の例(※1)>
あ 防火地域の指定
ア 防火地域or準防火地域の指定(or変更)
※都市計画法8条1項5号
イ 『ア』による建築規制
※建築基準法61条〜67条
い 他の指定
都市計画法による『ア〜ウ』の指定(or変更)
ア 用途地域イ 景観地区ウ 風致地区の指定
※都市計画法8条1項1号,6号,7号
4 『付近の土地の利用状況の変化』の例
条文の規定には『付近の土地の利用状況の変化』もあります。
要するに,環境との整合性から,現在の条件による制限が不当かどうかを判断するのです。
<『付近の土地の利用状況の変化』の例(※2)>
あ 建物の構造・規模に関する例
土地の付近で高層ビルが立ち並ぶ状況になってきた
→建物の構造・規模に関する条件の変更につながる
い 建物の用途に関する例
土地の付近が商店街になった
→建物の用途に関する条件の変更につながる
※澤野順彦『実務解説 借地借家法 改訂版』青林書院2013年p217
5 状況変化のない借地条件変更
条文の要件の中に『その他の事情の変更』があります(前記)。
そこで,借地人側の事情の変化がこれに含まれるという発想もあります。
しかし,一般的には,客観的な状況に変化がない限り借地条件変更は認めないという解釈がとられています。
<状況変化のない借地条件変更>
あ 状況変化のない借地条件変更の傾向
現在の借地条件が設定された時点から現在まで
法規制,環境に変化がない場合
→原則的に変更は認められない
い 理論
借地条件変更の事由について
→客観的事情に限られる
※多数説
主観的事情も含むという少数説もある
※澤野順彦『実務解説 借地借家法 改訂版』青林書院2013年p217,218
6 財産上の給付の相場(参考)
以上で説明した実質的要件を満たす場合,裁判所は条件変更を許可します。条件変更の内容が非堅固から堅固建物という場合は通常,更地価格の10%相当の財産上の給付も命じられます。いわゆる承諾料のことです。
詳しくはこちら|借地条件変更の承諾料の相場(財産上の給付の金額)
本記事では,借地の条件変更の裁判における実質的要件について説明しました。
実際には,個別的事情によって法的判断や最適な対応方法は違ってきます。
実際に借地上の建物の再築に関する問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。