【借地上の建物の増改築・建替えの承諾料の相場(弁護士ガイド)】

1 増改築・建替えの承諾料の相場
2 増改築禁止特約がないと承諾不要(承諾料ゼロ)
3 全面改築の承諾料は更地価格の3%
4 特殊事情により1〜5%の間で変動する
5 木造からRCへの変更の承諾料は更地価格の10%
6 過去の更新料・承諾料の控除はしない傾向
7 増改築・建替えの承諾料の相場(まとめ)
8 借地のトラブルに詳しい弁護士へ相談の推奨

1 増改築・建替えの承諾料の相場

借地人が建物の増改築や建替えをする場合に,地主に承諾料を払うケースがよくあります。
この承諾料の金額について,地主と借地人で意見が食い違って決裂するというトラブルが多いです。
増改築や建替えの承諾料の金額には相場があります。
本記事では,増改築や建替えの承諾料の相場を説明します。

2 増改築禁止特約がないと承諾不要(承諾料ゼロ)

そもそも,承諾料の意味は,増改築や建替えを承諾してもらう対価です。
ということは増改築禁止特約がある場合にだけ,承諾料が必要になります。
借地借家法(や旧借地法)では,現在,建物の建築(増改築・建替え)を禁止するようなルールはないのです。
詳しくはこちら|借地上の建物の建築・増改築の自由と制限(借地条件・増改築禁止特約)
あえて言えば,増改築禁止特約がない借地では増改築や建替えの承諾料はない(ゼロ)ということになります。
ただ,法律の面以外の理由で承諾料が払われるということはあり得ます。
詳しくはこちら|増改築トラブルにより地主の融資承諾書を得られない問題(弁護士ガイド)

3 全面改築の承諾料は更地価格の3%

借地契約に増改築禁止特約がある場合は,増改築をするためには地主の承諾が必要になります。
建物の建替え(再築)増改築に含まれます。建替えの場合にも地主の承諾が必要です。
詳しくはこちら|借地上の建物の増改築許可の承諾料の相場(財産上の給付の金額)
標準的な承諾料の相場は,全面改築の場合で更地価格の3%です。

4 特殊事情により1〜5%の間で変動する

床面積が増えるとか居住用から賃貸用に変えるような事情があると建物の利便性や収益性が大きく上がります。
そのようなケースでは承諾料は上がり,更地価格の3〜5%となります。
逆に建物の一部だけの改築工事であれば,標準的な承諾料よりも下がり更地価格の1〜3%となります。
詳しくはこちら|借地上の建物の増改築許可の承諾料の相場(財産上の給付の金額)

5 木造からRCへの変更の承諾料は更地価格の10%

例えば,木造から鉄筋コンクリート(RC)に変えるケースでは,標準的な増改築の承諾料の相場から跳ね上がります。
専門的には,(旧借地法の)非堅固建物所有目的から堅固建物所有目的への借地条件変更ということになります。
このような借地条件変更の標準的な承諾料の相場は更地価格の10%です。
詳しくはこちら|借地条件変更の承諾料の相場(財産上の給付の金額)

6 過去の更新料・承諾料の控除はしない傾向

借地の期間は長く,過去にもいろいろな形でまとまった金銭の支払がなされていることが多いです。
更新料やいろいろな内容の承諾料です。
特に近い過去に払ったばかりの場合は,その分を控除する(差し引く)という発想もあります。
法律的な理論としては,これらの控除はしない傾向が強いです。
詳しくはこちら|借地上の建物の増改築許可の承諾料の相場(財産上の給付の金額)
これはあくまでも理論的な解釈論です。
いろいろな条件交渉の中で,過去の更新料が反映された承諾料の金額で合意に至るケースもあります。

7 増改築・建替えの承諾料の相場(まとめ)

以上で説明した承諾料の相場をまとめます。

<増改築・建替えの承諾料の相場(まとめ)>

(増改築禁止特約なし) ゼロ
建物の一部の改築 更地価格の1〜3%
一般的な全面改築 更地価格の3%
床面積増加・賃貸用物件 更地価格の3〜5%
堅固建物への借地条件変更 更地価格の10%

8 借地のトラブルに詳しい弁護士へ相談の推奨

以上は,標準的で単純な承諾料の相場の説明でした。
はっきりした相場があるのだから地主と借地人の交渉はすぐにまとまるようにも思えるかもしれません。
しかし実際にはいろいろな理由で意見が食い違い,対立することが多いです。
詳しくはこちら|借地上の建物の増改築・建替えの承諾で起こるトラブル(弁護士ガイド)
交渉が決裂した場合は裁判所が判断する手続などの解決方法があります。
詳しくはこちら|借地上の建物の増改築・建替えのトラブルの解決方法(弁護士ガイド)
交渉や裁判手続については(当然ですが),1つ1つのアクションが,最終結果に影響します。
借地のトラブルに詳しい弁護士であれば,スピーディーに適切なアドバイスを差し上げることができます。
具体的なトラブルに関しては,具体的なアクションを行う前に,まずは法律相談で弁護士から正式なアドバイスを受けることをお勧めします。

共有不動産の紛争解決の実務第2版

使用方法・共有物分割の協議・訴訟から登記・税務まで

共有不動産の紛争解決の実務 第2版 弁護士・司法書士 三平聡史 著 使用方法・共有物分割の協議・訴訟から登記、税務まで 第2班では、背景にある判例、学説の考え方を追加して事例検討をより深化させるとともに、改正債権法・相続法が紛争解決に与える影響など最新の実務動向を丁寧に追録して大幅改訂増補! 共有物分割、共有物持分買取権行使、共有持分放棄、共有持分譲渡などの手続きを上手に使い分けるためこ指針を示した定番書!

実務で使用する書式、知っておくべき判例を多数収録した待望の改訂版!

  • 第2版では、背景にある判例・学説の考え方を追加して事例検討をより深化させるとともに、改正債権法・相続法が紛争解決に与える影響など最新の実務動向を丁寧に追録して大幅改訂増補!
  • 共有物分割、共有持分買取権行使、共有持分放棄、共有持分譲渡などの手続を上手に使い分けるための指針を示した定番書!
  • 他の共有者等に対する通知書・合意書、共有物分割の類型ごとの訴状、紛争当事者の関係図を多数収録しており、実務に至便!
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINE
【建物の増改築・建替え・修繕に関する借地トラブルと解決(全体像・ガイド)】
【借地上の建物の増改築・建替えの承諾で起こるトラブル(弁護士ガイド)】

関連記事

無料相談予約 受付中

0120-96-1040

受付時間 平日9:00 - 20:00