【買受人譲渡許可の付随的裁判(承諾料の相場・敷金の差入)】
1 買受人譲渡許可の付随的裁判(総論)
2 財産上の給付の金額(承諾料)の相場
3 財産上の給付に関する特殊性
4 付随的裁判としての敷金の差入
1 買受人譲渡許可の付随的裁判(総論)
競売や公売で入札して,借地上の建物を買い受けた人は,本来,事前に地主の承諾が必要です。
買い受けた後に裁判所に,地主の承諾に変わる許可を得る手続があります。
詳しくはこちら|借地上の建物の競売・公売における買受人譲渡許可の裁判の趣旨と特徴
裁判所が許可する際に,付随的な措置を決めることがあります。
本記事では,買受人譲渡許可に伴う付随的裁判について説明します。
2 財産上の給付の金額(承諾料)の相場
一般的に,借地上の建物の譲渡(借地権譲渡)の際は,地主に承諾料を支払います。
裁判所の許可の際には付随的裁判として財産上の給付として金額が決定されます。
競売・公売でも,他の譲渡(売買など)と同じように借地権価格の10%が承諾料(財産上の給付)の相場です。
<財産上の給付の金額(承諾料)の相場>
財産上の給付(承諾料)の金額について
一般的な借地権譲渡と同様である
詳しくはこちら|借地権譲渡の承諾料の相場(借地権価格×10%)と借地権価格の評価法
=借地権価格の10%が標準である
※澤野順彦『実務解説 借地借家法 改訂版』青林書院2013年p260
3 財産上の給付に関する特殊性
競売・公売による建物+借地権の取得のケースでは,裁判所の許可に伴う財産上の給付の方法は通常の借地権譲渡の許可とは違いがあります。
承諾料の支払(財産上の給付)が条件にすることはありません。
単純に承諾料の支払を命じるという方式になります。
<財産上の給付に関する特殊性>
あ 条文規定
『許可を財産上の給付に係らしめる』が記載されていない
※借地借家法20条1項,19条1項後段参照
い 実務における財産上の給付の決定
実務での認容決定(許可)において
本裁判(認容決定)と独立して,買受人に財産給付を命じている
※澤野順彦『実務解説 借地借家法 改訂版』青林書院2013年p260
う 一般的な借地権譲渡許可での扱い(比較)
一般的な借地権譲渡許可の裁判において
申立人は借地権の譲渡人(元の借地人)である
→譲受人(新たな借地人予定者)は申立人ではない
詳しくはこちら|借地権譲渡許可の裁判の申立人と申立時期
→付随的裁判として給付を命じることができない
4 付随的裁判としての敷金の差入
レアケースではありますが,借地において敷金が預託されていることもあります。
その場合,通常の取引であれば,借地権の購入者(新たな借地人)が,新たに敷金を差し入れます。
裁判所の許可のケースでは,裁判所が敷金を差し入れることを付随的裁判として命じることになります。これは最高裁が示した判断です。
<付随的裁判としての敷金の差入>
あ 敷金の承継の有無(前提)
一般的な賃借権の譲渡において
→原則として敷金の関係は新賃借人に承継されない
※最高裁昭和53年12月22日
詳しくはこちら|賃借権の譲渡では特別の合意がないと敷金は承継されない
い 借地権譲渡許可に伴う敷金の差入
買受人譲渡許可の付随裁判の1つとして
相当額の敷金を差し入れる旨を定めることができる
=譲受人に交付を命じること
※最高裁平成13年11月21日