【刑法条文の禁止規定or罰則規定(条文のおかしみ)】
- 刑法の条文には,「・・・した人は・・・(罰則)に処する」という体裁で書かれています。
「・・・してはいけない」と,ストレートに書いていないのはなぜでしょうか。 - 「善悪」を書くことになると,当然過ぎるのでムダ+どっちみち刑罰も書くのでムダになる,というのが理由でしょう。
1 禁止規定と罰則規定の2種類
2 禁止規定が取られていない理由
1 禁止規定と罰則規定の2種類
刑法上は「殺人をしてはいけない」「窃盗をしてはいけない」「名誉棄損をしてはいけない」というようにストレートに「ダメ」「禁止」の趣旨が書いてありません(禁止規定と言います)。
書かれているのは,対象となる行為とそれに適用される罰則です(罰則規定と言います)。
「・・・してはいけない」という文言がないとは言っても,国家的に「・・・しても良い」というメッセージを出しているわけではありません。
実際に別の条文や解釈で「不正」「違法(性)」とかが出てくる場面では「刑法の罰則対象(=犯罪)は不正(違法)」として扱われています。
この問題は,具体的な犯罪の成否とは関係ないので,判例で解釈が示される,ということはありません。
刑法学者がいろんなコメントをしている程度の,法解釈のおかしみ,とでもいうカテゴリのテーマです。
2 禁止規定が取られていない理由
<刑法上禁止規定というスタイルがない理由>
あ 当然過ぎてムダになる
「人を殺すことを禁じる」「窃盗を禁じる」と正面から書いたモノを見ると分かりますが,意味がない,という感覚に襲われます。
い 刑罰規定を書くので,禁止規定も書くと重複気味になる
罰則(刑事罰)については,人権を制約するものなので,「事前に可能な限り明確に」,「対象となる行為」と「罰則内容」を規程しておく必要があります。
明確な罰則規定は必須なのです。
これに加えて禁止規定を置くと,重複していることになります。
例;「人を殺すことを禁じる。人を殺した者は,死刑又は・・・の懲役に処する。」