【当事者双方の欠席で取下擬制となり得るが判決言渡・証拠調べは可能】
1 当事者双方が裁判期日に欠席した時の法的扱い
2 当事者双方の欠席+期日指定なしによる取下擬制
3 連続2回の当事者双方欠席による取下擬制
4 双方欠席の期日は空転するが判決言渡と証拠調べは可能
5 当事者の一方だけの欠席では擬制陳述ができる(概要)
1 当事者双方が裁判期日に欠席した時の法的扱い
民事訴訟で原告と被告の両方が裁判期日に欠席した場合の法的な扱いにはいくつかのものがあります。
常識的には欠席するなんてあり得ないように思えますが,判決言渡などは弁護士が出頭しないことが多いです(後記)。
また,実務では一方だけが欠席するルール(後記)を活用することも多いです。
訴訟提起をするかどうかの検討段階で,相手が出頭しなかったらどうなるかを考えることはよくあります。
また,原告である相手が欠席すると想定されるケースで,当方が欠席することにより取下の扱いに持ち込むことを狙う状況もあります。
いずれにしても実務においては実際に使うことがあるテーマです。
2 当事者双方の欠席+期日指定なしによる取下擬制
当事者双方が裁判期日に欠席すると,訴えの取下とみなされるルールがあります。
このルールは2つに分けられます。
最初に,欠席の後,次回期日が指定されていない状態が1か月間続いた場合に取下とみなされる規定があります。
<当事者双方の欠席+期日指定なしによる取下擬制>
あ 取下擬制
『い・う』の両方に該当する場合
→訴えの取下があったものとみなす
い 双方欠席
当事者双方が口頭弁論or弁論準備手続の期日に出頭しなかった
う 期日指定なし
当事者双方が1か月以内に期日指定の申立をしなかった
※民事訴訟法263条
3 連続2回の当事者双方欠席による取下擬制
当事者双方が2連続で期日に欠席した場合も取下とみなされます。
これは,1回目の期日の後に裁判所が次回期日を指定したことが前提となっています。
<連続2回の当事者双方欠席による取下擬制>
あ 取下擬制
『い〜え』のすべてに該当する場合
→訴えの取下げがあったものとみなす
い 初回の双方欠席
当事者双方が口頭弁論or弁論準備手続の期日に出頭しなかった
う 裁判所による期日指定
裁判所が次回期日を指定した
え 再度の双方欠席
『イ』の口頭弁論or弁論準備手続の期日について
→再び当事者双方が出頭しなかった
※民事訴訟法263条
4 双方欠席の期日は空転するが判決言渡と証拠調べは可能
以上のように,当事者双方が期日に欠席すると,状況によっては訴え自体が取下となって訴訟が終了します。
当然の前提として,期日自体は法的な手続が進まない(できない)というのが原則です。
しかし,例外的に,判決言渡と証拠調べは行うことができます。
特に判決言渡期日には,当事者(代理人弁護士)が両方とも出頭しないことが多いです。
その場合でも,電話で書記官から判決の内容(結果)自体は当日中に聞き取ることはできます。そして後日,判決書の送達を受けることになります。
<当事者双方欠席の期日の扱い>
あ 双方欠席の原則的扱い
当事者双方が欠席した場合
→原則的に手続を行うことはできない
要するに空転となる
※民事訴訟法263条参照
い 双方欠席で行えること
当事者双方が欠席した場合でも
→『ア・イ』を行うことはできる
ア 判決言渡
※民事訴訟法251条2項
イ 証拠調べ
※民事訴訟法183条
5 当事者の一方だけの欠席では擬制陳述ができる(概要)
以上の説明は,裁判期日に当事者の双方(両方)が欠席した場合のものでした。
この点,当事者の片方が欠席し,他方が出席しているケースでは,訴状や準備書面の陳述という訴訟行為ができます。
書面の内容を陳述したとみなすルールがあるのです。
簡裁以外では,第1回期日に限定されている特殊なルールです。
詳しくはこちら|相手方が欠席した場合の訴訟等の進行・擬制自白