【仮想通貨交換業登録における財産的基礎の審査方法と判断基準】
1 仮想通貨交換業者の財産的基礎の審査方法と基準
2 登録審査における財産的基礎に関する規定
3 財産的基礎の審査の対象となる資料・情報
4 財産的基礎(収支見通し)の判断方法
1 仮想通貨交換業者の財産的基礎の審査方法と基準
仮想通貨交換業の登録をするには,申請書と添付書類を金融庁に提出します。
詳しくはこちら|仮想通貨交換業の登録申請の全体像と申請書記載事項・添付書類
その後,金融庁は,提出された資料の審査だけではなく,申請者のヒアリングや現地の調査を行います。
特に,登録拒否要件のうち財産的基礎(がないこと)は,多くの事情を評価して判断するものです。
内閣府令やガイドラインで審査の方法や判断基準が定められています。
本記事では,このような財産的基礎についての審査について説明します。
2 登録審査における財産的基礎に関する規定
まず最初に,登録審査の中の財産的基礎に関するルール(規定)をまとめておきます。
具体的には登録拒否要件の1つということになります。
<登録審査における財産的基礎に関する規定>
あ 資金決済法の条文規定
(登録拒否事由の1つとして)
仮想通貨交換業を適正かつ確実に遂行するために必要と認められる内閣府令で定める基準に適合する財産的基礎を有しない法人
※資金決済法63条の5第1項3号
い 内閣府令の規定
『あ』に規定する内閣府令で定める基準は『ア・イ』とする
ア 資本金の額が1000万円以上であることイ 純資産額が負の値でないこと
※仮想通貨交換業者に関する内閣府令9条
3 財産的基礎の審査の対象となる資料・情報
内閣府令では,資本金1000万円以上と純資産がプラス,という単純なことしか規定されていません(前記)。
財産的基礎の判断は,当然,このような単純なものではありません。
多くの資料を元に,総合的に評価(判断)します。
まずは審査の対象となる資料や情報をまとめます。
<財産的基礎の審査の対象となる資料・情報>
あ 審査対象とする資料
財産的基礎の審査に当たっては,『ア・イ』のとおり取り扱う
ア 新設法人の場合
開設時の貸借対照表で審査する
イ 監査証明書がない場合
最終の貸借対照表・損益計算書orこれに代わる書面の内容の確認に当たっては
必要に応じ,例えば,『う』のような書面による
い 確認する書面の例
ア 残高証明書
預金が計上されている場合
→取引先の金融機関が発行する残高証明書
イ 取引残高報告書
有価証券が計上されている場合
→取引先の証券会社が発行する取引残高報告書
ウ 固定資産評価証明書or鑑定評価書の写し
土地or建物が計上されている場合
→市区町村が発行する固定資産評価証明書or不動産鑑定士が作成した鑑定評価書の写し
エ 確定申告書・貸借対照表
法人税の確定申告書・確定申告書に添付した貸借対照表の写し
う 当事者のヒアリング
提出された資料を踏まえて
利用者財産の管理の方法を申請者に聴取する
※仮想通貨交換業者ガイドライン『Ⅲ−2−1(2)①イ,ロ』・p48,49
4 財産的基礎(収支見通し)の判断方法
そもそも財産的基礎が重要である理由は,仮に運転資金が不足すると,一般論としてユーザーから預かっている資金・仮想通貨の保全に不安が生じるからです。
要するに(一般論として)事業者が預かり資産を使い込む(業界用語でGOXするといいます)リスクを極力排除する要請があるのです。
そこで,具体的には収支の見通しの確実性を軸にして財産的基礎を判断することになります。
<財産的基礎(収支見通し)の判断方法>
あ 変動要素の折り込み
収支見通しについて、競合者の参入、システムの陳腐化等、環境の悪化に伴う対応方策が確立しており、その場合でも一定の収益を見込めるような計画となっているか。
い 他の事業の収益による補填の可能性
仮想通貨交換業において損失が生じた場合に、申請者が他に営んでいる事業による収益等によって補填がなされる等、仮想通貨交換業の継続可能性に影響を及ぼすと考えられる特段の事情がある場合には、当該事情を考慮するものとする。
※仮想通貨交換業者ガイドライン『Ⅲ−2−1(2)①ハ』・p49
資金決済法,内閣府令,事務ガイドラインの情報ソースは別の記事で紹介しています。
詳しくはこちら|仮想通貨交換所の規制(平成28年改正資金決済法)の全体像
仮想通貨交換業の登録には多くの細かいルールや運用上の傾向があります。
みずほ中央法律事務所では,仮想通貨交換業の登録やその準備段階のサポートを行っています。
実際に仮想通貨交換業登録をお考えの方は法律相談をご利用くださることをお勧めします。