【仮想通貨交換業者の体制の整備の登録審査と業務監督の着眼点】
1 事務遂行とルール遵守の体制整備の審査と業務監督の内容
2 体制整備に関する登録拒否要件(前提)
3 事務遂行・ルール遵守体制整備の主要な審査項目
4 事務遂行・ルール遵守体制整備の一般的審査項目
5 仮想通貨交換業者の監督上の着眼点の項目
6 仮想通貨や取引の『適切性』の判断方法(概要)
1 事務遂行とルール遵守の体制整備の審査と業務監督の内容
仮想通貨交換業の登録では,業務遂行の体制とルール遵守の体制の整備も審査されます。
詳しくはこちら|仮想通貨交換業の登録申請の全体像と申請書記載事項・添付書類
このような体制の整備は多くの事情を元に評価して総合的に判断することになります。
評価する項目の中には仮想通貨交換業のサービス運用中における業務監督の項目と共通するものが多くあります。
本記事では,業務遂行体制とルール遵守体制整備の審査方法と,業務監督の着眼点について説明します。
2 体制整備に関する登録拒否要件(前提)
登録の審査で判断することは登録拒否要件に該当するかどうかです。
そこで最初に,体制の整備に関する登録拒否要件を確認しておきます。
<体制整備に関する登録拒否要件(前提・※2)>
あ 事務遂行体制
仮想通貨交換業を適正かつ確実に遂行する体制の整備が行われていない
※資金決済法63条の5第1項4号
い ルール遵守体制の整備
仮想通貨に関する資金決済法の規定を遵守するために必要な体制の整備が行われていない
※資金決済法63条の5第1項5号
詳しくはこちら|仮想通貨交換所の規制(平成28年改正資金決済法)の全体像
3 事務遂行・ルール遵守体制整備の主要な審査項目
体制整備の審査の方法は,書面は当然の前提として,関係者からのヒアリングや現地の調査など,多くの方法がとられます。
一方,審査項目も,とても多くのものがあります。
まずは評価の比重が大きい,つまり,重要な審査項目だけをまとめます。
<事務遂行・ルール遵守体制整備の主要な審査項目>
あ 全体的な審査の方法
体制整備(前記※2)の審査について
登録申請書・添付書類をもとにする
申請者のヒアリングと実地調査などにより検証する
特に『い』の事項に留意する
い 特に留意する事項
当該仮想通貨交換業者の規模・特性等からみて,適切に対応するための態勢が整備されているか
特に,組織態勢の確認に当たっては,法令等遵守のための態勢を含め,相互けん制機能が有効に機能する内部管理部門の態勢が整備されているか。
業容に応じて,内部監査態勢を要する
※仮想通貨交換業者ガイドライン『Ⅲ−2−1(2)②』・p49
4 事務遂行・ルール遵守体制整備の一般的審査項目
体制整備の審査項目は,前記の重要なもの以外にも多くの項目があります。
<事務遂行・ルール遵守体制整備の一般的審査項目>
あ 確認する主な資料と着眼点
ア 社内規則などイ ガイドラインに掲げた主な着眼点
仮想通貨交換業者ガイドラインの中の
『監督上の着眼点』に規定した項目(後記※1)
※仮想通貨交換業者ガイドライン『Ⅱ』
ウ 着眼点の例
クロスボーダー取引や現金の受払いの有無など
い 他の着眼点
ア 定款
定款に法人の目的として仮想通貨交換業を営むことが含まれているか
イ 仮想通貨交換業者協会からの情報取得
取り扱う仮想通貨の妥当性等の判断に当たっては
その判断に専門性を要するほか,詐欺的な仮想通貨もあることから
仮想通貨交換業者協会等から提供を受けた情報等を考慮し判断されているか
ウ 利用契約上の利用者への情報提供の規定
利用者との間の契約書は利用者への情報提供(内閣府令17条1項,2項)を考慮した内容となっているか
※仮想通貨交換業者ガイドライン『Ⅲ−2−1(2)②』・p49
5 仮想通貨交換業者の監督上の着眼点の項目
仮想通貨交換業についての監督機関は金融庁です。
仮想通貨交換業者が行う業務(サービス)についての一般的な監督内容は,ガイドラインで定められています。
登録申請の段階では当然,まだサービスは始まっていません。
しかし,事務遂行やルール遵守体制の整備の審査は,将来行われる状況を想定することになります。
そこで,将来適用されることになる監督内容は登録の審査における基準にもなります。
ガイドラインに定められている監督の内容はとても多くのものがあります。
ここでは項目だけを整理しておきます。
<仮想通貨交換業者の監督上の着眼点の項目(※1)>
あ 経営管理等(Ⅱ−1)
い 業務の適切性等(Ⅱ−2)
ア 法令等遵守(Ⅱ−2−1)
・法令等遵守態勢(コンプライアンス)等(Ⅱ−2−1−1)
・取引時確認等の措置(Ⅱ−2−1−2)
・反社会的勢力による被害の防止(Ⅱ−2−1−3)
・不祥事件に対する監督上の対応(Ⅱ−2−1−4)
イ 利用者保護のための情報提供・相談機能等(Ⅱ−2−2)
・利用者保護措置(Ⅱ−2−2−1)
・利用者が預託した金銭・仮想通貨の分別管理(Ⅱ−2−2−2)
・帳簿書類(Ⅱ−2−2−3)
・利用者に関する情報管理態勢(Ⅱ−2−2−4)
・苦情等への対処(Ⅱ−2−2−5)
金融ADR制度への対応も含む
ウ 事務運営(Ⅱ−2−3)
・システムリスク管理(Ⅱ−2−3−1)
・事務リスク管理(Ⅱ−2−3−2)
・外部委託(Ⅱ−2−3−3)
エ 障害者への対応(Ⅱ−2−4)
6 仮想通貨や取引の『適切性』の判断方法(概要)
仮想通貨交換業の登録の審査では,事務遂行の適正と関連して,仮想通貨やその取引についての適切性も審査されます。
適切性の審査については,仮想通貨交換業ガイドラインで判断方法が示されています。
詳しくはこちら|仮想通貨や取引の『適切性』の判断方法(事務ガイドライン)
資金決済法,内閣府令,事務ガイドラインの情報ソースは別の記事で紹介しています。
詳しくはこちら|仮想通貨交換所の規制(平成28年改正資金決済法)の全体像
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