【『税務相談』の意味と解釈(具体性と一般論の区別や将来的相談)】
1 『税務相談』の意味・解釈
2 税務相談の定義の条文規定
3 『相談』の意味(具体性と一般論の区別)
4 将来的税務相談の扱い
5 将来的税務相談を『税務相談』に含める見解
1 『税務相談』の意味・解釈
税理士法による規制されるサービスの1つが『税務相談』です。
詳しくはこちら|『税理士業務』の定義(税務代理・税務署類の作成・税務相談)
どのような範囲で『税務相談』に該当するのかが問題となることもあります。
本記事では,『税務相談』の意味や解釈について説明します。
2 税務相談の定義の条文規定
まず最初に,税理士法の中で『税務相談』について定義する規定をまとめておきます。
<税務相談の定義の条文規定>
あ 税務相談の定義
税務代理(前記※1)に規定する主張・陳述・申告書などの作成に関し
『い』の計算に関する事項について相談に応ずること
い 税務相談の対象となる計算
ア 課税標準イ 課税標準から控除する金額ウ 純損失などの金額エ 納付すべき税額オ 還付金の額に相当する税額カ 納付すべき税額の計算上控除する金額or還付金の計算の基礎となる税額
※税理士法2条1項3号
※国税通則法2条6号イ〜ヘ
3 『相談』の意味(具体性と一般論の区別)
『相談』といえるためには,(質問や回答の)対象が具体的事案であることが必要です。
典型例は,親族が亡くなって,相続税の申告をしなくてはならない方へ税額を計算して教えることです。
逆にいえば,一般論としての課税結果を回答することは(税務)相談には該当しません。
例えば,純粋に税法を勉強する方に,講師として教えるというようなものは税務相談ではありません。
<『相談』の意味(具体性と一般論の区別)>
あ 『相談(に応ずる)』の意味
『相談に応ずる』とは,同号に規定する事項について
具体的な質問に対して答弁or指示or意見を表明することをいう
※税理士法基本通達2−6
い 具体性の限定
『具体的な』と限定されている
答弁・指示・意見表明の対象は
納税義務者の具体的事実であることが必要である
う 一般論の除外
『ア・イ』の行為は『税務相談』には該当しない
ア 税金に関する講習会,一般的な税法の解説イ 仮設例に基づいて税額の計算練習をする行為
※日本税理士会連合会編『新版 実践税理士法』中央経済社2015年p71
※日本税理士会連合会編『税理士法逐条解説 7訂版』日本税理士会連合会2016年p29
4 将来的税務相談の扱い
税金の計算やアドバイスが一般論と具体的事案との中間的なものがあります。
将来生じる課税関係に関する税額算定やアドバイスです。
将来的税務相談と呼んでいます。
これについては,税務相談に該当する,しないという2つの見解があります。
<将来的税務相談の扱い>
あ 将来的税務相談の内容
将来的な課税要件事実の発生を前提とする個別の税額計算などに関する事項の相談
現時点での現実の納税義務を伴わない
例=将来についての相続税の相談
い 複数の見解の存在
税理士業界として相当な議論があった
※日本税理士会連合会編『新版 実践税理士法』中央経済社2015年p71
5 将来的税務相談を『税務相談』に含める見解
将来的税務相談も税務相談に該当するという見解もあります。
<将来的税務相談を『税務相談』に含める見解>
あ 将来的税務相談の特徴
将来的税務相談では
相続税の負担の有無,税負担の内容などが質問・回答(答弁)の対象である
想定する承継方法が具体化している(い)
相続開始の時期がある程度具体化している(う)
い 承継方法の具体性
質問・回答において『ア〜オ』の事情が特定されている
ア 被相続人となるべき者イ 相続の時期(う)ウ 相続人となるべき者の数エ 相続財産の内容オ 相続財産の分割の方法
う 相続開始の現実性
質問する者は,被相続人(予定者)の死亡の確実な可能性を認識している
例=高齢or疾病その他の事情がある
う 税務相談の該当性(肯定)
質問・回答が具体的事案を対象としている
→税務相談に該当する
え 一般論の質問のレアリティ
教室・講習会・講演会場では
ただ理論的な興味を満足するために純粋に仮設例を提示して答えを求めることはあり得る
それ以外では通常あり得ない
お 仮装的な一般化
質問者が『仮設例』として質問を示した場合でも
実際に発生している事例を背景にして構成されているはずである
→『一般論』ではない
※新井隆一稿『税務相談の意義』/『税研』財団法人日本税務研究センターp18〜26
本記事では『税務相談』の意味や解釈について説明しました。
アプリその他のサービスの構築の際に,このテーマが問題となることもよくあります。
当然ですが,詳細なサービス内容(行為の内容)によって結論は違ってきます。
実際に『税務相談』の意味や解釈の問題に直面している方は,本記事だけで判断せず,法律相談をご利用くださることをお勧めします。