【仮想通貨交換業の定義と判断の方法(資金決済法とガイドライン)】
1 仮想通貨交換業の定義と判断の方法
2 仮想通貨交換業の定義
3 『業』の解釈
4 差金決済取引の『交換』該当性(否定)
5 仮想通貨の取引と資金移動業該当性の関係
6 仮想通貨交換業と貸金業の関係
1 仮想通貨交換業の定義と判断の方法
資金決済法が改正され,平成29年から,仮想通貨交換業の登録制度が始まっています。
詳しくはこちら|仮想通貨交換所の規制(平成28年改正資金決済法)の全体像
資金決済法には仮想通貨交換業の定義が規定されています。
また,仮想通貨交換業ガイドライン(事務ガイドライン)では,仮想通貨交換業の該当性の判断に関する注意点などが示されています。
本記事では,『仮想通貨交換業』の定義や判断の方法について説明します。
2 仮想通貨交換業の定義
仮想通貨交換業の定義の内容をまとめます。
つまり,サービス提供のためには登録が必要となるものの範囲ということです。
<仮想通貨交換業の定義>
あ 定義本体
『仮想通貨交換業』とは,『い』のうちいずれかを業として行う(※1)ことをいう
い 仮想通貨交換業の内容
ア 仮想通貨の売買or他の仮想通貨との交換イ 『ア』の行為の媒介or取次ぎor代理ウ 『ア・イ』の行為に関して,利用者の金銭or仮想通貨の管理をすること ※資金決済法2条7項
3 『業』の解釈
仮想通貨交換業に該当するものは,サービス提供が『業として』であるものに限られます(前記)。
『業』の解釈については,仮想通貨交換業ガイドラインに示されています。
<『業』の解釈>
あ 『業』の基本的解釈
『業として行うこと』(前記※1)とは
『対公衆性』のある行為で『反復継続性』をもって行うことをいうものと解される
い 反復継続の意思の該当性(肯定)
『対公衆性』や『反復継続性』が想定されている場合も『業として行う』に含まれる
現実に『対公衆性』のある行為が反復継続して行われている場合に限らない
※仮想通貨交換業ガイドライン『Ⅰ−1−2(注1)』・p5
多くの業種の業法で『業』に関する定義が問題となります。
一般的な『業』の解釈については別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|業法の『業・事業・営業』の基本的な解釈(反復継続意思・事業規模・不特定多数)
4 差金決済取引の『交換』該当性(否定)
先物取引には,現物取引と差金決済取引があります。
差金決済取引は仮想通貨そのもの(現物)の交換は行われません。
仮想通貨交換業の定義の中に(仮想通貨の)『交換』があります。
そこで,差金決済取引は仮想通貨交換業に該当しません。
<差金決済取引の『交換』該当性(否定)>
あ 先物取引の種類
仮想通貨を用いた先物取引などの取引においては『い・う』の取引が存在する
い 現物取引
決済時に取引の目的となっている仮想通貨の現物の受渡を行う取引
う 差金決済取引
取引の目的となっている仮想通貨の現物の受渡を行わない
金銭or取引において決済手段とされている仮想通貨の授受のみによって決済することができる取引
反対売買を行うことなどにより実行する
え 差金決済取引と仮想通貨の『交換』(否定)
差金決済取引(う)については
『仮想通貨の交換等』には該当しない
=資金決済法の規制が適用されない
お 個別的な事情の判断
法の適用を受ける取引かどうかについては, 個別具体的に取引の内容を確認する必要がある
※仮想通貨交換業ガイドライン『Ⅰ−1−2』・p5
5 仮想通貨の取引と資金移動業該当性の関係
仮想通貨の取引が仮想通貨交換業に該当する場合は資金決済法の規制対象となります。
これとは別に,他の法規制の対象となることもありえます。
金銭の移動がサービス内容となっている場合は,為替取引に該当します。資金移動業の登録が必要となります。
<仮想通貨の取引と資金移動業該当性の関係>
あ 為替取引への該当性
『い』の行為は,為替取引に該当する
→資金移動業者の登録が必要となり得る
※資金決済法37条
詳しくはこちら|為替取引・資金移動業の規制の基本(銀行法の免許・資金決済法の登録)
い 為替取引に該当する行為の例
ア 仮想通貨の交換を行う者が,金銭の移動を行うことを内容とする依頼を受けて,これを引き受けることイ 『ア』を引き受けて遂行すること ※仮想通貨交換業ガイドライン『Ⅰ−1−2(注2)』・p5
なお,仮想通貨自体を移動(送金・送信)することは,資金の移動ではないので為替取引に該当しないと考えられています。あくまでも金銭(法定通貨)の移動を行うサービスが為替取引に該当するという意味です。
6 仮想通貨交換業と貸金業の関係
仮想通貨の取引が貸金業に該当することもありえます。
金銭の貸付のサービスがある場合です。
ここでの金銭には仮想通貨は含まれません。
詳しくはこちら|ビットコインの取引所・貸与→貸金業登録・古物営業許可は不要|グレーゾーン
<仮想通貨交換業と貸金業の関係>
あ 貸付を伴うサービス
仮想通貨を用いた信用取引などを行うに際して
仮想通貨交換業者が利用者に対する金銭の貸付けを行うサービス
い 貸金業該当性
『あ』のサービスは『貸金業』に該当する
→貸金業の登録を受ける必要がある
※仮想通貨交換業ガイドライン『Ⅰ−1−2(注5)』・p5
詳しくはこちら|『貸金業』の定義と登録制・無登録営業への罰則(付随的サービスの適用除外)
なお,仮想通貨自体を貸し付けるサービスは貸金業に該当しないと考えられています。あくまでも金銭(法定通貨)を貸し付けるサービスが貸金業に該当するのです。
資金決済法,内閣府令,事務ガイドラインの情報ソースは別の記事で紹介しています。
詳しくはこちら|仮想通貨交換所の規制(平成28年改正資金決済法)の全体像
本記事では仮想通貨の定義や判断の方法について説明しました。
これ以外にも,仮想通貨交換業の登録には多くの細かいルールや運用上の慣行があります。
みずほ中央法律事務所では,仮想通貨交換業の登録やその準備段階のサポートを行っています。
実際に仮想通貨交換業登録をお考えの方は法律相談をご利用くださることをお勧めします。