【マスメディアの業界ごとの自主規制(一般・広告)の種類と歴史】
1 マスメディアの業界ごとの自主規制
2 マスメディアの一般的な自主規制の歴史
3 マスメディアの主な広告に関する自主規制
4 新聞広告倫理綱領の3原則
1 マスメディアの業界ごとの自主規制
マスメディアは,業界ごとに自主規制のルールを作っています。
法令による規制とは別の,多くの民間企業の組織としてのルールです。
自主規制は,実務において,メディアが掲載や放映するかどうかの判断において使われます。
自主規制は法的効力があるわけではありません。
しかし,メディアが掲載や放映を拒否することについての適法性(責任)の判断材料の1つとして使われることもあります。
詳しくはこちら|広告掲載の契約を解除したメディアの責任(原発バイバイCM打ち切り事件)
本記事では,マスメディアのいろいろな業界の自主規制の種類や歴史について説明します。
2 マスメディアの一般的な自主規制の歴史
マスメディアの自主規制の歴史としては,最初に,一般的な規制が作られました。
起源は先後のGHQの要請までさかのぼります。
時代とともに自主規制を導入する団体が増えてゆきます。
<マスメディアの一般的な自主規制の歴史>
あ GHQによる自主規制制定の要請
先後の占領下において
連合国総司令部(GHQ)が新聞・通信社代表を集めた
新聞連合会のような組織を作って倫理綱領を制定するように求めた
い 新聞(+放送)業界
1946年
新聞倫理綱領が制定された
これに従う新聞社によって日本新聞協会が設立された
その後,この協会に放送も加わった
う 出版業界
1957年
日本書籍出版協会が出版倫理綱領を制定した
え 雑誌業界
1963年
日本雑誌協会が雑誌編集倫理綱領を制定した
お 出版取次業界
1962年
日本出版取次協会が出版物取次倫理綱領を制定した
か 映画業界
1959年
映画倫理機構が映画倫理規定を制定した
き ビデオ業界
1987年
日本ビデオ倫理協会が映像ソフト倫理規程を制定した
※松井茂記著『マス・メディア法入門 第4版』日本評論社2008年p342
3 マスメディアの主な広告に関する自主規制
前記の自主規制は表現一般を対象とするものでした。
これとは別に広告を対象とする自主規制も作られています。
<マスメディアの主な広告に関する自主規制>
あ 広告業界
1954年
全日本広告連盟が広告倫理綱領を制定した
い 新聞業界
1958年
日本新聞協会が新聞広告倫理綱領を制定した
う 雑誌業界
1958年
日本雑誌広告会が雑誌広告倫理綱領を制定した
※松井茂記著『マス・メディア法入門 第4版』日本評論社2008年p342
4 新聞広告倫理綱領の3原則
広告に関するメディアの自主規制のうち,代表的なものは新聞に関するものです。
新聞広告倫理綱領では根本的な3つの原則を定めています。
<新聞広告倫理綱領の3原則>
あ 真実性
新聞広告は、真実を伝えるものでなければならない。
い 品位の保持
新聞広告は、紙面の品位を損なうものであってはならない。
う 適法性
新聞広告は、関係諸法規に違反するものであってはならない。
※札幌地裁平成15年9月11日参照
本記事では,マスメディアの業界ごとの自主規制の種類や歴史について説明しました。
自主規制は,法的責任の判断の中で使われることもあります(前記)。
実際の問題に直面している方や,掲載や放映をすべきかどうかを検討しているメディアの関係者は,本記事の内容だけでは判断せず,弁護士の法律相談をご利用くださることをお勧めします。