【異性との交際による婚約破棄→慰謝料100万円と財産的損害賠償を認めた裁判例】
1 異性との交際による婚約破棄の裁判例
2 異性との交際による婚約破棄と責任
3 婚約を破棄させた婚約者の賠償責任
4 婚約者を寝取った者の婚約破棄の責任
1 異性との交際による婚約破棄の裁判例
婚約が成立した後,不当に破棄されたケースでは,法的な賠償責任が生じます。
詳しくはこちら|婚約破棄の慰謝料は30〜300万円が相場だが事情によって大きく異なる
詳しくはこちら|婚約を破棄した者は出費や退職による収入減少の賠償をする(財産的損害)
本記事では,慰謝料の金額や財産的損害の賠償の内容が細かく算定された裁判例を紹介します。
婚約破棄に関わった者の責任も認められています。
2 異性との交際による婚約破棄と責任
婚約が破棄されることになった直接の要因は婚約男性と婚約者以外の女性との性的関係です。
当然,婚約破棄は正当化されません。
<異性との交際による婚約破棄と責任>
あ 婚約破棄
男性Aと女性Bが婚約した
その後,Bは男性Cと交際(性的関係)を継続していた
このことにより,A・Bの婚約は破棄(解消)された
い 賠償責任(正当の理由)の判断
B・Cの行為により婚約が破棄されるに至った
→不法行為の賠償責任が生じる
3 婚約を破棄させた婚約者の賠償責任
婚約男性は,婚約破棄の責任を負います。
責任の内容は慰謝料と財産的損害に分けられます。
婚約が継続した期間は約3か月と短かったので,慰謝料はやや低めの100万円と認定されました。
婚姻する前提で支出した費用については,一般論として,婚約破棄の不当性の程度によって賠償する割合が異なります。
詳しくはこちら|婚約を破棄しても慰謝料が発生しない正当な理由の具体例や判断基準
このケースでは男性の不法性が強いので,出費の全額について賠償責任が認められました。
<婚約を破棄させた婚約者の賠償責任>
あ 慰謝料の算定
婚約の成立前からBはCと交際していた
婚約の継続期間は約3か月程度であった(短い)
→Bが負う慰謝料は100万円とする(※1)
い 財産的損害の算定
Aは,Bと夫婦となることを信じて次の支出した
→Bが賠償する財産的損害となる
婚約指輪代 | 64万5750円 |
結婚式場申込代 | 10万円 |
Bの借財返済のため交付した金銭 | 70万円 |
新居への引越費用 | 6万1000円 |
電化製品購入代金 | 10万円 |
サイドテーブル購入代金の一部 | 2万4000円 |
雑貨購入代金 | 4万円 |
給料の一部をBに交付した金額 | 54万円 |
合計 | 約221万円 |
※東京地裁平成17年3月17日
4 婚約者を寝取った者の婚約破棄の責任
このケースでは,婚約男性と性的関係をもった女性が,婚約のことを知っていました。
そこで,この女性も婚約破棄について連帯責任を負いました。
ただし,関与の程度は婚約男性よりは小さいといえます。
慰謝料の合計額100万円のうち30万円についてだけ交際相手の女性も賠償責任を負うことになりました。
<婚約者を寝取った者の婚約破棄の責任>
あ 婚約破棄との因果関係
A・Bの婚約が破棄された主な要因はBとCの性的関係である
ただし主な婚約破棄の要因はBの行動である
Cの関与は補充的なものである
い 慰謝料の算定
慰謝料は30万円とする
この範囲内でB・Cは連帯して債務を負う
なおBは,これも含めて慰謝料100万円の支払義務(前記※1)がある
※東京地裁平成17年3月17日
本記事は,異性との交際を要因とする婚約破棄の事例の裁判例を紹介しました。
参考になる理論がいくつか含まれています。
似ている事案があっても,細かい事情の違いによって,逆の結論となることもあります。
実際に婚約破棄の責任の有無(正当な理由)の問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。
多額の資金をめぐる離婚の実務ケーススタディ
財産分与・婚姻費用・養育費の高額算定表
2021年10月発売 / 収録時間:各巻60分
相続や離婚でもめる原因となる隠し財産の調査手法を紹介。調査する財産と入手経路を一覧表にまとめ、網羅解説。「ここに財産があるはず」という閃き、調査嘱託採用までのハードルの乗り越え方は、経験豊富な講師だから話せるノウハウです。