【不動産の付合の基本(従として付合した動産は不動産所有者が取得する)】
1 不動産の付合の基本
2 不動産の付合に関する条文規定
3 付合の成立要件
4 付合の効果の全体
5 不動産の付合の具体例(概要)
1 不動産の付合の基本
民法に付合という規定があります。
詳しくはこちら|民法の添付(付合・混和・加工)の規定(民法242〜248条)
付合の種類の中に不動産の付合があります。
土地や建物に付着した動産の所有権が,不動産の所有者に移転するというルールです。
実際に,農作物や樹木や大きな機械や設備について,当事者が意識しないのに法律上所有者が変わるということがあります。
本記事では,不動産の付合の規定の基本的な内容や解釈を説明します。
2 不動産の付合に関する条文規定
まず,不動産の付合に関する民法の条文の規定を整理します。
<不動産の付合に関する条文規定>
あ 不動産の付合
不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得する。ただし、権原によってその物を附属させた他人の権利を妨げない。
※民法242条
い 第三者の権利に関する効果
第242条から前条までの規定により物の所有権が消滅したときは、その物について存する他の権利も、消滅する。
※民法247条1項
う 償還請求
第242条から前条までの規定の適用によって損失を受けた者は、第703条及び第704条の規定に従い、その償金を請求することができる。
※民法242条
3 付合の成立要件
条文には『付合』としか記載されていません。
具体的に,どのような状況が『付合』に該当するのか,が問題となるトラブルもあります。
一般的に,不動産(土地か建物)と動産が分離できないか,分離するために過剰な費用を要することを付合として扱います。
<付合の成立要件>
分離復旧が事実上不可能or社会経済上著しく不利である
=分離が過分の費用を要するor毀損をもたらす
→付合に該当する
※通説
※川島武宣ほか編『新版 注釈民法(7)物権(2)』有斐閣2007年p396
4 付合の効果の全体
不動産の付合が成立すると,付合(付着)した動産の所有権が不動産所有者に移転します。
しかし,法的な効果はこれだけではありません。
<付合の効果の全体>
あ 所有権移転
付着した物の所有権が移転する
※民法242条2項本文
い 第三者の権利の消滅
付着した物に対する第三者の権利が消滅する
※民法247条
不動産に対する第三者の権利が付着した物に及ぶ
う 償還請求権
付合した物の旧所有者は,不動産所有者に対し,償金請求権を取得する
必ずしも付合の効果というわけではない
※民法248条,703条,704条
え 除去請求権の消滅(複数見解あり)
不動産所有者が,付着した物の除去を請求できなくなる
不動産所有者が付着を承諾していない場合には否定する見解もある
※川島武宣ほか編『新版 注釈民法(7)物権(2)』有斐閣2007年p400
5 不動産の付合の具体例(概要)
以上の説明は,不動産の付合の基本的な規定や解釈についてのものでした。
実際に問題となりやすいものはある程度決まっています。
農作物や機械・設備などが典型例です。
これらについては別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|不動産の付合の典型例(農作物・樹木・設備・機械)
本記事では,不動産の付合の基本的な規定や解釈について説明しました。
具体的な事情によって判断は大きく異なります。
実際の問題に直面されている方は,本記事の内容だけで判断せず,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。