【内縁関係や認知しないことの不利益扱い(家族の形態への国家の介入)】
1 内縁関係や認知しないことへの不合理な差別
2 内縁の不利益扱い(法律婚の優遇)
3 憲法24条による家庭生活の男女平等
4 認知しないことへの課税上の不利益扱い
1 内縁関係や認知しないことへの不合理な差別
法律婚と内縁(事実婚)は法律的に同じように扱われます。
しかしまったく同じではなく,違いもあります。
詳しくはこちら|内縁関係に適用される制度と適用されない制度(法律婚の優遇)
一方,誕生した子供を認知するかしないかも父・母が納得していれば自由に選択できます。
このような法律上の自由が,現実には害されています。
つまり,『家族』の形態を選択する自由に国家が介入しているともいえます。
本記事では,内縁や認知しないという選択が不合理に差別される具体的状況について説明します。
2 内縁の不利益扱い(法律婚の優遇)
前記のように,内縁関係には適用されない法律婚の制度があるのです。これは不当に内縁を不利に扱う差別とも考えられます。
要するに法律婚の優遇の裏返しの問題です。
<内縁の不利益扱い(法律婚の優遇)>
あ 内縁の不利益扱い
法律婚を優遇する制度・規定がある
詳しくはこちら|内縁関係に適用される制度と適用されない制度(法律婚の優遇)
→法律婚(婚姻)をしない者を不利に扱うことにつながる
い 法律婚の強制
家族(パートナー)となる男女にとって
有利な制度の適用を受けるためには法律婚をせざるを得ないことになる
→法律婚(結婚)を強要することにつながる
憲法24条(後記※1)に反するという考えもある
3 憲法24条による家庭生活の男女平等
憲法24条は,家庭生活で男女が平等であることを明確に示しています。
また,当事者である男性と女性の2人の合意だけで婚姻するかしないかを自由に選択できることもしっかりルールとして示しています。
前記のように,法律婚を優遇することが,この選択の自由を害するともいえるのです。
<憲法24条による家庭生活の男女平等(※1)>
あ 憲法24条の条文規定
婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。
※日本国憲法24条
い 憲法24条のポイント
婚姻する/しないの判断を両性の合意だけに委ねている
=婚姻するかしないかを自由に選択できる
実際に夫婦別姓を認めないことにより婚姻するかしないかの自由が害されているという理由で国家賠償請求訴訟がなされた事例もあります。
詳しくはこちら|夫婦同姓の制度の合憲性(平成27年最高裁判例)
4 認知しないことへの課税上の不利益扱い
婚姻とは少し別のテーマですが,(誕生した子供の)認知についても,するかしないか(いつ認知するか)には当事者に選択の自由があります。
民法上はこの自由が整備されているのですが,課税面で認知しない選択が不利に扱われるリスクがあります。
これも,認知しない選択肢を断念させる方向に働く可能性があります。
国民が個人として選択,設計する家族のあり方に国家が不当に介入するともいえます。
<認知しないことへの課税上の不利益扱い>
あ 認知をしない選択の実情
『父子関係』は間違いないけれど,敢えて認知しないというケースがある
法律上も遺言認知・死後認知の制度が整備されている
→(すぐには)認知しない選択を許容している
詳しくはこちら|死後の認知|全体|認知を回避or遅らせる背景事情
い 法律以前の経済的サポート
父と母が納得して認知を避けているケースにおいて
通常,父が母(子)に対して,ごく自然に生活費を渡す
う 課税上の不利益
『親子関係がない→法的な扶養義務がない』といえる
→贈与税が課税されるリスクがある
詳しくはこちら|扶養料・養育費への贈与税課税|基本|一括払い・認知未了
え 認知の強要
民法上の規定で認知しない選択が許容されている(あ)
しかし,税務上の扱いで認知することを強要していると考えられる
本記事では,法律婚の優遇の裏返しである内縁の不利益扱いや,認知しないことの不利益扱いについて説明しました。
このような不合理があるからといって,いろいろな法令を容易に無効にできるわけではありません。
しかし,実際のトラブルでの個々の規定の適用における判断に影響を与えることはあり得ます。
実際に男女関係や夫婦の間の問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。
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