【弁護士法72条の『法律事件』の解釈(事件性必要性と不要説)】
1 弁護士法72条の『法律事件』(事件性必要性と不要説)
2 条文規定における『法律事件』の例示
3 『その他一般の法律事件』の解釈論
4 『その他一般の法律事件』の判断基準
1 弁護士法72条の『法律事件』(事件性必要性と不要説)
弁護士法72条では,弁護士以外の者が法律事件に関する法律事務を行うことが禁止されています。
詳しくはこちら|非弁護士の法律事務の取扱禁止(非弁行為)の基本(弁護士法72条)
禁止される内容である『法律事件』の意味については,統一的な解釈がありません。
本記事では,弁護士法72条の『法律事件』の解釈論について説明します。
なお,法律事務は法律事件とは別の意味(解釈論)です。
詳しくはこちら|弁護士法72条の『法律事務』の解釈
2 条文規定における『法律事件』の例示
まず,条文の中に『法律事件』の具体例が示されています。
<条文規定における『法律事件』の例示>
ア 裁判所関係
訴訟事件・非訟事件
イ 行政の不服申立
行政庁に対する不服申立事件
例;審査請求・再調査の請求・再審査請求
ウ 一般的な法律事件
その他一般の法律事件(※1)
※弁護士法72条
3 『その他一般の法律事件』の解釈論
『法律事件』として条文に示されている文言の最後に『その他一般の法律事件』と記載されています(前記※1)。
結局,どこまでが『法律事件』といえるのか,が,条文だけではハッキリしません。
そこで,いろいろな見解が存在します。大きく分けると事件性が必要とする見解と不要とする見解です。
<『その他一般の法律事件』の解釈論)>
あ 事件性必要説
争いや疑義が具体化or顕在化していることが必要である
判例はこの見解に近い(後記※2)
※福原忠男『弁護士法 増補版』第一法規出版1976年p288
い 事件性不要説
『あ』のような要件は不要である
※日本弁護士連合会調査室『条解弁護士法 第4版』弘文堂2007年p615
4 『その他一般の法律事件』の判断基準
『その他一般の法律事件』について,最高裁判例によって基準といえるようなものが示されています。
ただしあくまでも『その他一般の法律事件』に該当する理由として記述してある,という文脈になっています。
判断基準として示したわけではありません。
<『その他一般の法律事件』の判断基準(※2)>
あ 判断基準
『交渉において解決しなければならない法的紛議が生ずることがほぼ不可避である案件に係るもの』であるため
→『その他一般の法律事件』(前記※1)に該当する
い 補足説明
『その他一般の法律事件』の一般的解釈として示したわけではない
実質的には該当性の判断基準となる
※最高裁平成22年7月20日