【特別背任罪(会社法960条)の基本(条文・法的位置づけ)】

1 特別背任罪(会社法960条)の基本
2 特別背任罪(会社法960条1項)の条文規定
3 特別背任罪の法的位置づけ
4 特別背任罪の具体例(概要)

1 特別背任罪(会社法960条)の基本

会社法に特別背任罪の規定があります。これは,刑法247条の(単純な)背任罪がベースになっています。
詳しくはこちら|背任罪の基本(条文と背任行為の各要件の解釈・判断基準)
本記事では,特別背任罪の条文や(単純な)背任罪との関係などの基本的な内容を説明します。

2 特別背任罪(会社法960条1項)の条文規定

最初に,特別背任罪の条文そのものを押さえておきます。
メインの部分は単純な背任罪と実質的に同じですが,行為者が会社の役員などに限定されています。

<特別背任罪(会社法960条1項)の条文規定>

(取締役等の特別背任罪)
第九百六十条 次に掲げる者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は株式会社に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、当該株式会社に財産上の損害を加えたときは、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 発起人
二 設立時取締役又は設立時監査役
三 取締役、会計参与、監査役又は執行役
四 民事保全法第五十六条に規定する仮処分命令により選任された取締役、監査役又は執行役の職務を代行する者
五 第三百四十六条第二項、第三百五十一条第二項又は第四百一条第三項(第四百三条第三項及び第四百二十条第三項において準用する場合を含む。)の規定により選任された一時取締役(監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員である取締役又はそれ以外の取締役)、会計参与、監査役、代表取締役、委員(指名委員会、監査委員会又は報酬委員会の委員をいう。)、執行役又は代表執行役の職務を行うべき者
六 支配人
七 事業に関するある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人
八 検査役
2(略)

3 特別背任罪の法的位置づけ

特別背任罪は,刑法の単純な背任罪に該当する行為のうち,行為者が一定の責任ある地位にある場合を重く処罰するというものです。背任罪の特別規定という関係にあります。

<特別背任罪の法的位置づけ>

あ 背任罪との関係

会社法960条(特別背任罪)は刑法247条(背任罪)の特別規定である
身分的加重構成要件を定めるものである

い 法定刑の比較

会社法960条の法定刑は刑法の背任罪よりも重い
懲役・罰金の併科が可能である

う 法定刑の内容

ア 特別背任罪 懲役10年以下or罰金1000万円以下
併科あり
※会社法960条
イ 背任罪(参考) 懲役5年以下or罰金50万円以下
※刑法247条

4 特別背任罪の具体例(概要)

実際に特別背任罪にあたる行為には,ある程度決まったパターンがあります。
典型的な背任行為の例は,別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|背任罪の具体例(任務違背・図利加害目的の判断をした裁判例)

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【背任罪の基本(条文と背任行為の各要件の解釈・判断基準)】
【背任罪の具体例(任務違背・図利加害目的の判断をした裁判例)】

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