【民法上の『居所』(規定・意味・住所との違い)】
1 民法上の『居所』(規定・意味・住所との違い)
2 民法23条(居所)の条文
3 居所を住所とみなす状況(住所が知れない)
4 居所の意味
5 居所の具体例
6 複数の居所の可否(肯定)
1 民法上の『居所』(規定・意味・住所との違い)
民法では『居所』の意味を規定した条文(23条)があります。
『居所』は,『住所』に準ずるものとして,民法のいろいろな規定で使うことがありますし,また,裁判(民事や家事の訴訟や調停など)でも使うことがあります。
本記事では,民法上の『居所』の規定や解釈や認定(判断)基準について説明します。
2 民法23条(居所)の条文
最初に,民法の『居所』を規定する条文を確認しておきます。本記事では,基本的な意味を示す1項だけを説明します。
民法23条には,住所が知れない時に居所を住所とみなすとだけ簡単に規定されています。
なお,住所とは生活の本拠を意味します。
詳しくはこちら|民法上の『住所』(意味・認定基準・認定した判例)
<民法23条(居所)の条文>
(居所)
第二三条 住所が知れない場合には、居所を住所とみなす。
2 日本に住所を有しない者は、その者が日本人又は外国人のいずれであるかを問わず、日本における居所をその者の住所とみなす。ただし、準拠法を定める法律に従いその者の住所地法によるべき場合は、この限りでない。
3 居所を住所とみなす状況(住所が知れない)
居所が住所とみなされるのは,住所が知れない場合です(前記)。
住所が知れないという言葉の意味は,文字どおり知らないということを当然含むのに加えて,住所が存在しないということも含みます。
<居所を住所とみなす状況(住所が知れない)>
あ 『住所が知れない』の意味
住所が知れない場合とは『い・う』のいずれをも含む
い 不明
どこかに住所(生活の本拠)を有しているけれど,その所在が不明である
う 不存在
住所(生活の本拠)をまったく有しない
※我妻栄ほか著『我妻・有泉コンメンタール民法〜総則・物権・債権〜第3版』日本評論社2013年p104
4 居所の意味
居所の意味は,生活の中心というようなものです。住所つまり生活の本拠と似ています。もちろん違いもあります。
生活と場所の結びつきが住所よりも弱い程度の状況であれば居所となります。
<居所の意味>
あ 『居所』の意味
『居所』は,住所と同様にその人の生活の中心となる場所である
多少の期間継続して居住する場所である
生活の本拠(住所)ほど確定的な関係を生じるに至らない場所である
い 定住意思の要否(否定)
『居所』には定住の意思を要しない
※我妻栄ほか著『我妻・有泉コンメンタール民法〜総則・物権・債権〜第3版』日本評論社2013年p104,105
5 居所の具体例
居所として認定される場所(生活状況)の具体例としては,学生の下宿や単身赴任のサラリーマンの社員寮のようなものが挙げられます。
もちろん,具体的な状況によっては,これらの場所が(居所を超えて)住所と認定されることもあります。
<居所の具体例>
あ 学生の下宿地
い 勤め人の住所以外の勤務地の住居
※賀集唱ほか編『基本法コンメンタール 民事訴訟法1 第3版追補版』日本評論社2012年p26,27
6 複数の居所の可否(肯定)
複数の拠点を生活の中心としている人もいます。そこで,複数の居所を認めることもあります。
<複数の居所の可否(肯定)>
同一の人について複数の居所を認める見解が一般的である
※賀集唱ほか編『基本法コンメンタール 民事訴訟法1 第3版追補版』日本評論社2012年p27
本記事では,民法上の居所の意味や解釈や認定基準について説明しました。
実際に居所(や住所)が問題となるのは,さまざまな通知の効力や裁判の管轄などの別の問題の前提としてです。
実際に居所(や住所)に関する問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。