【異常に高額な違約金による暴利行為の裁判例(無効・有効)】
1 異常に高額な違約金による暴利行為の裁判例(無効・有効)
2 代金と同額の違約金→無効
3 代金の3割の違約金→部分的無効
4 代金の28%の違約金→有効
5 違約時に同程度の代替土地を譲渡する特約→無効
1 異常に高額な違約金による暴利行為の裁判例(無効・有効)
売買代金の違約金(損害賠償額の予定)が異常に高い場合,暴利行為(公序良俗違反)として契約が無効となることがあります。
詳しくはこちら|売買の代金額や違約金が不当だと無効となる(暴利行為の判断基準)
本記事では,実際に異常に高い違約金や損害賠償額の予定の特約が問題となり,裁判所が有効・無効を判断した事例を説明します。
2 代金と同額の違約金→無効
売買代金と同じ金額という異常な違約金が設定されたケースがあります。
当然,暴利行為として無効となりました。
<代金と同額の違約金→無効>
あ 売買契約の内容
自動車の売買について分割払いとした
売買代金と同額の違約金が定められていた
い 裁判所の判断
買主にとって極端に過酷な場合が生じうる
→公序良俗違反である=無効である
※福岡地裁昭和34年11月18日
3 代金の3割の違約金→部分的無効
代金の3割に相当する金額が違約金として設定されたケースです。その後,売主の手続的な遅れがあったので,この違約金の支払が請求されました。
やはり,金額が高すぎるので,裁判所は違約金の特約を無効とした上で,5%の範囲だけを有効としました。
<代金の3割の違約金→部分的無効>
あ 売買契約の内容
YはXに土地を売却した
売買価格の3割にあたる違約金の特約があった
い 債務不履行の発生
Yが地積改訂の手続をするのが遅れた
XはYに,違約金を請求した
Xに実損害はほとんど生じていない
う 裁判所の判断
損害発生の蓋然性が著しく低い場合には,違約金の定めは違約罰と解される
違約罰は一種の私的制裁にあたる
→私的自治は修正を免れない
罪が重きに失するときにはその一部または全部が公序良俗に反する
→本件特約は公序良俗違反である
→5%までを有効とした(5%を超える部分が無効である)
※大津地裁昭和48年11月8日
4 代金の28%の違約金→有効
代金の28%相当の金額を買主が負う違約金として定めたケースです。
裁判所は,金額として過大であることは認めましたが,買主の窮状に乗じたものではないことを理由として暴利行為ではないと判断しました。つまり,契約・特約は有効となりました。
<代金の28%の違約金→有効>
あ 売買契約の内容
売買代金=2万5000円
違約金=7000円(代金の28%)
違約金相当額が内金として支払われた
い 裁判所の判断
違約金は過大であるが,買主の窮迫に乗じたとはいえない
→公序良俗違反ではない=有効である
※大判昭和14年1月31日
5 違約時に同程度の代替土地を譲渡する特約→無効
純粋な違約金ではなく,違約(債務不履行)の際に,売主が所有する別の不動産を渡すという特約があったケースです。
代替として渡す土地は,売買の対象の土地と同程度の面積でした。
面積比をそのまま使うと,売買代金の約73%の違約金と同じことになります。
このように価値が大きいことに加え,売主の判断能力が低かったことも含めて考慮して,最終的に特約は無効とされました。
<違約時に同程度の代替土地を譲渡する特約→無効>
あ 売買契約の内容
土地甲(59坪)の売買契約が締結された
売主の不履行の場合には売主が所有する土地乙(43坪)を譲渡するという特約があった
土地乙はYが居住する建物の敷地であった
い 裁判所の判断
特約はYの無思慮に乗じた過怠約款として著しく過酷である
→公序良俗違反である=(特約が)無効である
(売買契約は有効である)
※東京高裁昭和44年12月17日
本記事では,高額な違約金(損害賠償の予定)が暴利行為として問題となった裁判例を説明しました。
実際には,個別的な細かい事情の主張・立証の仕方によって判断が違ってきます。
実際に暴利目的の不当な内容の契約の問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。