【民事訴訟・刑事訴訟における違法な証言拒絶に対する制裁(過料・罰金・拘留)】

1 民事訴訟・刑事訴訟における違法な証言拒絶に対する制裁
2 民事訴訟における違法な証言拒絶に対する制裁(基本)
3 民事訴訟における証言拒絶の制裁の内容(種類)
4 刑事訴訟における違法な証言拒絶に対する制裁(基本)
5 刑事訴訟における証言拒絶の制裁の内容(種類)

1 民事訴訟・刑事訴訟における違法な証言拒絶に対する制裁

民事訴訟でも刑事訴訟には,真実発見という大きな使命があります。
そこで,一般的に証言義務があります。例外的に証言を拒絶できる場合もありますが,状況は限定されています。
詳しくはこちら|刑事訴追のおそれ・名誉侵害による証言拒絶権(民事訴訟法196条)
詳しくはこちら|民事訴訟・刑事訴訟における弁護士・司法書士の証言拒絶権
証言義務がある(証言拒絶権がない)のに証言しないという場合には,制裁の対象となります。
本記事では,違法な証言拒絶に対する制裁について説明します。

2 民事訴訟における違法な証言拒絶に対する制裁(基本)

まず,民事訴訟での証言義務違反については,裁判所は過料と罰金のいずれかを課すことができます。手続としては,証言拒絶の理由がないことを判断する裁判が必須です。つまり,この裁判の後に証言すれば制裁は課せられませんが,証言拒否を維持した場合にだけ制裁が課せられるのです。

<民事訴訟における違法な証言拒絶に対する制裁(基本)>

あ 証言拒絶の理由を審理する裁判

証言拒絶の理由の有無を審理する裁判を行う
※民事訴訟法199条

い 証言拒絶の制裁の適用

証言拒絶に理由がないとする裁判が確定した
その後,証人が正当な理由なく証言を拒んだ場合
→過料・罰金などの制裁(後記※1)が適用される

う 2つの制裁の関係

ア 刑罰のハードルの高さ 過料・罰金などの制裁(後記※1)の関係について
悪質なものについて刑罰(193条)を適用すべきである
※高田裕成ほか編『注釈民事訴訟法 第4巻』有斐閣2017年p211
イ 併科(肯定説) 制裁という意味では同じである
→併科はできない
※憲法39条後段参照
ウ 併科(否定説) 秩序罰と刑罰は性質も裁判手続も異なる
→併科もあり得るという見解もある
※高田裕成ほか編『注釈民事訴訟法 第4巻』有斐閣2017年p212

3 民事訴訟における証言拒絶の制裁の内容(種類)

民事訴訟での違法な証言拒絶の制裁には主に過料と罰金の2種類があります。

<民事訴訟における証言拒絶の制裁の内容(種類・※1)>

あ 間接強制としての秩序罰

ア 制裁の内容 訴訟費用の負担の命令・過料10万円以下
一方or両方が科せられる
必ず両方を科すべきという見解もある
※高田裕成ほか編『注釈民事訴訟法 第4巻』有斐閣2017年p209,210
イ 制裁を科す手続 (証言拒絶の理由を否定する裁判の確定の後に)
民事訴訟の中で科せられる
※民事訴訟法200条,199条,192条

い 刑罰

ア 法定刑 罰金10万円以下or拘留(併科あり)
※民事訴訟法200条,199条,193条
イ 手続 受訴裁判所は捜査機関に告発する
※刑事訴訟法239条2項
※高田裕成ほか編『注釈民事訴訟法 第4巻』有斐閣2017年p211,263

4 刑事訴訟における違法な証言拒絶に対する制裁(基本)

刑事訴訟での違法な証言拒絶に対しても,法的な制裁が適用されます。

<刑事訴訟における違法な証言拒絶に対する制裁(基本)>

あ 制裁の適用

証人が正当な理由がなく宣誓or証言を拒んだ場合
→秩序罰・刑罰(後記※2)の制裁が適用される

い 2つの制裁の関係

秩序罰・刑罰(後記※2)の関係について
目的・要件・実現手段が異なる
→併科も許される
※最高裁39年6月5日

5 刑事訴訟における証言拒絶の制裁の内容(種類)

刑事訴訟での証言拒絶への制裁の内容も,民事訴訟と同様に過料や罰金などがあります。
制裁の種類や内容は,民事訴訟での証言拒絶と同様です。
刑事訴訟で証言拒絶について秩序罰(過料など)を科す手続として正当な理由の判断を審理する裁判はありません。しかし,告知や聴聞の機会を設定する運用がとられているので,実質的な違いはないでしょう。

<刑事訴訟における証言拒絶の制裁の内容(種類・※2)>

あ 間接強制としての秩序罰

ア 制裁の内容 訴訟費用の賠償(負担)・過料10万円以下
一方or両方が科せられる
※三井誠ほか編『新基本法コンメンタール 刑事訴訟法 第2版 追補版』日本評論社2017年p185
イ 制裁を科す手続 告知,聴聞の機会を与える
事前に制裁の告知と証言命令(刑事訴訟規則122条)を行うのが一般的である
→裁判所の決定によって制裁を科す
※三井誠ほか編『新基本法コンメンタール 刑事訴訟法 第2版 追補版』日本評論社2017年p185
※刑事訴訟法160条1項

い 刑罰

ア 法定刑 罰金10万円以下or拘留
イ 手続 一般的な刑事手続(刑事裁判など)によって科せられる
※刑事訴訟法161条1項

本記事では,民事訴訟と刑事訴訟における違法な証言拒絶への制裁について説明しました。
実際には個別的な事情によって証言拒絶が違法となるかどうかは違ってきます。
証言に関する悩みや問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

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