【犯罪収益移転防止法の本人確認方法の内容(特定取引に共通)】
1 犯罪収益移転防止法の本人確認方法の内容
2 本人確認書類のランク分類
3 対面での本人確認の主な方法
4 非対面での本人確認の主な方法
1 犯罪収益移転防止法の本人確認方法の内容
犯罪収益移転防止法(犯収法)では,いろいろな取引(特定取引)について,その際,本人確認をする義務が課せられています。
詳しくはこちら|犯罪収益移転防止法による仮想通貨交換業者の取引時確認(本人確認)
詳しくはこちら|犯罪収益移転防止法による不動産登記申請を行う司法書士の確認の内容
この本人確認の形式的な内容は,細かく法律上規定されています。
本記事では,犯収法の本人確認の方法の内容について説明します。
2 本人確認書類のランク分類
まず,犯収法では,本人を確認するために使う多くの書類(資料)について,大きく3つのランクに分類しています。本人と推定できる精度で,高・中・低の3つのレベルに分けているのです。
<本人確認書類のランク分類>
あ 高レベル書類(※1)
顔写真付きの公的身分証明書
い 中レベル書類(※2)
各種健康保険証
国民年金手帳
母子健康手帳
使用印鑑に係る印鑑証明書
う 低レベル書類(※3)
使用印鑑なしの印鑑証明書
戸籍謄本・抄本(附票つき)
住民票の写し
3 対面での本人確認の主な方法
本人確認の方法は,大きく本人に他面するものと,本人と対面しないものに分けられます。
最初に,本人と対面する場合の本人確認方法をまとめます。前記の書類の分類によって,必要とされる確認の範囲(内容)が違っています。
<対面での本人確認の主な方法>
あ 高レベル書類使用
高レベル書類(前記※1)の提示を受ける
い 中レベル書類使用
中レベル書類(前記※2)の提示を受ける+『ア〜ウ』のいずれかの方法
ア 転送不要の書留郵便で,取引関係文書を送付するイ 中or低レベル書類(前記※2,※3)のうちもう1つの提示を受けるウ 提示を受けたもの以外の補完書類の送付を受ける
う 低レベル書類使用
低レベル書類(前記※3)の提示を受ける+次の方法
・転送不要の書留郵便で,取引関係文書を送付する
※犯罪収益移転防止法4条,施行規則6条,7条
4 非対面での本人確認の主な方法
例えば,オンラインによる操作が中心のサービス(取引)も多くあります。
詳しくはこちら|犯罪収益移転防止法による仮想通貨交換業者の取引時確認(本人確認)
オンラインのサービスの中に特定取引がある場合は,非対面による取引時確認の方法を取ることが多いです。
主要なものは,本人確認書類を顧客から事業者に送付してもらい,その上で,事業者が顧客に文書を転送不要郵便で送付するというものです。
顧客がこの文書を受領できたことが確認できれば,本人確認書類の住所が正しいことが分かります。つまり,正しい本人確認書類である可能性が高いことになるのです。
<非対面での本人確認の主な方法>
あ 受理+送付法
『ア・イ』の方法の両方を履行する
ア 受理
顧客等の本人確認書類またはその写しの送付を受ける
当該本人確認書類またはその写しを確認記録に添付する
※犯罪収益移転防止法施行規則19条1項2号
イ 送付
『ア』の本人確認書類または写しに記載されている住居に宛てて,取引関係文書を,書留郵便等により,転送不要郵便等として送付する
※犯罪収益移転防止法施行規則6条1号ホ
い 認定事業者の電子証明書
電子署名法に基づく認定認証事業者発行の電子証明書を用いる
※犯罪収益移転防止法施行規則6条1号ト
う 公的個人認証サービスの電子証明書
公的個人認証サービスの電子証明書を用いる
※犯罪収益移転防止法施行規則6条1号チ
え 認定署名検証者による電子証明書
認定署名検証者が発行した電子証明書を用いる
公的個人認証法17条1項5号に基づく認定を受けた署名検証者が発行する必要がある
※犯罪収益移転防止法施行規則6条1号リ
本記事では,犯収法の本人確認の方法(内容)について説明しました。
実際のサービスの設計においては,個別的なサービス内容に応じて適切なフローを設定する必要があります。
犯収法の本人確認(取引時確認)についての問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。