【有責配偶者の離婚請求の3要件のうち未成熟子の不存在の要件の判断】
1 有責配偶者の離婚請求の3要件のうち未成熟子の不存在の要件の判断
有責配偶者からの離婚請求については、判例で3つの要件による判断基準が示されています。
詳しくはこちら|有責配偶者からの離婚請求を認める判断基準(3つの要件)
本記事では、この3要件(要素)のうち、2つ目の未成熟の子が存在しない(という要件)について説明します。
2 判例上の未成熟子の不存在の要件
判例では、夫婦間に未成熟の子が存在しないのであれば離婚を認めるという基準が示されています。
判例上の未成熟子の不存在の要件
※最高裁昭和62年9月2日
実際にはこのように単純ではありません。この要件(要素)の詳しい内容を、以下説明します。
3 未成熟子の不存在の判断の枠組み
未成熟の子が存在しないという基準(前記)の言葉は単純ですが、実際には他の事情も含めて判断されます。要するに、未成熟の子が存在していても結論として有責配偶者からの離婚請求が認められることもあるのです。
また、未成熟の子という概念は、経済的に独立していないということを意味しています。単に20歳(あるいは18歳)未満という意味ではありません。
未成熟子の不存在の判断の枠組み
あ 未成熟子の意味
未成熟子とは、必ずしも自然年齢に関わるものではない
未成年と同じ意味ではない
経済的に独立して自己の生活費を獲得すべきものとしていまだ社会的に期待されていない年齢にある者をいう
※『最高裁判所判例解説 民事篇昭和62年度』法曹会p585
※二宮周平ほか著『離婚判例ガイド 第3版』有斐閣2015年p69
い 未成熟子の不存在の要件の位置づけ
未成熟子がいることだけで(有責配偶者からの)離婚請求が認められないわけではない(後記※1)
4 未成熟子の年齢の影響の実例(概要)
未成熟の子が存在するケースでも、有責配偶者からの離婚請求が認められることがあります。実例(判例・裁判例)については別の記事で紹介、説明しています。
未成熟子の年齢の影響の実例(概要)(※1)
詳しくはこちら|有責配偶者からの離婚請求における子の年齢の影響(裁判例の傾向分析)
5 未成熟子に該当するかどうかの判断
未成熟の子に該当するかどうかがはっきりしないケースもあります。高校生までは常識的に、経済的に独立していないので、未成熟の子といえるでしょう。
大学生については、潜在的に働くこと自体はできるため、未成熟の子ではないと判断した裁判例があります。ただ、統一的な見解とはいえません。
また、年齢とは関係なく(成人であっても)、息子や娘が障害により働くことができないケースでは、経済的に独立していないという意味で未成熟の子として認められます。
未成熟子に該当するかどうかの判断
あ 19歳の大学生(否定)
19歳の大学生は未成熟子に該当しない
※大阪高裁昭和62年11月26日
い 介護を要する障害
ア 身体障害者1級
子は大学を卒業した成人である
子は身体障害者1級であり、日常生活全般にわたり介護が必要な状況にある
→実質的には未成熟子と同視することができる
※東京高裁平成19年2月27日
イ 複数の障害
子は成人である
子は複数の障害により24時間の付添監護が必要である
→未成熟子あるいはこれに準じる
※高松高裁平成22年11月26日
本記事では、有責配偶者からの離婚請求を認める要件の1つである未成熟の子の不存在について説明しました。
実際には、個別的な細かい事情や、主張と立証のやり方次第で結論が違ってきます。
実際に有責配偶者の離婚請求に関する問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。
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