【審判前の保全処分の効力(発生時期・執行期限・執行停止)】

1 審判前の保全処分の効力(発生時期・執行期限・執行停止)

家事事件に関する緊急性が高いことを速やかに実現する手段として審判前の保全処分の制度があります。
詳しくはこちら|審判前の保全処分の基本(家事調停・審判の前に行う仮差押や仮処分)
裁判所は、審判前の保全処分を認めると保全命令を出します。保全命令の効力は、判決などの他の裁判所の判断とは違う特殊性があります。
本記事では、審判前の保全処分の効力について説明します。

2 保全命令の効力発生時期

審判前の保全処分の効力は、審判が告知された時に発生します。この店、判決であれば、確定した時なので、当事者への送達の時点ではまだ効力が発生しません。保全処分では迅速性が重視されていることが分かります。

保全命令の効力発生時期

保全処分を命じる審判について
緊急性・迅速性の要請がある
告知によって効力を生じる
※家事事件手続法109条2項、74条2項本文

3 保全命令の執行の期限

保全命令は告知だけですぐに効力を生じます(前述)。そこですぐに執行できることになります。
一方で、執行できる期間も短く限られています。保全命令の送達(告知)から2週間だけです。2週間を経過した後に執行しようとしたケースで、東京高裁は例外的・救済的な扱いをしませんでした。

保全命令の執行の期限

あ 規定

審判前の保全処分の執行について
債権者に保全命令が送達された日から2週間を経過した時は執行してはならない
※家事事件手続法109条3項、民事保全法43条2項

い 裁判例

審判前の保全処分の執行については、家事審判法15条の3第6項(注・現在の家事事件手続法109条3項)により民事保全法等の規定に従うとされており、民事保全法43条2項によれば、債権者に保全命令が送達された日から2週間を経過したときは、これをしてはならないとされ、2週間の執行期間を経過すると、審判前の保全処分の執行をすることができないことになる。
※東京高決平成15年12月15日(子の引渡について)

4 保全命令への不服申立と執行停止の申立

裁判所による保全命令(発令)に納得できない状況もあります。その場合には、不服申立の手段として即時抗告をすることができます。
これで審理は継続するのですが、既に出された保全処分の効力は原則として維持されます。効力を解消させるためには、即時抗告とともに執行停止の申立をする必要があります。
裁判所は、原審判が誤っていることが明らかであり、かつ、原審判の執行により回復困難な損害が生じるといえる場合に執行を停止することができます。

保全命令への不服申立と執行停止の申立

あ 保全命令への不服申立

保全処分を命じる審判に不服がある場合、即時抗告をすることができる
※家事事件手続法110条

い 即時抗告と執行停止の関係

即時抗告があっても当然には執行停止の効力は生じない
※家事事件手続法109条2項、74条2項ただし書(の適用除外)

う 執行停止の申立

保全命令に不服のある当事者は即時抗告とともに執行停止を申し立てることができる
『ア・イ』の疎明がある場合、裁判所(主に高裁)は執行の停止or執行処分の取消を命じることができる
ア 原審判取消の原因となることが明らかな事情イ 原審判の執行により回復困難な損害を生じること ※家事事件手続法111条

本記事では、審判前の保全処分の効力について説明しました。
実際には、個別的な事情によって最適な手段は異なりますし、やり方次第で結論が違ってくることもあります。
実際に審判前の保全処分の活用をお考えの方や、既に出された保全命令についての問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

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