【子供と親の面会交流の実施方法(合意書の条項サンプルや審判の内容)】
1 子供と親の面会交流の実施方法
2 面会交流に関する合意内容の書面化によるトラブル予防
3 面会交流の条項のサンプル
4 面会交流の具体的な方法(定めておく事項)
5 裁判所が定めた面会交流の内容の具体例
6 第三者の関与を面会交流の条件とした実例
7 家事審判における面会交流に関する条項の具体例
1 子供と親の面会交流の実施方法
子供と親の面会交流についてトラブルが生じることはとても多いです。対立する内容は,ほとんどが面会交流の実施方法です。
面会交流の実施方法にはとても多くのバリエーションがあります。
本記事では,面会交流の実施方法の内容を説明します。
当事者(父と母)が取り決めるべき事項,裁判所が定めるべき事項ともいえます。
2 面会交流に関する合意内容の書面化によるトラブル予防
離婚に向けた話し合いで,子供との面会交流について決めておけば,その後の意見の違いで対立が生じることを抑制できます。
<面会交流に関する合意内容の書面化によるトラブル予防>
あ トラブル発生のリスク
(親権者をどちらにするかについては父母ともに納得していても)
その後の子供と親の面会についてトラブルになるケースが多い
典型例=面会の頻度や場所について意見(希望)が対立する
い トラブル抑制策
事前に父・母の間で面会交流に関する事項を書面にして調印しておくとよい
通常は離婚の際の離婚協議書の条項に含めている
詳しくはこちら|離婚の条件が合意に達した時点で離婚協議書の調印+離婚届提出をすると良い
3 面会交流の条項のサンプル
離婚の時の離婚協議書や,個別的な取り決めとして,面会交流の実施方法を書面にして調印する場合の条項のサンプルを紹介します。
もともと,面会する日時や場所を事前に決めておくことには限度があります。
例えば,その時点での子供本人の意向や心身のコンディションによって実施できるかどうか,とか,適切な実施方法は違ってきます。
そこで,大まかな頻度だけ特定しておくにとどめるケースが比較的多いです。
<面会交流の条項のサンプル>
あ メインの条項
(甲=夫,乙=妻,丙=子供)
乙は,2か月に1回程度,甲が丙と面接交渉することを認める。その具体的な日時,場所,方法等については,丙の情緒安定に十分に配慮しつつ,甲・乙間で誠実に協議して定める。
い 協議する内容
(面会交流の具体的な方法(後記※1)を特定(条項として記載)しておく)
4 面会交流の具体的な方法(定めておく事項)
面会交流の実施方法の内容として決めておく事項の候補はいろいろとあります。前記のように,すべての
項目を特定しておく必要はありません。
<面会交流の具体的な方法(定めておく事項)(※1)>
あ 面会の頻度
例=○か月に1回
い 面会場所
例=レストランや遊園地など
う 面会場所までのアクセス方法
例=連れて行くor迎えに行く
え 面会時間
例=3時間,夏休みには2泊3日,など
お 面会時刻
例=偶数月の第1日曜日
か 面会実施のための連絡方法
き 学校行事への参加
例=授業参観,運動会等父母の参加する行事への参加
く メッセージのやりとり
手紙(写真含む),メール,メッセージによるコミュニケーションを認めるか
け プレゼント
プレゼントを贈ることを認めるか
こ 子供の都合が悪い場合(拒否した場合)の対処法
例=別の日程に変更する
5 裁判所が定めた面会交流の内容の具体例
前記のような面会交流の実施方法を,裁判所が審判として定めることもあります。
詳しくはこちら|子供と親の面会交流の手続(調停・審判のプロセスと禁止する状況)
家裁の審判でも,面会交流の実施方法として特定する事項は協議の場合の項目(前記)と変わりません。
実際にいくつかの事案で裁判所が定めて事項をまとめます。
<裁判所が定めた面会交流の内容の具体例>
あ 面会交流の回数・日時
例=曜日,時刻,宿泊を伴うか否か,など
い 子供の引渡し方法
引渡しの時刻,場所など
う もう一方の親の立ち会いの有無
え プレゼントを贈る頻度,価格
お 学校行事への参加
※京都家裁平成22年4月27日参照
※大阪高裁平成21年1月16日参照
※大阪高裁平成18年2月3日参照
6 第三者の関与を面会交流の条件とした実例
裁判所は,面会交流の実施方法の一環として第三者の立会を条件として定めることもあります。
父と母の対立が激しく,面会交流の現場でトラブルが生じることが心配されるようなケースで,第三者の関与が条件として付けられます。
逆にいえば,両親の対立が激しいケースでも,第三者の関与を条件とすれば面会交流の実施が可能となるといえます。第三者の関与という条件設定により,面会交流の実施を認めないという裁判所の安直な判断を避けることにつながります。
<第三者の関与を面会交流の条件とした実例>
あ 特定の調査官
特定の家裁調査官の立会・指示に従うことを条件とする
※東京家裁昭和39年12月14日
※東京家裁昭和44年5月22日
※京都家裁昭和47年9月19日
い 特定なしの調査官
特定ない家裁調査官の立会・指示に従うことを条件とする
※東京高裁昭和52年12月9日
※大阪家裁昭和54年11月5日
※京都家裁昭和57年4月22日
う 調査官以外の第三者
調査官以外の第三者の関与を条件とする
※東京高裁平成2年2月19日
え 弁護士or親族
弁護士or親族の立会を条件とする
※名古屋家裁平成2年5月31日
お 乳児院の職員
乳児院の職員の立会を条件とする
※大阪高裁平成4年7月31日
か FPIC職員
家族問題を扱う社団法人(FPIC)職員の立会を条件とする
※東京家裁平成18年7月31日
き 夫+夫の指定する第三者
夫と夫の指定する第三者の立会を条件とする
※東京高裁平成19年11月7日
※『月報司法書士2014年9月』日本司法書士会連合会p41参照
裁判所が面会交流自体を否定する意向が見えた場合には,一定の者の関与を条件として付けることを的確に主張することが効果的です。
7 家事審判における面会交流に関する条項の具体例
最後に,家庭裁判所が定めた面会交流に関する条項の具体例として,以上で紹介した裁判例の中からいくつかを紹介(引用)します。
<家事審判における面会交流に関する条項の具体例>
あ 平成22年4月27日京都家裁
ア 主文
1 相手方が,申立人に対し,別紙記載の内容・方法により,未成年者を申立人と面会交流させる義務のあることを定める。
2 申立人が,相手方に対し,未成年者と面会交流する際に,別紙記載の内容・方法を遵守する義務のあることを定める。
3 申立人と相手方とは,別紙記載の内容・方法を遵守し,これによる義務を履行せよ。
イ 別紙
面会交流の要領
1 面会交流の回数・日時
ア 平成22年5月,7月,9月,11月,平成23年1月の各第2土曜日の午前10時から午前11時
イ 平成23年3月以降平成24年1月までの奇数月の各第2土曜日の午前10時から午後0時
ウ 平成24年2月以降平成25年2月までの各月の第2土曜日の午前10時から午後2時
エ 平成25年3月以降毎年各月の第2土曜日の午前10時から午後4時
2 面会交流の方法
ア 相手方又はその指定の親族等は,面会交流の開始時刻に○○駅改札口付近において,未成年者を申立人に引き渡す。
イ 申立人は,面会交流の終了時刻に同所において,未成年者を相手方又はその指定する親族等に引き渡す。
ウ 相手方又はその指定する親族等は,未成年者が小学校に入学するまでの間,未成年者と申立人との面会交流に立ち会うことができる。
3 予定日の変更
未成年者の病気その他やむを得ない事情により上記1のアないしエの日時を変更するときは,当該事情の生じた者は,他方に対して速やかに連絡して,双方協議の上,振替日時を定める。ただし,振替日時は,原則として,予定日の1週間後の同時刻とする。
4 申立人と相手方とは,未成年者の福祉に慎重に配慮し,申立人と未成年者との面会交流の円滑な実施につき互いに協力する。
5 申立人と相手方とは,申立人と未成年者との面会交流の日時,方法等について変更を要するときは,互いに誠実に協議する。
い 平成21年1月16日大阪高裁
1 原審判を次のとおり変更する。
2 相手方は,抗告人に対し,以下の条件で,未成年者を面接させよ。
(1) 面接の日時
平成21年以後の毎年2月,6月,8月及び11月の各第3土曜日初回は午後0時から午後1時まで,2回目以降は午後0時から午後2時まで
(2) 待ち合わせの場所
相手方が事前に指定した場所とする。ただし,相手方から抗告人に対して事前に連絡がないときは,○○駅改札口とする。
(3) 面接交渉の方法
抗告人は,面接開始時刻に上記(2)の場所に赴き,同所又はその近辺で未成年者と面接する。相手方は,抗告人と未成年者との面接交渉に付き添うことができる。
(4) 実施日の変更
未成年者や当事者の事情により上記(1)の面接の日時の変更をするときは,当該事情の生じた者は,他方に対して速やかに連絡をして,双方協議の上,振替日を定める。ただし,未成年者や相手方の事情により日時を変更するときは,その振替日を翌月中に定める。
(5) 抗告人は,面接交渉中に飲食費や施設ヘの入場料等の費用を要した場合には,自己と未成年者の分を負担する。
(6) 抗告人は,面接交渉に必要なこと以外で,相手方に連絡をしない。
3 相手方は,抗告人が未成年者に対して手紙,誕生日等の贈り物を送付すること及び未成年者が抗告人に対して手紙を送付することを妨げてはならない。
4 抗告費用は抗告人の負担とする。
う 平成18年2月3日大阪高裁
ア 主文
1 本件に,利害関係人Bの参加を命じる。
2 原審判を次のとおり変更する。
「(1) 抗告人及び参加人が相手方に対し,別紙面接要領記載の内容て未成年者らを相手方と面接させる義務があることを定める。
(2) 抗告人及び参加人並びに相手方は,上記要領を遵守し,同要領記載の義務を履行せよ。」
3 抗告費用は,抗告人の負担とする。
イ 別紙
面接要領
1 面接回数,日時
(1)回数 平成18年2月から,毎月1回
(2)日時 第4日曜日の午前11時から同日午後4時の間(時間厳守)
2 未成年者らの引渡方法
抗告人及び参加人(両名の指定する親族を含む。)は,上記面接開始時に,京都府○○市△△所在の「□□」駐車場において,相手方に未成年者らを引き渡し,相手方は,上記面接終了時に,同所において,未成年者らを抗告人及び参加人(両名の指定する親族を含む。)に引き渡す。
3 未成年者らに対するプレゼント
抗告人及び参加人は,相手方が,未成年者らと面接交渉するに際し,誕生日クリスマス,正月のプレゼントを渡すことを認めなければならない。
この場合におけるプレゼントの価格は,未成年者らの年齢等に照らし,社会通念上相当な限度に留めるものとする。
4 面接日等の変更
当事者は,その協議により,面接実施の日時,未成年者らの引渡場所,面接の方法など必要な事項を変更することができる。
5 学校行事等への参加
相手方は,未成年者らに関する保育園や学校の行事に参加してはならない。
抗告人及び参加人は,未成年者らが上記行事に参加した場合において,その状況を撮影したビデオ,写真等があるときは,適宜,相手方に提供するものとする。
本記事では,子供と親の面会交流の実施方法の内容について説明しました。
実際の手続では,個別的な事情や主張・立証のやり方次第で結論が違ってくることもあります。
実際に子供との面会についての問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。
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