【子供と親の面会交流を裁判所が定めた実例(宿泊あり・祖父母との面会など)】

1 子供と親の面会交流を裁判所が定めた実例
2 祖母の悪影響を認めて7日間の面会交流を定めた事例
3 不倫をした母に父が怒っていたが面会交流を認めた事例
4 面会交流を妨害した親から親権を奪った裁判例(参考)
5 祖父母と孫の面会交流を認めた事例

1 子供と親の面会交流を裁判所が定めた実例

子供と親の面会交流の実施方法を裁判所が定める手続があります。
詳しくはこちら|子供と親の面会交流の手続(調停・審判のプロセスと禁止する状況)
本記事では,実際に裁判所が面会交流の実施方法を定めた事例を紹介します。
子供が親と寝泊まりするという内容のものもありますし,また,祖父母と孫の面会交流を定めたものもあります。バラエティが広いということがよく分かると思います。

2 祖母の悪影響を認めて7日間の面会交流を定めた事例

嫁姑の対立から母親が家を出たという事例です。子供は姑(子からみると祖母)と父と同居する状態になりました。
その後,子供自身が母との面会を拒否するようになりました。
真相は,姑が嫁(母)を憎んでいるので,子供が迎合して母を敵視する態度に出ただけでした。つまり,子供の真意は母を嫌いものではなかったのです。
実はこのようなことは子供にはありがちなことなのです。
詳しくはこちら|両親の対立状況での子供の心理(親への迎合・忠誠葛藤や敵意の発生)
裁判所はこのような心理的メカニズムを理解して,子供の真意を見抜いたのです。
結局,夏休みには7日間,春休みと冬休みには3日間を母親と一緒に過ごすという内容を裁判所が定めました。

<祖母の悪影響を認めて7日間の面会交流を定めた事例>

あ 事案

夫の養母Aが妻Bの子育てに口を出すようになった
養母Aと妻Bの対立が激しくなった
夫Cと妻Bが別居に至った
子供(2人)は妻Bとの面会を拒否している
妻Bは面会交流の審判を申し立てた

い 裁判所の評価

養母A(祖母)は子供(孫)に対して,実の母(妻B)を敵視するような言動を取っている
子供は養母Aが言う『妻Bの悪口』の影響を受けている
むしろ子供と母(妻B)との心的な信頼関係を回復することが不可欠である
面会交流によって意思の疎通を図ってゆくことが肝要

う 裁判所の判断(面会交流の内容)

子供が一定期間母親の住居に宿泊し祖母(養母A)から隔離する
夏休み中に7日間,春・冬休み中に3日間,子供は母の住居で過ごす
※岡山家裁平成2年12月3日

この判例は『同居親による子供への悪影響』を見ぬいた一例です。

3 不倫をした母に父が怒っていたが面会交流を認めた事例

妻が不倫(不貞)をしたために夫婦が別居したケースです。離婚が成立し,夫(父)が子供を引き取りました。
その後も父は母に対して強い怒りを持っています。
このように父と母の対立が激しい場合は,面会交流の場でトラブルが生じるおそれがあるので,面会交流自体を認めないこともあります。
詳しくはこちら|子供と親の面会交流の手続(調停・審判のプロセスと禁止する状況)
しかし,子供にとって,長期間母親と会えないことは好ましくありません。
そこで,裁判所は,(父親の要求によって)親族か弁護士が立ち会うことを条件に付けて面会交流の実施することを定めたのです。
詳しくはこちら|子供と親の面会交流の実施方法(合意書の条項サンプルや審判の内容)

<不倫をした母に父が怒っていたが面会交流を認めた事例>

あ 事案

離婚後夫Aが子供を引き取った
夫Aは『妻が子供を捨てて他の男を選んだ』という強い怒りを持っていた
夫Aは,子供と妻Bとの面会を強く拒絶していた
妻Bは面会交流の調停を申し立てた

い 裁判所の評価

父A・母Bの感情的対立が激しい
→子供との面会交流が平穏に実施されない可能性がある
しかし『面会交流の機会を奪う』のは妥当ではない
子供が母親との接触を維持することは将来のためには重要である
方法を工夫して,できる限り面会交流を実施すべきである

う 裁判所の判断(面会交流の内容)

夏休み中の1日,午前10時〜午後4時まで子供と母親が面会する
父親からの要求があれば親族か弁護士が付き添う
※名古屋家裁平成2年5月31日

4 面会交流を妨害した親から親権を奪った裁判例(参考)

子供と同居する親が,他方の親との面会交流が実現しないように妨害することはとても多いです。
この点,面会交流を妨害した親から親権を奪った(他方の親に親権者を変更した)実例もあります。
詳しくはこちら|試行的面会交流により母親の誘導を見抜いて親権者変更を認めた事例

5 祖父母と孫の面会交流を認めた事例

通常,子供との面会交流が認められるのは親(父・母)です。面会交流は子供の監護の一環であり,監護権を持つ者は父と母であるというのが理論的な根拠です。
この点,個別的な事情により,祖父母(と孫)の面会交流を裁判所が定めた実例があります。要するに,長期間祖父母と一緒に暮らしていて,非常に仲がよい状況だったのです。

<祖父母と孫の面会交流を認めた事例>

あ 祖父母と子の関わり

子(孫)の出生後,長期間祖父母が監護をしていた
子(孫)が,心の底から祖父母に馴染んでいた

い 裁判所の判断

裁判所は祖父母と子(孫)の面会交流を認めた
面会交流は2か月に1度以上,宿泊を伴う滞在とする
※東京高裁昭和52年12月9日

本記事では,子供と親(や祖父母)の面会交流を裁判所が定めた事例を紹介しました。
裁判所の判断は,個別的な事情によって大きく違ってくるということがよくお分かりだと思います。
実際に子供との面会についての問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

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