【区分所有権の主観的要件(区分所有の意思)】

1 区分所有権の主観的要件(区分所有の意思)

区分所有権が成立するためには、客観的要件主観的要件を満たす必要があります。
詳しくはこちら|一物一権主義と区分所有(区分所有権の成立の基本と解消)
本記事では、区分所有権の主観的要件について説明します。

2 区分所有権の主観的要件の基本

区分所有権が成立するためには、条文上、客観的な状態が要求されています。しかし、客観的な状態が適合したら自動的に区分所有権が成立するというわけではありません。所有者に、建物を区分して所有する意思が必要です。

区分所有権の主観的要件の基本

あ 条文規定との関係

区分所有権の成立の原因及び時期について
条文上は特に規定がない
※区分所有法2条1項参照

い 区分所有権成立の要件

構造上・利用上独立した数個の部分を有する一棟の建物が存在するだけで当然に区分所有権が成立するわけではない。
区分所有権が成立するためには、建物の客観的な状態(注・区分建物の要件)に加えて、当事者が建物を区分して所有するという次のような「意思」が必要である。
※五十嵐徹著『マンション登記法 第5版』日本加除出版2018年p17

3 建物を区分して所有する意思の判定

前記のように、区分所有権の成立には、建物を区分して所有する意思が必要です。ただしこれは取引などの法律行為ではありません。意思表示とは異なります。
そこで、建物を区分して所有する意思が読み取れれば足りるということになります。そのような典型的な状況をまとめます。

建物を区分して所有する意思の判定

あ 登記による認定

『ア・イ』のいずれかの登記をすれば(申請行為によって)、当然に建物を区分して所有する意思があると認められる
ア 区分建物の登記(不動産登記法44条、48条)イ 区分の登記(不動産登記法54条1項2号) ただし、区分所有の登記は区分所有権の成立に必須というわけではない
※東京地判昭和51年5月13日
※区分所有法32条参照

い 取引による認定

(区分建物としての登記が未了であっても)
『ア・イ』のいずれかの事情があれば、建物を区分して所有する意思があると認められる
ア 専有部分の処分 1棟の建物全部の所有者が、建物の一部を譲渡した
※大判昭和4年2月15日
1棟の建物全部の所有者が、建物の一部(専有部分)に担保権(抵当権・質権など)を設定した
イ 当初から各自の所有する部分を定めて数人で1棟の建物を建築した

う 外部への表示による認定

1棟の建物全部を1人が所有している場合において
各部分を区分所有権の目的とするという意思が外部に表示されるなど、建物を区分して所有する意思が客観的に明確であれば、区分所有権の成立が認められる
例=分譲マンションとして販売する旨の広告をする

え 賃貸用マンションにおける判断

1棟の建物全部を1人が所有し、構造上及び利用上独立した数個の部分を賃貸するケースについて
区分所有権を認める実益がないとしてその成立を否定する見解がある
しかし、所有者に建物の各部分を区分して所有する意思があれば、区分所有権の成立を否定する理由はない
※最判平成7年1月19日
※五十嵐徹著『マンション登記法 第5版』日本加除出版2018年p17、18

4 共有物分割の現物分割における区分所有(参考)

共有の建物の共有物分割において、区分所有とすることによる現物分割がなされるケースがあります。この場合には、当事者の主張(希望の表明)や判決が、区分所有の意思の表明として扱われることがあります。
詳しくはこちら|区分所有とすることを伴う現物分割

本記事では、区分所有権の成立要件のうち、主観的要件について説明しました。
実際には、個別的事情によって法的扱いは違ってきます。
実際に不動産を共同で所有や管理することについての問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

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【共有不動産の不正な登記の是正方法の判別フローと『支障』の整理】

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