【業務起因性が認められる精神障害の種類(ICD-10の分類)】

1 業務起因性が認められる精神障害の種類(ICD-10の分類)
2 ICD-10準拠の精神障害の分類の内容(全体)
3 業務起因性が認められる精神障害(F2〜F4)の主な内容
4 疾病などの分類の情報ソース

1 業務起因性が認められる精神障害の種類(ICD-10の分類)

仕事によるストレスで自殺(自死)に追い込まれるケースは,あとをたちません。そのようなケースでは,労災や会社への損害賠償請求が問題となります。これらが認められるかどうか(業務起因性があるかどうか)については通達や裁判例による基準があります。
詳しくはこちら|仕事による自死(過労自殺)の労災・損害賠償請求が認められる要件
この判断基準の中で,一定の精神障害の発病(対象疾病)という要件があります。本記事では,この(業務起因性が認められる)精神障害の内容について説明します。

2 ICD-10準拠の精神障害の分類の内容(全体)

発病や自殺の業務起因性が認められる精神障害は,厚生労働省が作った分類をもとに指定されています。まずは,精神障害の分類とはどのようなものかをまとめます。

<ICD-10準拠の精神障害の分類の内容(全体)>

あ タイトル

第Ⅴ章 精神及び行動の障害(F00-F99)
Mental and behavioural disorders
包含: 心理的発達障害
除外: 症状,徴候及び異常臨床所見・異常検査所見で他に分類されないもの(R00-R99)

い 内容

F00-F09 症状性を含む器質性精神障害
F10-F19 精神作用物質使用による精神及び行動の障害
F20-F29 統合失調症,統合失調症型障害及び妄想性障害
F30-F39 気分[感情]障害
F40-F48 神経症性障害,ストレス関連障害及び身体表現性障害
F50-F59 生理的障害及び身体的要因に関連した行動症候群
F60-F69 成人の人格及び行動の障害
F70-F79 知的障害<精神遅滞>
F80-F89 心理的発達の障害
F90-F98 小児<児童>期及び青年期に通常発症する行動及び情緒の障害
F99 詳細不明の精神障害
※厚生労働省『疾病,傷害及び死因の統計分類』第Ⅴ章

3 業務起因性が認められる精神障害(F2〜F4)の主な内容

前記の分類は精神障害の全体であって,そのうちの一部(F2〜F4)が,業務に起因するものとして認められるもの(対象疾病)です。
これ(対象疾病)の内容はさらに細かく分類されます。ここでは主なものを整理しました。
もちろん,これらの発病だけで業務起因性が認められるわけではなく,発病の原因が仕事上のストレスであるという要件もありますのでご注意ください。

<業務起因性が認められる精神障害(F2〜F4)の主な内容>

あ 統合失調症,統合失調症型障害及び妄想性障害(F20-F29)

F20 統合失調症
F21 統合失調症型障害(妄想性障害)
F23 急性一過性精神病性障害
F24 感応性妄想性障害
F25 統合失調感情障害
F28 その他の非器質性精神病性障害
F29 詳細不明の非器質性精神病

い 気分[感情]障害(F30-F39)

F30 躁病エピソード
F30.0 軽躁病
F30.1 精神病症状を伴わない躁病
F30.2 精神病症状を伴う躁病
F30.8 その他の躁病エピソード
F30.9 躁病エピソード,詳細不明躁病NOS
F31 双極性感情障害<躁うつ病>
F32 うつ病エピソード
F33 反復性うつ病性障害
F34 持続性気分 [感情]障害
F38 その他の気分 [感情]障害
F39 詳細不明の気分 [感情]障害

う 神経症性障害, ストレス関連障害及び身体表現性障害(F40-F48)

F40 恐怖症性不安障害
F40.0 広場恐怖(症)
F40.1 社会恐怖(症)
F40.2 特定の[個別的]恐怖(症)
F40.8 その他の恐怖症性不安障害
F40.9 恐怖症性不安障害,詳細不明
F41 その他の不安障害
F41.0 恐慌性<パニック>障害[挿間性発作性不安]
F41.1 全般性不安障害
F41.2 混合性不安抑うつ障害
F42 強迫性障害<強迫神経症>
F43 重度ストレスへの反応及び適応障害
F43.0 急性ストレス反応
F43.1 外傷後ストレス障害
F43.2 適応障害
F43.8 その他の重度ストレス反応
F43.9 重度ストレス反応,詳細不明
F44 解離性[転換性]障害
F44.0 解離性健忘
F44.1 解離性遁走<フーグ>
F44.2 解離性昏迷
F44.3 トランス及び憑依障害
F44.4 解離性運動障害
F44.5 解離性けいれん<痙攣>
F44.6 解離性無感覚及び感覚脱失
F44.7 混合性解離性[転換性]障害
F44.8 その他の解離性[転換性]障害
F44.9 解離性[転換性]障害,詳細不明
F45 身体表現性障害
F48 その他の神経症性障害
F48.0 神経衰弱
F48.1 離人・現実感喪失症候群
※厚生労働省『疾病,傷害及び死因の統計分類』第Ⅴ章

4 疾病などの分類の情報ソース

以上で紹介した精神障害の分類は,厚生労働省が作成したものですが,WHOが作成したものが元になっています。もととなっている情報(資料)をまとめておきます。

<疾病などの分類の情報ソース>

あ WHOによる分類

ア ICD-10(初版) 作成=世界保健機関(WHO)
タイトル=疾病及び関連保健問題の国際統計分類
1990年版=第10回改訂版
ICD-10と呼ばれる
イ ICD−10(2013年版) ICD-10(初版)の改訂版である

い 日本(厚労省)の分類

ア 日本版の分類 厚生労働省が,ICD−10(2013年版)に準拠する基準を作成した
通達(イ)によって示された
タイトル=疾病,傷害及び死因の統計分類
イ 通達 平成27年2月13日付け総務省告示第35号(『疾病、傷害及び死因の統計分類』)(ICD−10(2013年版)準拠)
施行=平成28年1月1日

本記事では,業務起因性が認められる精神障害の内容(種類)について説明しました。
実際には他の要件もありますし,個別的な事情によって法的判断や適切や対応方法は違ってきます。
実際に自殺(自死)の問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

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【生命保険の免責期間経過後の自殺における生命保険金請求の可否】
【使用収益をするのに足りる期間(相当期間)経過後の使用貸借の解除】

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