【集団和解方式による地図混乱地域の解消(法的性質・全員の同意・一部だけの特定)】
1 集団和解方式による地図混乱地域の解消
地図混乱地域(筆界未確定地)の土地は、売却や担保設定ができないという大きな問題があります。その解消方法にはいろいろなものがありますが、よく用いられる方法として集団和解方式があります。
詳しくはこちら|地図混乱地域(筆界未定地)の解消方法(全体像)
本記事では、集団和解方式による地図混乱地域の解消について説明します。
2 集団和解方式の内容
集団和解方式とは、地図混乱地域に含まれるすべての土地の所有者が筆界を合意した上で、地図訂正の申出をするというものです。その結果、合意した筆界(境界線)が地図(公図)に追記されることになります。
集団和解方式の内容
土地所有者等全員が現況区画を相互に確認し合い、合意された事実関係を登記所が認めた上で、それを登記に反映させるとともに、現況区画を測量して作成した図面を既存の備付け公図と差し替え、その後、この現況を実測した図面を備付け地図(地図に準ずる図面)とする
※中村隆ほか監『Q&A表示に関する登記の実務 第2版 新版』日本加除出版2007年p423
3 集団和解方式の法的性質
集団和解方式は、前述のように、地図訂正の申出の手続を使います。ところで、地図訂正は本来、現地を特定することが必須の前提となっています。地図混乱地域では公図から現地を特定できないので、地図訂正という手続自体が使えないはずなのです。
しかしこのように原則論を貫くと、地図混乱地域の解消ができないので、救済手段として例外的に地図訂正を行う、という措置なのです。
集団和解方式の法的性質
あ 原則論(前提)
本来であれば、地図等によって現地を特定することができない場合には、表示に関する登記はできないので、登記事務を全面的にストップするということになる
い 例外(集団和解方式)
集団和解方式による地図等の訂正は、このような非常事態を救うための、便宜的、行政的な措置である
※中村隆ほか監『Q&A表示に関する登記の実務 第2版 新版』日本加除出版2007年p427
4 土地所有者全員の申出(同意)の必要性
前述のように、集団和解方式による地図訂正(地図混乱地域の解消)は、救済のための例外的措置なので、当該地域内のすべての土地所有者の同意が必要です。ただ、これは絶対というわけではありません。
まず、一部の土地所有者の同意(書)がない場合でも、いろいろな資料や情報から筆界を特定(確認)できるならば問題ありません。
土地所有者全員の申出(同意)の必要性
あ 原則
集団和解方式による地図等の訂正は、当該地域の土地の所有者全員の申出によらなければならない
い 例外
ア 同意以外による確認
集団和解方式による地図等の訂正は、個々の地図等の訂正の申出の集合体であるとみれば、同意書を提供することができない場合でも、登記官において人証、物証、公的資料等によって(当該地域内のすべての土地の)筆界が確認できれば受理しても差し支えないと考えられる
※中村隆ほか監『Q&A表示に関する登記の実務 第2版 新版』日本加除出版2007年p427
イ 一部の確認ができないケース
当該地域の一部の土地の筆界が確認できない場合でも地図等の訂正が認められることもある(後記※1)
5 集団和解方式による一部だけの特定
以上のように、集団和解方式によって地図混乱地域を解消する場合、当該地域内の筆界のすべてを特定する(地図にすべての境界線を加筆する)ことになります。ただし、これも絶対というわけではありません。
当該地域の大部分は筆界の位置を特定できるが、残るわずかな部分については筆界を特定できないという場合には、特定できた範囲だけ地図訂正をする、そして残る部分は地図混乱地域のままとするということができることもあります。
集団和解方式による一部だけの特定(※1)
※中村隆ほか監『Q&A表示に関する登記の実務 第2版 新版』日本加除出版2007年p427
本記事では、集団和解方式による地図混乱地域(筆界未定地)の解消について説明しました。
実際には、個別的な事情によって、最適な対応方法(解消方法)が違ってきます。
実際に地図混乱地域に関する問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。