【共有不動産の賃貸借の更新拒絶の変更・管理分類】
1 共有不動産の賃貸借の更新拒絶の変更・管理分類
共有不動産の賃貸借に関しては、いろいろな決定事項があり、変更、管理、保存のどれに分類されるか、ということが問題になります。
詳しくはこちら|共有物の賃貸借に関する各種行為の管理行為・変更行為の分類(全体)
その中で、更新拒絶をすることがどれに分類されるか、ということについて本記事で説明します。
2 更新拒絶の内容の確認(前提)
(1)普通借地→期間満了時の使用継続に対する異議
分類の話しに入る前に、更新拒絶とは具体的にはどんなアクションのことか、ということを押さえておきます。
借地契約の更新拒絶とは、法律上は、期間満了後も借地人が使用を継続することに対して地主(賃貸人)が異議を述べる、というものです。実務では、期間満了の前から、予告的に更新するつもりはないと通知をするのが通常です。これが、更新拒絶の具体的アクションです。
詳しくはこちら|借地契約の更新の基本(法定更新・更新拒絶(異議)・更新請求)
(2)普通借家→期間満了6か月前までの更新しない旨の通知
一方、建物賃貸借(借家)では、(期間の定めがあるケースで)期間満了の1年前から6か月前の間に、更新しないという通知を出すことで法定更新を止める、ということになります。ただし、通知さえすればよいわけではなく、正当事由が必要です。正当事由の中身として、明渡料が必要になるのが普通です。
詳しくはこちら|建物賃貸借契約において賃貸人が更新を阻止する方法
3 更新拒絶を管理分類とする見解
更新拒絶の分類についての議論はあまりみあたりませんが、一般論として管理分類とする見解があります。
更新拒絶を管理分類とする見解
あ 平野裕之氏・物権法
賃貸借契約の解除や更新拒絶は、管理事項として持分の過半数で決せられる。
※平野裕之著『物権法 第2版』日本評論社2022年p364
4 更新拒絶と解除・更新との比較
(1)更新拒絶と債務不履行解除の比較
共有物の賃貸借の更新拒絶の分類についての議論や裁判例はあまりみあたりません。
既存の議論に近いものはないか、と考えると、まずは、賃貸借契約が終了するという効果の点では解除と同じだから、解除の分類と同じにする、という発想が出てきます。債務不履行解除は一般的に管理分類とされています。
詳しくはこちら|共有物の賃貸借の解除・終了と明渡請求に関する変更・管理・保存行為の分類
ただし、債務不履行解除では明渡料は不要ですが、更新拒絶では通常明渡料が必要です。共有者(賃貸人)の負担が大きく違います。
(2)更新拒絶と合意更新の比較
また、更新するかしないかの判断と考えると、更新する意思決定の分類と更新しない意思決定の分類は同じでよいだろう、という発想が出てきます。
しかし、更新した結果と、更新しなかった結果は、共有者(賃貸人)にとっての影響が異なります。理論的に、更新する、更新しない、という判断の決定要件を同じにすること必須というわけではありません。
ここで更新する意思決定とは、具体的には合意更新をするという決定をすることを意味します。
詳しくはこちら|共有物の賃貸借の更新(合意更新)の変更行為・管理行為の分類
仮に賃貸人として法定更新を希望するのであれば、具体的アクションとしては何もしないことになります。何もしないことを共有者間で意思決定をすることは必要ではありません。
まとめると、賃貸人としての選択肢は、合意更新をする、法定更新をする(具体的アクションをしない)、更新拒絶をするという3つがあります。法定更新以外の2つについては、意思決定の要件が異なる(同じにしなくてよい)、ということを前提として、共有者への影響の程度から、分類を判定する、ということになると思います。
詳しくはこちら|共有物の変更・管理・保存の分類(判定)の個別性・困難性(リスク)と対策
本記事では、共有不動産の賃貸借の更新拒絶が変更、管理のいずれに分類されるか、について説明しました。
実際には、個別的事情により法的判断や主張として活かす方法、最適な対応方法は違ってきます。
実際に共有不動産の賃貸借に関する問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。