【借地期間が不明なケースで満了時期を特定する手段】

1 借地期間が不明なケースで満了時期を特定する手段

たとえば借地の明渡請求をするためには、その前提として満了時期を特定する必要があります。仮に契約書がなくても、借地期間についてはしっかりしたルールがあるので、計算すれば満了時期は分かるはずです。
この点実際には、借地がとても古い時代から続いていて、契約書がない、いつ始まったのかすら分からない、というケースもよくあります。
本記事では、このようなケースでどのように期間を判明させるか、という解決手段について説明します。

2 借地期間が不明の場合→借地開始時期の推定+法定期間

借地の期間(満了時期)を判明させるためには、借地の開始時期が分かれば、そこから法定期間だけ契約が続いている、満了したら法定更新となって、改めて法定期間だけ続いている、と考えれば、現在の期間(満了記事)を計算できます。
法定期間については別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|旧借地法における期間に関する規定と基本的解釈
詳しくはこちら|借地借家法の借地期間の基本(法定期間は30年→20年→10年)

3 借地開始時期の推定で使うヒント→登記・住民票・戸籍・航空写真

『借地開始期間』を推定するために使うヒントを整理しました。

借地開始時期の推定で用いるヒント

あ 建物登記表題部の『建築年月日』

《登記簿の表題部|記載の例》
『昭和20年月日不詳』→ヒントになる
『年月日不詳』→ヒントにならない
※『借地権譲渡』が介在していると『建築年月日』と『借地開始時期』が別になる
→ヒントにならない

い 建物登記『甲区』の『所有権取得日』

『所有権保存』や『所有権移転』登記のハコの記載

う 建物の建築確認の書面・固定資産税納付書

手元に残っている場合

え 居住者が住民票上の『住民になった日』

住民票や戸籍の附票の記載が残っていることがある

お 航空写真by国土地理院

太平洋戦争中の米軍撮影のものも保管されている

か 第三者の証人(記憶)

一般的には証明力が弱い
しかし他の手がかりがない場合、認定につながることもある

住民票などの公的な資料については保存期間が短いです。
手元に残っていた、という場合ないと『新たに取得する』ことは困難です。
詳しくはこちら|公的情報の保存期間|戸籍・住民票・登記・固定資産評価証明書・裁判記録

4 借地期間のヒントも一切ない→最後の手段=現在を更新日とする

実際のケースでは『借地期間』のヒントが一切ない、ということがあります。
そのような場合は『最後の手段』があります。

いかなる手がかりもない場合の借地期間

新たに、現在を『契約日(更新日)』とする

要するに『考えられる範囲で最も長い期間』ということになります。
この意味では地主に最も不利な『設定』です。
ただ、『次の満了時』は明確になります。
明渡請求などの機会を作った、という意味では大きな前進となります。

5 借地期間を特定する手続=協議・調停・訴訟

以上のような借地期間を特定する場合には、通常、交渉からスタートして、場合によっては民事調停を活用し、最終的には訴訟で裁判所に判断してもらう、という段階を踏みます。民事調停は使わないことも多いです。

6 訴訟で借地期間を特定するための申立手法

協議・調停のいずれも、両方が納得・合意しない限り成立しません。
訴訟の場合は、最終的に裁判所が強制的に『判断』してくれます。
訴訟の場合は処分権主義・弁論主義などの構造的ルールがあるのです。
請求や主張をこのルールに沿った形で構成しないと判決で採用されないのです。
次のような工夫が必要です。

訴訟で借地期間を特定するための申立手法

あ 請求内容

借地期間の確認

い 主張する借地期間

提訴時点+法定期間とする

う 裁判所の判断プロセス

原告主張よりも被告に有利な結論があり得ない
→原告主張どおりに認定せざるを得ない
理由=借地契約には期間の定めなしがあり得ない

なお、実際には訴訟の中で交渉が進み、和解が成立して終了する、ということも多いです。

本記事では、借地期間が不明なケースにおける解決手段について説明しました。
実際には、個別的事情により法的判断や主張として活かす方法、最適な対応方法は違ってきます。
実際に契約期間などの借地に関する問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

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【借地借家法の適用がある賃貸借は「性質の変更」(民法103条)にあたるか】
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