【「処分(行為)」の意味や具体例(事実的処分・法的処分)】

1 「処分(行為)」の意味や具体例(事実的処分・法的処分)

いろいろな条文や解釈の中で「処分(行為)」という用語が登場します。このような日常用語として溶け込んでいる用語ではありがちですが、当たり前過ぎて法律的な意味が逆にわかりにくい、そのため、具体的な事案の結論(法的扱い)がどうなるかがハッキリしない(誤解する)ということが起きることがあります。
本記事では、「処分」という超基本的概念を説明します。

2 「処分」の意味→事実的処分+法的処分

「処分」の一般的な意味(解釈)は、事実的処分と法的(法律的)処分に分けられます。
事実的処分は、日常的に使う意味の「捨てる」というものがまず挙げられます。破損する、ということも含まれます。
次に法的(法律的)処分としては、固い表現でいうと財産権の設定・変更・消滅ということになります。まとめて(財産権の)変動といっても同じことです。抵当権や地上権の設定、債権譲渡が典型例です。和解契約は、実質的に債権の一部の消滅や新たな債務負担を生じるので、処分にあたります。

「処分」の意味→事実的処分+法的処分

あ 事実的処分の意味と具体例

(注・民法5条の「処分」の説明の前提(一般論)として)
処分には、
財産の消費や破損などのような事実的処分と、

い 法的処分

ア 法的処分の意味 直接財産権の設定・変更・消滅を生じさせる法的処分とがある。
イ 法的処分の具体例 後者には、債権の譲渡、債務の引受、弁済の受領、相殺、和解なども含まれる。
※高梨公之・高梨俊一稿/谷口知平ほか編『新版 注釈民法(1)改訂版』有斐閣2010年p313

3 物権設定→「処分行為」にあたる

(1)物権設定→「処分行為」にあたる

物権を設定する行為は、前述のように、処分(行為)の1つである財産権の設定にあたります。

(2)昭和4年大判・地上権設定→「処分行為」にあたる

物権の設定処分行為にあたる、と判断した判例があります。

地上権設定→「処分行為」にあたる

(注・現代語化した)
地上権たる借地権は賃借権たる借地権に比し強力の権利なるを以て借地法施行後に於ても該地上権設定行為は之を処分行為なりと認むるを相当とすべく
(注・寺院が所有地に監督官庁の許可を受けないで行った地上権設定契約を無効とした)
※大判昭和4年6月12日

4 賃貸借(賃借権設定)→処分行為否定

(1)民法602条の裏返し→処分行為だとはいえない

ではたとえば、不動産について第三者(賃借人)との間で賃貸借契約を締結することは処分行為といえるでしょうか。これについて一定の期間の範囲内であれば処分権限を有しない者が行うことができます。裏返すと、一定の期間を超える賃貸借(長期賃貸借)は処分権限を有する者だけが行うことができる、ということになります。
詳しくはこちら|処分権限のない者による短期賃貸借(長期賃貸借との判別・民法602条)
では、(長期)賃貸借契約を締結する行為は処分行為か、というとそうではありません。あくまでも処分行為と同じ扱いをする、というだけです。
というのは、賃貸借契約は債権契約なので、性質上、対象の物(不動産など)について財産権を設定したことにはならないのです。

(2)長期賃貸借→「実質的な」処分行為

長期賃貸借(契約の締結)は、「実質的に」は処分行為に該当するのです。処分行為そのものにあたるわけではありません。
あくまでも本来の処分行為とは、物権の帰属自体が変わる譲渡が代表であり、そのほかに物権の設定が含まれるにとどまるのです。

長期賃貸借→「実質的な」処分行為

(注・所在等不明共有者がいる場合の管理決定の裁判について)
なお、試案では、変更行為に加え、「処分」行為も対象とするとしていた。
これは、長期間の賃貸借実質的処分行為に該当すると説明する学説を念頭に、分かりやすさの観点から記載していたものであるが、民法第251条では処分の用語を用いていないし、処分行為という場合には、通常は、権利の帰属を変更させる行為、共有に即していえば、共有持分権の帰属の変更を意味するため、本資料では用いないこととしている。
※法制審議会民法・不動産登記法部会第13回会議(令和2年6月2日)『部会資料30』p4

(3)「賃借権設定」という用語による誤解

この点、賃借権設定という言葉が使われているので、財産権の設定にあたるような感じもしますが、本来の財産権の設定とは違います。
詳しくはこちら|「◯◯権設定」の意味・使う場面と「処分行為」との関係

本記事では、「処分(行為)」の意味や具体例について説明しました。
実際には、個別的事情により法的判断や主張として活かす方法、最適な対応方法は違ってきます。
実際にプリミティブな用語の意味までさかのぼるような高度な解釈に関する問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

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