【独身専用パーティーへの既婚者参加による違約金】
1 独身専用パーティーへの既婚者参加による違約金
お見合いパーティーは結婚に向けたイベントですので、独身者だけが参加できるものです。通常、イベント運営者は既婚者の参加を禁止しています。さらに、違約金のルールを作っておくことが有用です。本記事では、このような違約金の規定の有効性などが問題となった裁判例を紹介します。
2 事案内容と被告主張→全体で違約金30万円だと思った
この裁判で問題となった、具体的には被告(パーティー参加者)の主張は、違約金30万円というルールが、高すぎるから無効ではないか、また、有効だとしても同一人が複数回参加(違反)した場合、全体で30万円、つまり違反者(人)単位で課金されるのではないか、というものでした。
事案内容と被告主張→全体で違約金30万円だと思った
あ ダイジェスト部分
第2 事案の概要
本件は、お見合いパーティイベントを企画する業者である原告が、被告が既婚者であるにもかかわらず、これを秘して別紙イベント参加目録記載の各イベントに参加したとして、約定の違約金30万円の5回分、合計150万円を請求する事案である。
い 被告主張
ア 違約金は高すぎるという主張
違約金30万円は、本件イベントの参加費が2000円から5000円であることに鑑みて不当に高額である。
イ 違反回数カウントは全体で1回だと思った
原告のホームページには、「既婚の場合は損害賠償を請求する。1パーティ参加毎に、ペナルティー料金30万円を請求します。」「例:10回参加した場合:10×30万円=300万円を請求します。」との記載があるが、参加確認書には1回につき30万円が発生するとの記載はなく、口頭での説明もなかったため、被告は、何回参加しても30万円で済むものと理解していた。
※東京地判平成26年5月29日
3 裁判所の判断→各回30万円の違約金発生
違約金の条項の中身は、「本イベント」に既婚者が参加したら違約金30万円が発生する、と書いてありました。そこで、素直に読むとイベント単位、つまり1回のイベントについて30万円、というカウントだと読めます。
また5回の参加で合計150万円になることが高すぎる(公序良俗違反)かどうかについては、裁判所は特に詳しい理由をつけずに否定しています。他のパーティー参加者からみたら、裏切られた感が大きい、という評価が背景にあるのかもしれません。
裁判所の判断→各回30万円の違約金発生
あ 参加確認書への署名(前提事実)
(注・当裁判所の判断として)
被告が既婚者であること、被告は、既婚者でありながら、平成24年8月3日から同年10月26日までの合計5回、別紙イベント参加目録記載のとおり、独身者限定の本件イベントに参加し、各イベントの参加確認書には、「本イベント」に既婚者が参加した場合に違約金30万円が生じるとの項について、被告自身が「承諾する」との選択肢を選択して署名していることが認められる。
い 判断→毎回30万円発生
ア カウント→開催(回)単位
そこで検討するに、上記参加確認書にある30万円の違約金は、原告のホームページ上の説明・・・も踏まえると、本件イベントの参加条件を満たさない者が参加した場合の賠償額の予定と推定されるところ(民法420条3項)、同条に定める違約金は、債務不履行があるときは、損害の有無や多少を問わず、常に債権者に予定賠償額を得させる趣旨の定めであるから、原告は、被告に対し、違約金の定めに従い、「本イベント」への参加、すなわち、本件の各イベント参加毎に30万円の違約金を請求することができるとするのが相当である。
イ 公序良俗違反→否定
そのように解しても、本件においては、上記違約金の定めが公序良俗に反し無効になる事情はみあたらない。
※東京地判平成26年5月29日
4 まとめ
以上のように、ある意味単純な判断ですが、マッチングサービスの設計において条項(規約)を作成する際、参考になります。
5 関連テーマ
(1)既婚を隠した交際による責任
ところで、既婚というステータスを隠して、あとからこれが発覚して法律問題になる、というシーンはよくあります。交際している男女(当事者)の間で問題となることが多いです。
詳しくはこちら|既婚を隠した交際・恋愛は慰謝料が認められやすい|恋愛市場の公正取引
(2)暴利行為(公序良俗違反)による無効
この裁判例では一蹴されましたが、違約金が高すぎるから無効、という理論は、公序良俗違反のカテゴリの中の1つである暴利行為としていろいろな見解や実例があります。実際の裁判としては不動産などの売買契約に関するものが多いです。
詳しくはこちら|売買の代金額や違約金が不当だと無効となる(暴利行為の判断基準)
本記事では、独身専用パーティーへの既婚者の参加による違約金について説明しました。
実際には、個別的事情により法的判断や主張として活かす方法、最適な対応方法は違ってきます。
実際に各種サービスの違約金や既婚者が絡む男女交際に関する問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。
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