【売買契約における代金の支払場所(民法574条)】

1 売買契約における代金の支払場所(民法574条)

民法574条は、売買契約における代金の支払場所が規定されています。この条文だけが問題になることもありますが、売買に関する紛争で、民法574条が結論に影響する、つまり付随的問題となることもあります。
本記事では、民法574条について説明します。

2 民法574条の条文

最初に、民法574条の条文を確認しておきます。条文自体はシンプルです。

民法574条の条文

第五百七十四条
(代金の支払場所)
売買の目的物の引渡しと同時に代金を支払うべきときは、その引渡しの場所において支払わなければならない。
※民法574条

3 民法574条=代金支払場所の原則→目的物引渡場所

(1)民法574条の基本→同時履行ケースの代金支払場所

民法574条は、売買契約における代金の支払場所のルールです。条文に明記されているように、目的物の引渡と代金支払が同時に行われることになっている売買契約にだけ適用されます。つまり、同時履行が適用される売買契約のことです。
これに該当する売買契約では、代金の支払場所引渡場所になります。

民法574条の基本→同時履行ケースの代金支払場所

あ 適用条件

民法574条は、売買の目的物の引渡と同時に代金を支払うべき場合に適用される

い 結果=支払場所の決定

売買の目的物の引渡場所において、代金を支払わなければならない

(2)引渡場所の決定方法(前提)

前述のように、民法574条が適用される売買契約での代金支払場所引渡場所になります。引渡場所がどこになるか、というのは民法574条とは別の規定や合意により決まります。

引渡場所の決定方法(前提)

あ 特約がある場合

特約によって定まる

い 特約がない場合

(ア)特定物売買→契約締結時にその物が存在した場所(イ)不特定物売買→売主が給付する時の買主の住所

う 民法484条の条文

第四百八十四条
(特定物の引渡し等)
債権の目的が特定物の引渡しであるときは、その引渡しは、別段の意思表示がないときは、その物が債権発生の当時に存在した場所においてしなければならない。
※民法484条

4 民法574条の性質と例外→任意規定

(1)民法574条の強行性→否定

民法574条は強行規定ではなく任意規定です。つまり、契約の中で別の内容を合意している場合は合意が優先されます(民法574条は適用されません)。

民法574条の強行性→否定

民法574条は強行規定ではない
特約で変更することができる

(2)買主の債務不履行→民法574条適用除外

民法574条が適用されるはずの売買契約であっても、買主が代金支払義務を遅滞した場合には、適用されないことになります。この場合、民法574条が適用されないことになるので、大原則である債権者の住所で履行するルールが適用されます。

買主の債務不履行→民法574条適用除外

あ 例外的な適用除外

本来「目的物の引渡しと同時に代金を支払うべき」契約であっても、売主の引渡の時に買主が代金を支払わなかった場合には、民法574条の適用はない

い 例外時の支払場所

買主は、その後は一般原則に従って売主の住所において支払うことを要する
※大判昭和2年12月27日

参考情報

※我妻栄ほか著『我妻・有泉コンメンタール民法 第8版』日本評論社2022年p1243

本記事では、民法574条の規定や解釈について説明しました。
実際には、個別的事情により法的判断や主張として活かす方法、最適な対応方法は違ってきます。
実際に売買契約における目的物の引渡(明渡)や代金支払に関する問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

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