【仮差押における目的物の帰属(適法要件・保全異議・第三者異議)(解釈整理ノート)】
1 仮差押における目的物の帰属(適法要件・保全異議・第三者異議)(解釈整理ノート)
仮差押は債務者に帰属する財産が対象です。当たり前のことですが、民事保全法でははなく、添付書面を規定する規則から読み取れます。実際には誤って債務者以外に属する財産について仮差押がなされてしまい、救済手段を用いるケースもあります。
本記事では、仮差押における目的物の帰属に関する解釈を整理しました。
2 仮差押における目的物の帰属の要件
仮差押における目的物の帰属の要件
これは民事保全規則20条が明示している要件である
(「債務者の所有に属することを証する書面」の添付を定めている)
3 目的物の帰属の法的位置づけ→申立の適法要件
目的物の帰属の法的位置づけ→申立の適法要件
民事保全法21条、民事保全規則19条で目的物の特定が要求され、民事保全規則20条でこれが債務者に帰属することの証明が要求されている
4 債務者に帰属しない物の仮差押命令への救済手段→保全異議・第三者異議
債務者に帰属しない物の仮差押命令への救済手段→保全異議・第三者異議
あ 仮差押命令→瑕疵あり
債務者に帰属しない物について保全命令を発した場合、保全命令自体に瑕疵があるといえる
い 救済手段→保全異議・第三者異議
この場合、以下の法的手段が可能となる
(ア)保全異議の申立ての理由となる(イ)第三者異議の訴え(民事執行法38条)の理由となる
5 目的物の帰属の立証
目的物の帰属の立証
あ 未登記不動産
債務者の所有に属することを証する書面を添付しなければならない
(ア)固定資産税納付証明書(最も確実)(イ)建築確認通知(有力な疎明になりうるが、決定的な証拠とはならない場合がある)
未完成の建築物については、請負契約書の内容が明らかでない限り、注文者と請負人のどちらが所有するかの確定は難しい
い 未登記の船舶
不動産に準じるが、ほとんど例がない
う 債権
債務者から第三者に譲渡されていることをうかがわせる疎明が存在する場合がある
しかし、多くの場合、発令の時点では判明しない
え 動産
特定の動産を目的物とするのでない限り(場所を指定する場合)、執行の場面で初めて問題となる
その場合には第三者異議の訴え以外の不服申立ては認められない
6 参考情報
参考情報
本記事では、仮差押における目的物の帰属について説明しました。
実際には、個別的事情により法的判断や主張として活かす方法、最適な対応方法は違ってきます。
実際に仮差押の申立や誤ってなされた仮差押に関する問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。