【国際裁判管轄の一般原則(民事訴訟法3条の2)(解釈整理ノート)】
1 国際裁判管轄の一般原則(民事訴訟法3条の2)(解釈整理ノート)
民事訴訟をどの国の裁判所に申し立てることができるか(国際裁判管轄)、というルールにはいろいろなものがあります。その基本ルールは民事訴訟法3条の2です。本記事では、この民事訴訟法3条の2についてのいろいろな解釈を整理しました。
2 民事訴訟法3条の2の条文
民事訴訟法3条の2の条文
第三条の二 裁判所は、人に対する訴えについて、その住所が日本国内にあるとき、住所がない場合又は住所が知れない場合にはその居所が日本国内にあるとき、居所がない場合又は居所が知れない場合には訴えの提起前に日本国内に住所を有していたとき(日本国内に最後に住所を有していた後に外国に住所を有していたときを除く。)は、管轄権を有する。
2 裁判所は、大使、公使その他外国に在ってその国の裁判権からの免除を享有する日本人に対する訴えについて、前項の規定にかかわらず、管轄権を有する。
3 裁判所は、法人その他の社団又は財団に対する訴えについて、その主たる事務所又は営業所が日本国内にあるとき、事務所若しくは営業所がない場合又はその所在地が知れない場合には代表者その他の主たる業務担当者の住所が日本国内にあるときは、管轄権を有する。
※民事訴訟法3条の2
3 民事訴訟法3条の2の位置づけ→国際裁判管轄の一般原則
民事訴訟法3条の2の位置づけ→国際裁判管轄の一般原則
この規定は、事件の種類に関係なく認められる国際裁判管轄を規定している
4 自然人に対する訴えの国際裁判管轄(1項)
自然人に対する訴えの国際裁判管轄(1項)
あ 住所に基づく判定
被告の住所が日本国内にある場合、日本の裁判所は当該被告に対する管轄権を有する
「住所」は日本の国際民事訴訟法上の概念であり、基本的には民法上の住所の概念(民法22条)に従い、生活の本拠を意味する
い 居所に基づく判定
被告の住所がない場合または住所が知れない場合には、その居所が日本国内にあるときに日本の裁判所は管轄権を有する
この場合の「住所」は日本の住所に限られず、世界中の住所が含まれる
したがって、居所による日本の管轄が認められるのは、世界中のどこにも住所がないか知れない被告の場合に限られる
う 最後の住所に基づく判定
被告の住所・居所がない場合または知れない場合には、訴えの提起前に日本国内に住所を有していたとき(日本国内に最後に住所を有していた後に外国に住所を有していたときを除く)に、日本の裁判所は管轄権を有する
この場合の「住所」および「居所」も日本のそれに限られず、世界中のものが含まれる
5 外交特権を有する日本人に対する訴え(2項)
外交特権を有する日本人に対する訴え(2項)
これは、外交官等に対する訴えについても世界のどこかで国際裁判管轄が認められるようにするためである
6 社団(法人)・財団に対する訴え(3項)
社団(法人)・財団に対する訴え(3項)
あ 主たる事務所・営業所による判定
法人その他の社団または財団に対する訴えについて、その主たる事務所または営業所が日本国内にあるときに、日本の裁判所は管轄権を有する
「主たる事務所」または「主たる営業所」は実質的な活動の本拠の所在地によって決定される
い 代表者・主たる業務担当者の住所による判定
法人その他の社団または財団に対する訴えについて、その事務所・営業所がない場合またはその所在地が知れない場合には、代表者その他の主たる業務担当者の住所が日本国内にあるときに、日本の裁判所は管轄権を有する
7 法人の組織に関する訴え→法人の設立国(3条の2の適用排除)
法人の組織に関する訴え→法人の設立国(3条の2の適用排除)
※民事訴訟法3条の10(民事訴訟法3条の2の適用排除)
8 日本に管轄が認められる場合→国内の管轄の判定へ(参考)
日本に管轄が認められる場合→国内の管轄の判定へ(参考)
いずれの規定によっても国内管轄が定まらない場合には、民事訴訟法10条の2が適用され、「最高裁判所規則で定める地を管轄する裁判所」(東京地方裁判所または東京簡易裁判所)が管轄を有する
9 関連テーマ
(1)国際的法律問題まとめ(準拠法・国際裁判管轄・内容証明・強制執行)
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(2)民事訴訟の自然人の普通裁判籍の決定基準(民事訴訟法4条)(解釈整理ノート)
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10 参考情報
参考情報
本記事では、国際裁判管轄の一般原則(民事訴訟法3条の2)について説明しました。
実際には、個別的事情により法的判断や主張として活かす方法、最適な対応方法は違ってきます。
実際に民事訴訟の申立に関する問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。