【人事訴訟(離婚訴訟など)における訴え変更と反訴(解釈整理ノート)】

1 人事訴訟(離婚訴訟など)における訴え変更と反訴(解釈整理ノート)

人事訴訟は、「訴訟」である点で、民事訴訟(一般の訴訟)と同じですが、もちろん違いもあります。違いの1つとして、請求(訴訟物)の変動の扱いがあります。具体的には訴えの変更と反訴に関するルールです。本記事では、このルールに関する解釈を整理しました。

2 人事訴訟における訴えの変更の要件→民事訴訟よりも緩和

人事訴訟における訴えの変更の要件→民事訴訟よりも緩和

あ 民事訴訟における訴えの変更の要件(参考)

民事訴訟では、原告は控訴審の口頭弁論終結までに、請求の基礎に変更がない限り、請求又は請求の原因を変更できるが、訴訟手続を著しく遅滞させる場合は許可されない(民訴法143条1項・4項)

い 人事訴訟における訴えの変更の要件

人事訴訟では、民事訴訟法の規定にかかわらず、控訴審の口頭弁論終結に至るまで、請求の基礎の同一性がない場合でも、著しく訴訟手続を遅滞させることになっても、訴えを変更することができる(人訴法18条)
ただし、追加請求が同種の訴訟手続(人事訴訟)によるものであること(民訴法136条)、追加請求の訴えが適法であることは人事訴訟でも必要である

3 人事訴訟における反訴

(1)反訴の要件→民事訴訟よりも緩和

反訴の要件→民事訴訟よりも緩和

あ 民事訴訟における反訴の要件(参考)

民事訴訟では、反訴請求が本訴の請求又は防御方法と関連する場合に限り、訴訟手続を著しく遅滞させることとならないときで、反訴請求が他の裁判所の専属管轄に属しないときに限り、被告が反訴を提起できる(民訴法146条1項)
また、控訴審では相手方の同意がなければ反訴提起はできない(民訴法300条1項)

い 人事訴訟における反訴の要件

ア まとめ 人事訴訟では、被告は関連性がない場合でも、訴訟手続を遅滞させる場合でも、反訴を提起できる(人訴法18条)
控訴審でも原告の同意なしに反訴提起が可能である
なお、反訴請求が本訴請求と同種の訴訟手続による場合に限られるとの要件(民訴法136条)は人事訴訟でも適用されるため、反訴提起できるのは人事訴訟の請求及び関連損害賠償請求に限られる
イ 控訴審の反訴の判例 第1審が離婚請求を認容したところ、被告が控訴するとともに、慰謝料請求等の予備的反訴及び財産分与の申立をした
控訴審における予備的反訴及び財産分与の申立には原告の同意を要しない
※最判平成16年6月3日家月57・1・123

(2)反訴の相手方→本訴原告に限定

反訴の相手方→本訴原告に限定

(関連損害賠償請求の反訴について)
反訴の相手方は本訴原告に限られるとして、第三者を反訴被告とするものは許されない
※東京高判昭和55年12月25日判時992・65

4 請求の併合後の口頭弁論の分離の当否

請求の併合後の口頭弁論の分離の当否

あ 原則→分離は否定方向

請求の客体的併合、訴えの追加的変更、反訴の提起等により同一の身分関係に関する請求が併合された場合には、確定判決後の訴えの提起の禁止(人訴法25条)との関係で、口頭弁論を分離することは相当でないと考えられる

い 例外→先決という関係

ただし、例えば主位的に婚姻無効確認請求、予備的に離婚請求がされたような場合、婚姻の効力を先に確定することも合理性があり、口頭弁論の分離については柔軟に運用すべき場合もある

5 関連テーマ

(1)控訴審における反訴の提起(民事訴訟法300条)

詳しくはこちら|控訴審における反訴の提起(民事訴訟法300条)(解釈整理ノート)

6 参考情報

参考情報

岩井俊著『人事訴訟の要件事実と手続』日本加除出版2017年p58〜61

本記事では、人事訴訟における訴え変更と反訴について説明しました。
実際には、個別的事情により法的判断や主張として活かす方法、最適な対応方法は違ってきます。
実際に人事訴訟における訴え変更と反訴に関する問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

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