【相続分譲渡・相続分放棄があった場合の家事調停・審判における手続(排除決定)(整理ノート)】

1 相続分譲渡・相続分放棄があった場合の家事調停・審判における手続(排除決定)(整理ノート)

相続分の譲渡や相続分の放棄をすると、相続人ではない扱いとなります。
詳しくはこちら|相続分譲渡の基本と実務(遺産分割からの離脱と参加)
詳しくはこちら|相続分の放棄の全体像(相続放棄との違い・法的性質・効果・家裁の手続排除決定)
そこで、家庭裁判所の遺産分割の調停や審判が行われていても、途中から抜けることになります。本記事では、この場合の具体的な裁判所での手続について整理しました。

2 家事事件手続法の規定→当事者資格喪失者の排除(前提)

家事事件手続法の規定→当事者資格喪失者の排除(前提)

家事事件手続法43条は、当事者となる資格を有しない者及び当事者である資格を喪失した者を家事審判の手続から排除することができると規定している
この規定は、同法258条1項により、調停手続にも準用される

3 東京家庭裁判所における運用

(1)相続分放棄・相続分譲渡をした者→資料提出

相続分放棄・相続分譲渡をした者→資料提出

あ 相続分の放棄の手続

相続人から遺産の取得を希望しない旨の回答がある場合等は、裁判所から説明書及び相続分放棄届出書の書式を送付して、届出書及び印鑑登録証明書の提出を促している

い 相続分の譲渡の手続

相続分の譲渡は原則として当事者間で行われるものであるから、裁判所が譲渡そのものを勧めることはないが、当事者間で譲渡について検討されるときに、求められれば譲渡契約に関する参考書式及びその記載例を提供することがある
当事者間で譲渡がされた場合は、相続分譲渡届出書、相続分譲渡証書(原本の確認は不可欠だが、写しの提出を求めている)及び印鑑登録証明書の提出を求めている

(2)裁判所→排除決定

裁判所→排除決定

相続分の放棄又は相続分の譲渡の事実が確認されると、裁判所(又は調停委員会)は、放棄者又は譲渡者について排除決定をする

(3)排除決定に対する不服申立→即時抗告

排除決定に対する不服申立→即時抗告

あ 規定

排除決定には即時抗告をすることができる
※家事事件手続法43条2項

い 即時抗告権の放棄

東京家庭裁判所家事第5部では、排除決定の効力を速やかに発生させたい場合には、即時抗告権放棄書の提出を求めている
即時抗告権放棄書は、ほぼ全ての事案で提出されている

(4)当事者への情報提供(参考)

当事者への情報提供(参考)

東京家庭裁判所家事第5部では、全ての相手方に対して「遺産分割調停案内(相手方となられた方へ)」と題する説明資料を期日通知に同封して送付しており、同資料の中に遺産の取得を希望しない場合には相続分の放棄又は譲渡の手続がある旨説明されている

4 参考情報

参考情報

小田正二ほか稿『東京家庭裁判所家事第5部における遺産分割事件の運用』/『判例タイムズ1418号』2016年1月p22、23

本記事では、相続分譲渡・相続分放棄があった場合の家事調停・審判における手続について説明しました。
実際には、個別的事情により法的判断や主張として活かす方法、最適な対応方法は違ってきます。
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