【不動産の鑑定費用の相場(土地・建物の評価、地代・家賃の評価)】
1 不動産の鑑定費用の相場(土地・建物の評価、地代・家賃の評価)
不動産に関するいろいろな手続(トラブル解決)の中で、不動産そのものの評価額や適正な賃料(地代や家賃)を算出することがあります。この鑑定には一定の費用がかかります。本記事では、各種不動産鑑定にかかる費用相場(目安)を簡潔にまとめました。
2 私的鑑定と裁判所鑑定(前提)
(1)私的鑑定
不動産の「鑑定」は、大きく私的鑑定と裁判所の鑑定に分けられます。当事者が直接不動産鑑定士に依頼する(鑑定書を作ってもらう)のが私的鑑定です。私的鑑定だと依頼した側に有利な方向に偏ることが多いです。
(2)裁判所鑑定(費用負担者)
次に、裁判(訴訟・非訟)や調停の中で、中立の立場である裁判所が「鑑定」として不動産鑑定士に発注する方法もあります。私的鑑定と区別するため、裁判所(の)鑑定ということがあります。
この費用は、いったんは鑑定を申し立てた当事者が負担し、最終的には判決などで裁
判所が分担を決めることになります。
実務では、鑑定費用が高いので、当事者が裁判所鑑定を避けて、評価額を合意することや、結果的に和解成立に至ることにつながる、ということもあります。
詳しくはこちら|遺産分割調停における遺産評価の手続(整理ノート)
3 土地の評価額に関する鑑定費用
(1)私的鑑定の費用相場
土地のみの私的鑑定は、実務でのボリュームゾーンは20万円から80万円程度問実感です。
もちろん、土地の面積や形状、権利関係の複雑さによって金額は変動します。
たとえば、評価額が1億円を超えるような高額物件の場合は、60万円から70万円程度になることもあります。
(2)簡易鑑定の費用相場
費用を抑えたい場合には簡易鑑定(調査報告書)の利用も選択肢となります。簡易鑑定は、評価(計算)の内容を一部省略するなど、文字どおり簡易なものです。信用性は落ちますし、公的な証明力はありません。実務では、参考資料として使用するために初期段階で簡易鑑定を行うことがあります。
もちろん、費用は正式な私的鑑定よりは安くなります。簡易の程度によって10万円未満になることもあります。
(3)裁判所鑑定の費用相場
裁判所の鑑定における土地の評価費用は、私的鑑定よりも少し高いです。ボリュームゾーンは40万円から100万円程度という実感です。
4 土地の賃料(新規賃料・継続賃料)の鑑定費用
私的鑑定の場合、土地の新規賃料の鑑定費用は、小規模なケースで20〜30万円程度という実感です。
規模が大きくなる(地代が高くなる)に従って費用も上がります。
裁判所鑑定の場合は、小規模なケースで40〜50万円程度という実感です。
5 建物の評価額に関する鑑定費用
(1)私的鑑定の費用相場
建物のみの私的鑑定は小規模な一戸建てやマンション1戸の場合は20万円から40万円程度という実感です。
簡易鑑定であれば、「簡易」の程度により、10万円未満ということもあります。
(2)裁判所鑑定の費用相場
裁判所の鑑定における建物の評価費用は、一戸建てやマンション1戸の場合は30〜50万円程度という実感です。
6 建物の賃料(新規賃料・継続賃料)に関する鑑定費用
(1)私的鑑定の費用相場
建物の賃料の私的鑑定費用は、小規模なもので、20〜40万円が相場です。
(2)裁判所鑑定の費用相場
建物の賃料についての裁判所鑑定の場合は、小規模なもので、30〜60万円程度が多いです。
7 鑑定費用に影響する要素
以上の相場はあくまでも目安、一例です。不動産鑑定の費用は様々な要因によって変動します。
主な要素としては、不動産の種類と規模(面積が大きいほど高額)、評価額の高さ(高額物件ほど鑑定費用も高くなる傾向)、権利関係の複雑さ、依頼する鑑定事務所による差異、そして地域による差異などが挙げられます。
8 費用を抑えるためのポイント
鑑定費用を抑えるためには、以下の方法が有効です。まず、公的な証明力は必要ない場合には簡易鑑定(調査報告書)を活用することで、正式な鑑定よりも安く抑えることができます。
いずれにしても、目的に合った鑑定方法を選択することも重要です。
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本記事では、不動産の鑑定費用の相場について説明しました。
実際には、個別的事情により法的判断や主張として活かす方法、最適な対応方法は違ってきます。
実際に土地や建物の評価や賃料に関する問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。