【バルコニー・ベランダ×共用部分・改築禁止|規約の有効性・判断基準】
1 バルコニー・ベランダ×共用部分|標準規約・有効性
2 標準管理規約|バルコニー×共用部分
3 共用部分×使用制限|改築などの工作・工事ができない
4 規約の有効性|共用部分|不合理な条項は無効となる
5 共用部分の工事制限×有効性判断要素
6 バルコニー×共用部分・改築禁止|判例
1 バルコニー・ベランダ×共用部分|標準規約・有効性
本記事では,分譲マンションのバルコニー・ベランダなどの法的な扱いを説明します。
バルコニー・ベランダ部分は,隣の人が入って来れるところではありません。
居住エリアという意味では,専有部分という感覚,発想があります。
しかし,一般的には『共用部分』とされています。
<バルコニー・ベランダ×共用部分|標準規約・有効性>
あ 対象部分
バルコニー・ベランダ・屋上テラス
い 標準管理規約
いずれも『共用部分』として規定している
※標準管理規約(単棟型)8条,別表第2『1』(後記)
う 実質的な性格・位置付け
『躯体部分』の一環と言える
災害時に他の居住者も通行する可能性がある
→安全管理・保安などの管理上の性格がある
え 判例
上記対象部分を共用部分として定める規約は有効である
※最高裁昭和50年4月10日;バルコニー温室事件
※東京高裁昭和47年5月30日
※東京地裁平成17年9月7日
2 標準管理規約|バルコニー×共用部分
標準管理規約におけるバルコニー・ベランダに関する規定を引用しておきます。
<標準管理規約|バルコニー×共用部分>
あ 条項|8条
(共用部分の範囲)
第8条 対象物件のうち共用部分の範囲は、別表第2に掲げるとおりとする。
い 別表
別表第2 共用部分の範囲
1 玄関ホール、廊下、階段、エレベーターホール、エレベーター室、電気室、 機械室、パイプスペース、メーターボックス(給湯器ボイラー等の設備を除く。)、 内外壁、界壁、床スラブ、基礎部分、バルコニー、ベランダ、屋上テラス、車 庫等専有部分に属さない「建物の部分」
(以下略)
外部サイト|国土交通省|標準管理規約(単棟型)
このように通常,バルコニーは,規約により共用部分として認められているのです。
『共用部分』としての扱いについて,次に説明します。
3 共用部分×使用制限|改築などの工作・工事ができない
共用部分としての法的な扱い・制限についてまとめます。
<共用部分×使用制限>
あ 本質的な使用制限
『共用部分』の一定の工事
→『管理・変更』行為に該当する
→集会の決議が必要になる
詳しくはこちら|集会|決議事項『管理・変更』|対象行為・判断基準・具体例
い 規約・規定による制限
管理規約その他の規定の設定による制限
例;規約・使用細則・建築協定
4 規約の有効性|共用部分|不合理な条項は無効となる
共用部分の規約は有効性が否定されることもあります。
有効性の判断基準についてまとめます。
<規約の有効性|共用部分>
あ 対象となる規定
ア 共用部分と定める規定イ 共用部分の使用制限を定める規定
い 有効性判断基準
共同生活の維持の必要を超えて過剰・過酷な場合
→規約(条項)が無効となる
※東京高裁昭和47年5月30日
規約の有効性については別記事で詳しく説明しています。
(別記事『管理規約・基本』;リンクは末尾に表示)
5 共用部分の工事制限×有効性判断要素
共用部分の工事制限の規定は個別的・具体的事情により判断されます。
特殊性を踏まえた上での『合理性を逸脱しているかどうか』という観点です。
有効性判断に関わる事情をまとめるます。
<共用部分の工事制限×有効性判断要素>
次のような事情は無効という方向に働く
ア 工作物等の設置が小規模;移動・除去が容易イ 多くの住人が認容・賛同しているウ 多くの住人に有用であるエ 防災・保安・景観などの観点からの実害が少ない
実際に,標準管理規約をそのまま使用しているマンションが多いです。
個別的な特殊事情と整合しない,という状況も散見されます。
規約の条項があるからと言って,有効だとは限らないのです。
6 バルコニー×共用部分・改築禁止|判例
バルコニーについて,実際に改築が行われたケースを紹介します。
<バルコニー×共用部分・改築禁止|判例>
あ 事案
日本住宅公団の分譲住宅の専用部分をAが所有していた
Aは,バルコニーを温室とする工事を行った
管理組合はAに対してバルコニーの工作物を撤去するよう請求した
い 管理規約・建築協定
規約・建築協定として,次のような条項があった
ア バルコニーは共用部分とするイ バルコニーの改築を禁止する
う 裁判所の判断
バルコニーを共用部分と定める規約は公序良俗に反しない
=規約は有効である
→撤去請求を認めた
※民法90条
※最高裁昭和50年4月10日;バルコニー温室事件
『改築禁止』を有効として撤去請求が認められました。