【ひとり親の公的支援制度は市区町村独自のものも含めて多くある】
1 母子・父子家庭が利用できる公的支援制度はいろいろある
2 児童扶養手当は父子家庭,DVの保護命令が出された場合も利用できるようになった
3 ひとり親を対象とした『公的貸付制度』が利用できる
4 母子・父子家庭は税軽減等の優遇制度が受けられる
5 市区町村による児童育成手当がある
6 自治体によっては『母子家庭等自立支援給付金』がある
7 自治体によっては住居確保の支援制度もある
8 国民年金の負担の優遇策
1 母子・父子家庭が利用できる公的支援制度はいろいろある
離婚して,ひとり親になった場合の公的な支援としていろいろな制度があります。
ひとり親,つまり,母子・父子家庭に対する公的支援です。
自治体独自のものも少なくありません。
典型例として,代表的な制度を挙げます。
(1)主要な母子・父子家庭への公的支援制度
<主要な母子・父子家庭の支援制度>
ア 児童扶養手当(後記『2』)イ 母子福祉資金貸付金(後記『3』)ウ その他の主な優遇制度(後述) ※自治体によって異なりますのでご注意ください。
(2)自治体による母子・父子家庭への公的支援制度
<自治体による母子・父子家庭への支援制度>
ア 所得税・住民税の軽減イ 利子非課税制度(母子家庭のみ)(後記『4』)ウ 水道・下水道料金の免除エ 粗大ごみの処理手数料の免除オ JR通勤定期券の割引カ 都営交通の無料バスキ たばこ小売り販売業の許可(母子家庭のみ)ク 児童育成手当(後記『5』)ケ 母子家庭等自立支援給付金(後記『6』)
2 児童扶養手当は父子家庭,DVの保護命令が出された場合も利用できるようになった
母子・父子家庭に対する公的支援の代表劇なものが児童扶養手当です。
以前は母子だけが適用,とされていましたが,法律改正により父子も適用対象に含まれるようになりました。
(1)児童扶養手当制度の内容の改正
<児童扶養手当制度の改正>
平成22年8月からは父子家庭も対象に含められた
平成24年8月からはDVで裁判所から保護命令が出された場合も対象に含められた
(2)児童扶養手当の支給額算定方法
<支給額>
あ 子ども1人の場合
全部支給:4万1430円
一部支給:4万1420円から9780円(4万1420円-(受給者の所得-所得制限限度額)×0.0182890)
い 子ども2人以上の加算額
2人目:5000円
3人目以降:1人につき3000円
※ただし,支給要件に該当した月から7年経過,または支給開始日から5年経過すると手当が半分に減額される。
<所得額の限度額>
― | 受給資格者 | 受給資格者 | 受給資格者 | 受給資格者の配偶者,扶養義務者 |
扶養親族の数 | 父,母,養育者(全部支給) | 同左(一部支給) | 孤児などの養育者 | ― |
0人 | 19万円 | 192万円 | 236万円 | 236万円 |
1人 | 57万円 | 230万円 | 274万円 | 274万円 |
2人 | 95万円 | 268万円 | 312万円 | 312万円 |
3人 | 133万円 | 306万円 | 350万円 | 350万円 |
※所得額=年収-必要経費(給与所得控除額など)+養育費の8割-8万円-諸控除(寡夫・寡婦控除)
<支給要件>
ア 父母が婚姻を解消した子どもイ 父または母が死亡した子どもウ 父または母が一定程度の障害の状態にある子どもエ 父または母が生死不明の子どもオ 父または母が1年以上遺棄している子どもカ 父または母が裁判所からのDV保護命令を受けた子どもキ 父または母が1年以上拘禁されている子どもク 婚姻によらないで生まれた子どもケ 父母共に不明である子ども
<支給期間>
児童が18歳になった後最初に到来する3月まで
ただし,一定の障害を有する場合,2年(20歳まで)延長されることもある
3 ひとり親を対象とした『公的貸付制度』が利用できる
(1)ひとり親の支援制度のバラエティ
ひとり親,つまり母子・父子家庭が利用できる公的貸付金制度があります。
自治体によって異なります。
従前は『母子』だけが対象,というものが多かったです。
しかし近年は『父子』も適用対象に含まれる傾向にあります。
男女平等が徹底されつつあるという状況です。
<自治体による主要な援助制度>
あ 母子福祉資金貸付制度(後述)
20歳未満の子供を扶養している『母子家庭』の母親が対象
使途によって上限・金利などのバラエティがある
い 女性福祉資金貸付制度
母子家庭に限定されない
無利子・低金利の福祉貸付制度
使途によって上限・金利などのバラエティがある
う 生活福祉資金貸付制度
民生委員の援助とセットで『貸付』をする制度
え 応急小口資金貸付制度
病気などで緊急に資金が必要となった場合が対象
(2)母子福祉資金貸付金
貸付金制度のうち,メジャーな制度を紹介します。
<母子福祉資金貸付金>
↓東京都の場合
対象:都内に6か月以上居住し,20歳未満の子どもを扶養している母子家庭の母
条件:貸付利率は原則無利子。連帯保証人が必要。連帯保証人なしの場合,利率は1.5%
償還期間:3年から20年
※記載の各自治体における,平成25年9月時点におけるものです。
資金の種類 | 内容 | 限度額 | 償還期限 |
---|---|---|---|
事業開始資金 | 事業を開始するのに必要な設備・機械の購入費など | 283万円 | 7年以内 |
技能習得資金 | 事業開始・就職に必要な知識・技能を習得するための費用 | 月額6万8000円 | 20年以内 |
就職支度資金 | 就職に必要な被服・履き物などの費用 | 10万円(通勤用自動車を購入する場合32万円) | 6年以内 |
医療介護資金 | 医療・介護保険によるサービスを受けるための費用 | 医療34万円,特別48万円,介護50万円 | 5年以内 |
生活資金 | ア 技能習得期間中または医療・介護を受けている期間中に生活を維持するための資金 イ 母子家庭になって7年未満で生活の安定を図るための資金 ウ 失業中の生活を維持するための資金 |
アの技能習得期間中は月額14万1000円 アの医療・介護期間中およびイ,ウの期間中は月額10万3000円 イの期間中の養育費取得のための裁判費用は123万6000円 |
ア 20年以内 イ 5年以内 ウ 5年以内 |
住宅資金 | 住宅を建設・購入するための費用 | 150万円 | 6年以内 |
転宅資金 | 転宅に必要な敷金・前家賃などに充てるための費用 | 26万円 | 3年以内 |
結婚資金 | 婚姻に際し必要な費用 | 30万円 | 5年以内 |
4 母子・父子家庭は税軽減等の優遇制度が受けられる
母子・父子家庭に対する公的支援として,税金,公共料金などの負担の軽減や免除を図るものがあります。
また,影響許可取得を促進するものもあります。
自治体独自のものも含めて,多種多様なものがあります。
また,以前は母子だけが適用,というものも多かったですが,近年は父子も適用対象に含まれる傾向にあります。
男女平等が徹底されつつあるという状況です。
次に,典型例として,代表的な制度を挙げます。
<母子・父子家庭が対象となる公的優遇制度>
※記載の各自治体における,平成25年9月時点におけるものです。
↓東京都練馬区の場合
あ 所得税・住民税の軽減
(あ)寡夫控除
所得税:27万円
住民税:26万円
(い)寡婦控除
所得税:27万円(所得が500万円以下の場合35万円)
住民税:26万円(同30万円)
(う)住民税の非課税
合計所得金額が125万円以下,生活保護を受けているといった条件に該当する場合,住民税は非課税
い 利子非課税制度;母子家庭のみ
一定の手続をすれば,預貯金,公債などを購入した際の利子などが非課税
少額貯蓄非課税制度 | 元本または額面の350万円が限度 |
少額公債非課税制度 | 同上 |
う 水道・下水道料金の免除
児童扶養手当,特別児童扶養手当,生活保護の受給世帯は,申請により,水道料金は基本料金と1か月当たり使用水量10立方メートルまでの従量料金の合計金額が,下水道料金は1か月当たり8立方メートルまでの汚水排出量にかかる料金が免除
え 粗大ごみの処理手数料の免除
申請により処理手数料が免除
お JR通勤定期券の割引
児童扶養手当,生活保護の受給世帯はJRの定期乗車券を3割引きで購入できる。
か 都営交通の無料バス
児童扶養手当,生活保護の受給世帯のうち1人に限り,都電,都バス,都営地下鉄の無料乗車券を交付
き たばこ小売り販売業の許可;母子家庭のみ
たばこ事業法で定める評価の基準に反しない場合,財務大臣は許可を与えるよう努めなければならない。
<参考情報>
週刊ダイヤモンド 2013年9月号 50頁
5 市区町村による児童育成手当がある
児童育成手当という制度は,市区町村が実施しています。
自治体によっては,対象が障害を負う児童のみということもあります。
また,一般的に所得制限があります。
収入が高い場合は支給されない,または支給額が低い,ということがあります。
6 自治体によっては『母子家庭等自立支援給付金』がある
離婚によってひとり親となった者が,就職することを公的に支援する制度があります。
それまで育児・家事に専念していて,再び社会で働くことを支援する趣旨の制度です。
母子家庭等自立支援給付金,という制度です。
現在では,父(父子家庭)も対象とされています。
<自立支援・職業訓練などの制度>
あ 技術専門校での訓練手当
い 教育訓練給付金
『教育訓練講座』受講のサポート
う 高等技能訓練促進費
資格取得のためのサポート
《対象となる資格》
看護師・看護福祉士・保育士・医学療法士・作業療法士など
各自治体が実施しています。
自治体によっては,制度自体が存在しないということもあります。
7 自治体によっては住居確保の支援制度もある
<母子生活支援制度|例>
あ 母子アパート(東京都)
都営住宅に低額で入居できる
い 『公営住宅』の当選確率の優遇
東京都の場合『7倍』という設定もある
このような制度が設定されている自治体もあります。
各役所の社会福祉担当課で確認できます。
8 国民年金の負担の優遇策
国民年金の制度上,経済的事情によっては救済措置があります。
<国民年金の救済措置>
あ 原則論
経済的な事情で国民年金保険料を払えない場合
→払わないと『納付期間』が減らされる
い 不利益を受けずに済む方法=救済措置
ア 保険料免除(一部免除)制度イ 若年者猶予制度
う 注意点
救済措置申請の『後』だけ救済が適用される
申請日付を遡ることができない
→早めに手続をとることが重要
あまり知られていない制度もあります。
役所に確認の上,早めに手続を行うと良いでしょう。
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