【建物所有ではない土地賃貸借は借地借家法の適用なし→解約申入で終了する】
- 駐車場や駐輪場として土地を貸そうと思います。
借地借家法の適用があるのですか。
契約を終わらせる場合どうしたら良いのでしょうか。
1 『建物所有目的』ではない場合は,借地借家法の適用はない
2 借地借家法の適用がない土地賃貸借の期間の上限は20年
3 借地借家法の適用がない土地賃貸借で期間の定めなし→解約申入で終了する
4 期間設定のある土地賃貸借でも特約があれば途中解約ができる
1 『建物所有目的』ではない場合は,借地借家法の適用はない
土地賃貸借のうち,『建物所有目的』のものは借地借家法の対象となります(借地借家法2条1号)。
借地借家法の適用がある土地賃貸借のことを「借地」と呼んでいます。
借地借家法では,賃借人(借地人)保護のルールが規定されています。
『建物所有目的』ではない場合は借地借家法の適用はありません。
<建物所有目的ではない典型例>
ア 駐車場
現在ではカーシェアに用いる方法もある
詳しくはこちら|カーシェア(自動車の貸し借り)全般のメリットと普及
イ 駐輪場
参考;駐輪場検索サービス;PEDALRest
ウ 資材置き場エ 太陽光発電のパネル設置場所
別項目;太陽光パネル設置の土地利用形態は賃貸借,地上権など
オ 風力発電の風車設置場所
2 借地借家法の適用がない土地賃貸借の期間の上限は20年
(1)民法上の期間の上限規定
借地借家法の適用がない場合,民法上の期間の上限規定が適用されます。
民法上,賃貸借契約の期間の上限は20年とされています(民法604条)。
また,『期間を定めない』ということも可能です(民法617条)。
(2)強行規定の性格
借地借家法の適用がない土地賃貸借で,例えば期間25年と規定しても無効です。
民法上の期間の上限の規定は,合意内容を制限するものです。
このような性質上合意よりも法律の規定が優先と解釈されます。
強行規定の性格と言われます。
(3)借地借家法との比較
この点,借地借家法では原則として30年以上とされています(借地借家法3条)。
仮にこれより短い期間を決めたり,『期間の定めなし』としても,無効となります(借地借家法9条)。
規定の仕方が上限,下限ということも含めて違います。
3 借地借家法の適用がない土地賃貸借で期間の定めなし→解約申入で終了する
借地借家法の適用がない土地賃貸借の契約終了に関して説明します。
(1)契約上期間を定めてある場合は設定が優先
契約上の期間の設定が優先的に適用されます。
例えば1年であれば,1年経過時に賃貸借契約は終了します。
なお,「期間設定」自体の上限は20年とされています(上記『2』)。
(2)期間の定めがない場合は解約申入で終了する
賃貸借契約で,期間を決めておかない,ということも可能です。
その場合,オーナー・賃借人のいずれかから,解約申入をすることができます。
解約告知と言うこともあります。
そして,解約申入の通知の後,土地ならば1年後(建物は3か月後)に契約が終了します(民法617条1項)。
つまり解約予告期間は1年ということです。
(3)解約申入の方法は合意が優先
契約において,解約予告期間を設定しておけば,その約定(特約)の方が優先となります。
1年よりも短い期間でも長い期間でも設定できます。
また,賃貸人,賃借人について,それぞれ別の解約予告期間を設定することも可能です。
さらに,一定期間は解約ができない,とか,一定期間内の解約については,違約金が発生する,などの設定をするケースもあります。
(4)合意が優先という原則論
民法解釈の大原則として,法律上の規定よりも合意が優先,とされています。
例外的に強行規定の場合は法律規定の方が優先となります。
(5)借地借家法との比較
借地借家法の適用がある「借地」では,「期間の定めがない」ということはありません。
また,期間満了時にも「更新」が原則とされています。
終了はそう簡単には認められないという借地人保護の方針が取られています。
4 期間設定のある土地賃貸借でも特約があれば途中解約ができる
(1)契約期間は当事者を拘束するが特約があれば別
契約の一般論として,期間の途中で,一方の意思表示のみにより契約が終了する,ということはありません。
期間については,当事者を拘束するのです。
土地賃貸借契約においても,期間の途中での無条件での解約,ということはできないのが原則です。
ただし,契約上,途中で解約できる(解約申入条項)とされている場合は別です。
(2)借地借家法の適用があると借主保護に反する特約は無効(参考)
なお,借地借家法の適用がある場合は大きく違います。
賃貸人からの解約申入の条項は無効と考えられます。
最低期間や更新拒絶の制限など,借地借家法における借地人保護ルールに反するからです(借地借家法9条)。
逆に,賃借人(借地人)が途中で解約できる,という特約(条項)は有効です。
これは賃貸人の収入が保護されないことになりますが,借地借家法上,賃貸人の保護は要請されていないからです。
実際に,賃借人からの解約申入を規定している借地契約も少なくないです。
条文
[借地借家法]
(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 借地権 建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権をいう。
(略)
(強行規定)
第九条 この節の規定に反する特約で借地権者に不利なものは、無効とする。
[民法]
(賃貸借の存続期間)
第六百四条 賃貸借の存続期間は、二十年を超えることができない。契約でこれより長い期間を定めたときであっても、その期間は、二十年とする。
2 賃貸借の存続期間は、更新することができる。ただし、その期間は、更新の時から二十年を超えることができない。
(期間の定めのない賃貸借の解約の申入れ)
第六百十七条 当事者が賃貸借の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合においては、次の各号に掲げる賃貸借は、解約の申入れの日からそれぞれ当該各号に定める期間を経過することによって終了する。
一 土地の賃貸借 一年
二 建物の賃貸借 三箇月
(略)