【建物所有目的の土地賃貸借は『借地』として借地借家法が適用される】
1 借地権の定義
借地借家法では、土地の賃貸借契約を借地として、多くの保護規定を設定しています。
本記事では借地借家法による借地の保護の規定の全体像を説明します。
最初に借地権の定義をまとめます。
借地権の定義
※借地借家法2条1号
実際には、この借地権の定義に該当するかどうかがはっきりしないケースもあります(後記)。
2 借地借家法による借地人保護(概要)
借地借家法の借地に該当する場合、多くの借主保護のための規定が適用されます。
概要をまとめます。
借地借家法による借地人保護(概要)
あ 契約期間
契約期間(存続期間)の最低限が定められている
30年や20年以上などと長めに設定されている
※借地借家法3条、4条
詳しくはこちら|借地借家法の借地期間の基本(法定期間は30年→20年→10年)
い 更新
地主による更新拒絶には正当事由が必要である
→期間の満了の際に、原則的に更新される
借地が終了する際は多額の明渡料が必要となる
※借地借家法6条
詳しくはこちら|借地の更新拒絶・終了における『正当事由』・4つの判断要素の整理
う 建物買取請求権
借地契約が終了する場合
→建物を地主が買い取ることが強制される
※借地借家法13条;建物買取請求権
詳しくはこちら|借地期間満了時の建物買取請求権の基本(借地借家法13条)
3 借地人保護の裏返しの地主の負担
借地(人)はとても多くの保護が適用されます。
裏返すと、地主(土地所有者)は大きな制限・負担を受けます。
借地人保護の裏返しの地主の負担
あ 半永久的な利用制限
一旦借地として貸した場合
→土地は半永久的に戻ってこない(使えない)
い 明渡の際の経済的負担(明渡料)
明渡請求によって土地を取り戻す場合
→通常は多額の明渡料が必要となる
4 借地人保護規定を排除する特約は無効
借地借家法の借地人保護のルールの大部分は、当事者の合意によって、借地人に不利な方向には変更できないことになっています(借地借家法9条、16条、21条)。
このように当事者の合意で変更できないルールを強行規定と呼んでいます。
実際には内容によって特約の有効性の判断基準は違います。
特約の有効性をはっきりできない判断基準も結構多いです。
5 建物所有目的の賃貸借に該当しないケース(概要)
土地を貸すケースでも建物所有目的の賃貸借ではないものもあります。
当然、借地(権)としては扱われません。
借地借家法は一切適用されません。
建物所有目的の賃貸借に該当しないケース(概要)
あ 建物所有目的ではない
借地に該当しない
典型例=駐車場や資材置き場など
※借地借家法2条1号
詳しくはこちら|借地借家法が適用される建物所有目的は主従(比重)で判断する
い 賃料の支払がない
賃料(地代)の支払がない場合
→賃貸借契約ではない
使用貸借契約(or無償の地上権)となる
詳しくはこちら|借主の金銭負担の程度により土地の使用貸借と借地(賃貸借)を判別する
6 借地借家法の一部が適用されない土地賃貸借(概要)
建物所有の土地の賃貸借でも、必ず借地借家法が全面的に適用されるとは限りません。
定期借地と一時使用目的の賃貸借は、借地借家法の適用の一部が適用されません。
借地借家法の一部が適用されない土地賃貸借(概要)
あ 定期借地契約
定期借地契約の中で3タイプがある
→借地借家法の法定更新が適用されない
※借地借家法22~24条
詳しくはこちら|定期借地の基本(3つの種類と普通借地との違い)
い 一時使用目的の賃貸借
一時使用の目的であることが明確である場合
→借地借家法の規定の大部分が適用されない
※借地借家法25条
詳しくはこちら|一時使用目的の借地の基本(30年未満可能・法定更新なし)
借地借家法の適用を受けない契約のニーズは以前からありました。
しかし、これを実現するハードルは高かったです。
以上説明したような例外的なものに該当する工夫をするケースも多くありました。
その後、借主が『例外にはあたらない』と主張するというトラブルが絶えませんでした。
しかし、平成12年の借地借家法改正により、定期借地という制度が創設され、無駄な争いを避けられるようになりました。
ただ、契約に不備があるためにトラブルに発展するケースは、現在でもまだ多いです。