【定期借地の基本(3つの種類と普通借地との違い)】
1 定期借地の基本(3つの種類と普通借地との違い)
通常の借地契約(普通借地)では、期間が満了しても、法定更新のルールによって、実際には更新されない方がレアといえます。つまり、延々と更新が続くのです。
詳しくはこちら|借地の更新拒絶・終了における『正当事由』・4つの判断要素の整理
この例外として、法定更新の適用がない、つまり期間満了で確実に契約が終了するタイプの借地契約もあります。これを定期借地といいます。本記事では定期借地の基本的事項を説明します。
2 『半永久的に貸地が返ってこない』ことは社会的なマイナス効果が大きい
最初に定期借地という制度が作られた趣旨、背景を説明します。
前述のように、法定更新というルールにより借地契約が簡単には終了しないのは、借地人保護が目的です。ただ、その結果、必ずしも借主保護にはつながらないこともあります。
借地制度による借地人保護の影響
・半永久的に借地が続く
・地主から終了させる場合は、大きな明渡料が必要となる
↓
地主にとっては大きな負担
↓
地主は、土地を貸すことを避ける方向
・土地活用の阻害
・社会経済への悪影響
このように、借地人保護、というメリットから出発しても、土地賃貸借にブレーキがかかる、というデメリットにつながるのです。
3 『定期借地』であれば、期間満了時に土地が確実に戻ってくる
定期借地は地主が安心して借地を提供できるよう創設された制度です。
平成4年8月に施行された借地借家法によって創設されました。
定期借地以外の通常の借地のことを普通借地と言います。
定期借地が普通借地と決定的に違うところは、法定更新の制度の適用がないことです。
普通借地の場合、期間満了時に法定更新となり、借地は継続します(借地借家法5条)。
このルールを排除する特約は無効とされます(強行法規;借地借家法9条)。
非常に強い借地人保護です。
しかし、定期借地の場合、法定更新が適用されません。
つまり、期間満了時に確実に契約が終了する→明渡=土地返還が実現する、ということです。
4 定期借地は『地主に有利』→土地活用の促進→社会経済活性化効果あり
定期借地は確実に借地契約が終了というのが大きな特徴です(前記『2』)。
この特徴から、次のような効果が期待されます。
定期借地制度の社会的な意義
↓
地主が土地を貸しやすい
地代、権利金が安くてもよいという傾向
(普通借地よりも相場は低い)
↓
借主は、資金が少なくてもマイホーム(の敷地)を取得できる
まだまだ日本では所有への憧れが強いです。
ただ、現実問題として、定期借地として50年間の土地の利用期間は十分だという考えもありましょう。
状況次第で、生涯その建物に住むということを前提としても支障ないとも考えられます。
実際に、諸外国では定期借地がポピュラーな地域も少なくありません。
『期限付き所有権』などと呼ばれることもあります。
定期借地契約は、以上のように土地活用の促進、社会経済への貢献というメリットがあるのです。
5 『定期借地』はさらに3種類に分けられる
借地借家法上、法定更新が適用されない方式の借地は、3つ規定されています。
この3つを総称して定期借地(広義)と言います。
借地借家法上の法定更新の適用がない借地(広義の定期借地)
あ (狭義の)定期借地
一般定期借地と呼ぶこともある
存続期間=50年〜
契約の方式=『書面』を要する
※借地借家法22条
い 事業用定期借地など
ア 共通
契約の方式=『公正証書』を要する
※借地借家法23条3項
イ 事業用定期借地
・存続期間=30〜50年
・『法定更新・建物買取請求権』排除は任意的
※借地借家法23条1項
ウ 事業用借地(同条2項)
・存続期間=10〜30年
・『法定更新・建物買取請求権』排除は自動的
※借地借家法23条2項
詳しくはこちら|事業用定期借地は10〜30年、30〜50年の2タイプがある
う 建物譲渡特約付借地
存続期間=30年〜
契約の方式=制限なし
※借地借家法24条
詳しくはこちら|建物譲渡特約付借地の基本(建物譲渡の定めの種類と条項の具体例)
6 定期借家との違い→賃料減額請求の排除特約の可否など
ところで(普通)借地契約では、賃料減額請求を禁止する特約は借地人に不利なので無効となります。
詳しくはこちら|賃料に関する特約の一般的な有効性判断基準(限定的有効説)
この点、定期借地の建物版である定期借家では、賃料減額請求を禁止する特約は有効とされています。
このような定期借地と定期借家の違いは、別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|定期借家の基本(更新なし=期間満了で確実に終了する)
本記事では、定期借地の基本について説明しました。
実際には、個別的事情により法的判断や主張として活かす方法、最適な対応方法は違ってきます。
実際に貸地・借地に関する問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。