【事業用定期借地は10〜30年・30〜50年の2タイプがある】
1 事業用であれば10〜50年の範囲で定期借地が可能(事業用借地)
事業用定期借地という制度は、事業用建物の建設、運用特有のニーズにマッチしたものです。
つまり、比較的短期間(10年~50年)限定での建物の存続を可能とする契約です。
以前は、設定できる期間の幅が10年~20年、という、やや適応範囲が厳しいものでした。
その後、近年の事業・ニーズの多様化に伴い、設定できる期間の幅が拡がるとともに、2タイプに分けられました。
事業用定期借地の場合は、更新が原則というルールが適用されません。
地主も安心して貸せるようになっているのです。
2 事業用定期借地には『10〜30年』と『30〜50年』の2タイプがある
(1)事業用定期借地の2つの類型
事業用定期借地には、さらに2つの類型があります。
<事業用定期借地の2つの種類>
類型(俗称) 長期タイプ 短期タイプ 条文(借地借家法) 23条1項、3項 23条2項、3項 存続期間 30年以上50年未満 10年以上30年未満 更新 『なし』という特約可能 更新なし 建物買取請求 『なし』という特約可能 なし 公正証書による契約 必須 必須
(2)2つのタイプの違い
契約更新、建物買取請求権について、『短期タイプ』の方は、特約がなくても(通常のルールが)適用されません。
この点、『長期タイプ』の方は、特約でなしにできるだけです。
つまり、敢えて特約を付けずに、普通借地のルールを適用する、という設定にすることも可能なのです。
ですから、例えば、『更新はなしだけど、建物買取請求権は認める』という設定も可能です。
一方、『短期タイプ』は、このような特約による調整はできません。
短期タイプは、本当にごく短期限定の建物を前提にしている趣旨です。
3 事業用定期借地の契約は公正証書が必須
事業用定期借地の契約は公正証書にする必要があります(借地借家法23条3項)。
これは、『更新がない』という特殊な賃貸借契約ですので、当事者の認識を明確化しておく、という趣旨です。
公証人が意思確認をしますので、認識不十分ということが避けられますし、また証拠になるので、事後的なトラブルが回避できます。
仮に、公正証書にせずに一般の契約書で調印した場合、定期借地としては認められません。
この場合、普通借地として扱われるリスクがあります。
普通借地という扱いになってしまうと、法定更新が適用され、半永久的に土地の返還がなされない、ということになりましょう