【借地契約の更新・終了の基本(更新の種類・解除・地上権消滅請求)】

1 借地契約期間満了時のパターン|更新・終了|まとめ

借地契約期間満了時の『更新or終了』については次のようなパターンに分類できます。

(1)更新

借地契約期間満了時のパターン|更新

あ 合意更新

両方が『更新』に合意した場合である
合意した時期により別の解釈となることもある(後記)

い 法定更新

現実的な原則形態である
ア 借地人が更新請求イ 借地人の使用継続について地主が異議を述べない ※借地借家法5条
※借地法4条1項、6条1項

なお、更新自体に問題はなくても、これとは別に、更新料の支払に関するトラブルが発生することもあります。
詳しくはこちら|借地の更新料の基本(更新料の意味と支払の実情)

(2)終了

借地契約満了時のパターン|終了

あ 借地人希望による期間満了終了

借地人が『終了』を希望した場合である
※借地借家法13条
※借地法4条2項

い 更新拒絶+正当事由

『地主が終了を希望+明渡料の支払』という状態
更新拒絶が認められるハードルは高い(後記)

いずれの場合でも『建物買取請求権』が行使されることが多いです。
『建物買取請求権』については別記事で説明しています。
詳しくはこちら|借地期間満了時の建物買取請求権の基本(借地借家法13条)

2 合意更新の時期|時期がずれると別の解釈となる

契約満了時に借地契約を『合意更新』する方法があります。
実務上、後から『更新の合意をした時期』が問題となることがあります。
これについてまとめます。

合意更新の時期×解釈

あ 通常

期間満了の付近の時点でなされる

い 例外的な時期×扱い

期間満了まで余裕がある時期に更新が合意された場合
→次のいずれかとして扱う
ア 既存の借地契約の期間を延長する合意イ 既存の借地契約の合意解除+新たな借地契約の締結 ※水本浩ほか『基本法コンメンタール借地借家法第2版補訂版』日本評論社p182

3 借地の期間満了による契約終了→ハードルは高い

借地契約満了時に、現実的・実務的には通常『法定更新』がなされます。
逆に『契約終了』は、なかなか成立しないのです。
『契約終了』の代表的なプロセスは『更新拒絶』です。
『更新拒絶』のハードルの高さについては別記事で説明しています。
詳しくはこちら|借地の更新拒絶・終了における『正当事由』・4つの判断要素の整理

4 期間満了時以外の借地契約終了|パターン整理

借地契約が終了するのは『期間満了時』に限られません。
契約期間とは関係のない『契約終了のパターン』を整理します。

期間満了時以外の借地契約終了|パターン整理

・解約申入・解除
・消滅請求
『あ・い』は借地人側の違反行為を原因とする
・合意解除
・建物の「朽廃/滅失」→当然終了

それぞれの内容については次に説明します。

5 解除|原因=借地人の違反行為

借地人側による一定の『違反行為』が契約終了につながることがあります。
地主側から取る対抗的なアクションです。

解除|理由

ア 借地権無断譲渡イ 借地上の建物について無断で行った増改築、改築ウ 債務不履行 典型例=地代不払

6 地上権の消滅請求|『解除』と同様

『借地契約』の大部分は、『賃貸借契約』です。
しかし『地上権』という場合もあります。
『地上権』は『物権』です。
そのため『解除』という制度がありません。
その代わりに『地上権消滅請求』という制度があります。

地上権の消滅請求

地上権者が2年間地代支払を怠った場合
→地主が地上権の消滅請求をできる
→地上権が消滅する
=借地が終了となる
※民法266条、276条

賃貸借の場合、通常、数か月の地代不払いで『解除』が認められます。
それと比べると地上権の場合、終了されるハードルが高いです。

7 合意解除|地主・借地人の合意による終了

地主と借地人が『借地契約を終了させること』を合意することがあります。

合意解除|地主・借地人の合意による終了

あ 合意解除|基本事項

地主・借地人が期間の途中に『借地契約終了』を合意すること
他の『解除』と区別するために『合意解除』と呼んでいる

い 実務での利用|典型例

『更新拒絶』の有効性について見解の相違が発生
→交渉が行われる
→和解として、一定条件を前提に『合意解除』をする

8 建物の朽廃・滅失×借地契約終了|概要

建物の物理的な状況によって借地契約が終了することもあります。

建物の朽廃・滅失×借地契約終了|概要

あ 建物が朽廃or滅失×借地契約終了

→借地契約が終了することがある
具体的状況によって適用される制度・基準が異なる
例;借地借家法or借地法の適用

い 『朽廃・滅失』発生の現実性

借地人は通常適法な範囲で修繕を行う
→建物の朽廃・滅失は生じることはない

借地契約が終了する規定は具体的事情によって異なります。
これについては別記事で説明しています。
詳しくはこちら|旧借地法における建物の朽廃による借地の終了(借地権消滅)

9 借地契約の終了×現実性|明渡料なく終了するのはレア

借地契約が終了するパターンは多くのものがあります(前述)。
しかし、現実的に実現する可能性が低いものがほとんどです。
『借地契約の終了』の現実性についてまとめてみます。

借地契約の終了×現実性

あ 前提事情=通常の状況

借地人が適切に建物管理を行っている
地代を滞納しない

い 現実的な状況

半永久的に借地契約は終了しない

う 地主都合による明渡|現実的

ア 期間満了時 更新拒絶→借地契約終了となる
『多額の明渡料』の提供が前提である
詳しくはこちら|借地の明渡料の相場|訴訟と交渉の違い|借地権価格・正当事由充足割合
イ 契約期間中 地主が借地人から借地権を買い戻す
地主・借地人が条件(金額)を合意することが前提である

借地契約が終了しない=継続している以上は明渡請求をできません。
明渡が実現するのはハードルが高いと言えます。
これは、地主が『土地を貸す』ことの大きなリスク・負担と言えます。
この問題を解消する制度として『定期借地』があります。
詳しくはこちら|定期借地|基本|3つの種類・普通借地と違って法定更新がない

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【刑法(条例)の適用範囲(準拠法)は属地主義が原則である】
【賃貸借における解除権の消滅(消滅時効・黙認)】

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