【贈与税の算定方法|扶養範囲の除外・住宅取得資金の非課税特例】
1 贈与税の算定方法
2 贈与税の対象にならない無償の財産移転
3 贈与税の対象とならない『扶養』の範囲
4 住宅取得資金の非課税特例
1 贈与税の算定方法
相続の対策や,民事的な交渉,裁判において『贈与』が用いられることもあります。
この場合に『贈与税』の問題が大きいです。
後から想定外の課税で後悔することがないよう,事前に税務面も把握しておくと良いです。
贈与税の算定方法の概要を説明します。
<贈与税の算定方法の概要>
あ 贈与額から基礎控除額を差し引く
これが『課税標準額』となる
い 課税標準額に贈与税率を乗じる
これが『贈与税額』となる
↓に,基礎控除額と税率,算定の例を示します。
税率は累進的な設定です。
<基礎控除額>
110万円
<贈与税率;暦年>
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額;速算用 |
200万円以下の場合 | 15% | - |
300万円以下の場合 | 15% | 10万円 |
400万円以下の場合 | 20% | 25万円 |
600万円以下の場合 | 30% | 65万円 |
1000万円以下の場合 | 40% | 125万円 |
1000万円超の場合 | 50% | 225万円 |
<算定例>
あ 設定
贈与財産=1000万円
い 贈与税額算定
1000万-110万=890万円(課税標準額)
890万円×40%-125万=231万(贈与税額)
2 贈与税の対象にならない無償の財産移転
基本的に,財産の動きがあり,対価を伴っていないと→無償→贈与,と税務署は原則として捉えます。
無償での財産の移転,がすべて贈与税の課税対象となるわけではありません。
各種ルールにより贈与税が課税されない,というものを整理します。
<贈与税が課税されないケース>
あ 居住用不動産の配偶者控除
詳しくはこちら|夫婦間の不動産贈与・居住用不動産の配偶者控除
い 法人から個人への贈与
う 扶養義務の範囲内
え 住宅取得資金の非課税特例
3 贈与税の対象とならない『扶養』の範囲
『扶養』としての金銭の授受があっても,これは『贈与』とは扱われません。
民法上の『扶養義務の履行』に該当するからです。
現実には,『扶養』の範囲について曖昧であることが多いです。
この点,通達では次のように表現されています。
<扶養義務の範囲>
夫婦や親子、兄弟姉妹などの扶養義務者から生活費や教育費に充てるために取得した財産で、通常必要と認められるもの
<『扶養の範囲』の典型例>
あ 生活費
その人にとって通常の日常生活に必要な費用
い 教育費
学費や教材費,文具費など
特に『生活費』については,グレードと言いますか,例えば親子間での双方の経済力によって違ってくるでしょう。
親が裕福で,息子(娘)自身の収入はアルバイトで多少ある程度,という場合は,渡される生活費,は高めの金額が認められるでしょう。
<『扶養』とは認められない『送金』|例>
あ 高額
月額100万円を毎月送金しているような場合
→このうちの一定の金額は『贈与』となる
い 『資産』購入に用いた
実際に渡された資金で不動産・株式などの『資産』を購入しているような場合
4 住宅取得資金の非課税特例
贈与税が非課税となる特例のうち,よく利用されるものを説明します。
『住宅取得資金』としての贈与に関する贈与税非課税の特例です。
以下,順に適用される条件などについて示します。
<住宅取得資金の非課税特例|典型例>
息子が住宅を購入する際,父が資金を援助する
<住宅取得資金の非課税特例|受贈者の要件>
あ 贈与を受けた時に日本国内に住所を有する
一定の例外もある
い 贈与を受けた時に贈与者の直系卑属である
『直系卑属』とは子や孫などが該当する
『子や孫などの配偶者』は含まれない
う 贈与を受けた年の1月1日において20歳以上である
え 贈与を受けた年の合計所得金額が2000万円以下である
『収入』ではない
『所得』とは『収入』から控除類や経費を差し引いたものである
<『住宅取得資金』の範囲>
家屋の新築,増改築に充てるための資金
→対象となる家屋の規模や築年数など,一定の細かいルールがある
<非課税となる金額>
1000万円
過去の同種の特例適用実績や適用の時期により,金額が変わることがある
2021年10月発売 / 収録時間:各巻60分
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