【遺言代用信託には変更に関する規定を作ることが望ましい】
1 遺言代用信託における信託の変更
2 遺言代用信託の変更(遺言・死因贈与との比較)
3 信託の中に変更方法を定める方法
4 遺言代用信託の変更に関するニーズと設定の例
1 遺言代用信託における信託の変更
信託は,亡くなった時の財産の扱いを細かく決めておくことができます。そのため,遺言の代わりに信託を活用することがよくあります。これを遺言代用信託と呼びます。
詳しくはこちら|遺言代用信託のメリット(通常の遺言や遺言信託との違い)
ところで,信託契約が成立した後に信託の内容を変更することができます。
詳しくはこちら|信託の変更の基本(信託内容を変更できる要件のバリエーション)
特に,遺言代用信託では,信託契約の中で信託の変更をしやすく設定しておくことが好ましいです。
本記事では,遺言代用信託における信託の変更について説明します。
2 遺言代用信託の変更(遺言・死因贈与との比較)
(遺言代用)信託を後から変更するには,原則として,委託者・受託者・受益者の全員の同意が必要です。
一方,遺言や死因贈与は,遺言者や贈与者の判断だけで撤回や変更をすることができます。
遺言代用信託は,遺言と似ているのですが,いったん作った後に変えることができなくなるという不便なところがあるのです。
<遺言代用信託の変更(遺言・死因贈与との比較)>
あ 信託の変更の要件
信託の内容を変更するためには
原則的に委託者・受託者・受益者の全員の合意が必要である
詳しくはこちら|信託の変更の基本(信託内容を変更できる要件のバリエーション)
い 遺言の変更(比較)
遺言を作成した後に,遺言者だけで撤回・変更できる
詳しくはこちら|遺言の訂正(変更・撤回)の基本(全体・ニーズ)
う 死因贈与の変更(比較)
死因贈与は(遺言の変更に準じて)自由に撤回・変更できる
なお,負担付の死因贈与だけは自由な撤回・変更ができない
詳しくはこちら|死因贈与の特徴(遺言との違い・仮登記できる・自由に撤回できる)
3 信託の中に変更方法を定める方法
遺言代用信託では,将来の財産の承継内容を決めておくので,作った後に違う内容で財産を承継させたいという気持ちに代わることもあります。
しかし,前記のように,原則的に信託内容を変更するためには委託者・受託者・受益者の全員の同意が必要です。これでは,1人でも反対する者がいると変更できません。
そこで,遺言代用信託については,信託契約の中に信託の変更をしやすくする規定を入れておくことが好ましいです。
<信託の中に変更方法を定める方法>
あ 信託の変更をしやすくする方法
信託行為(信託契約)の中で,変更方法を規定しておくことができる
→容易に変更できるような規定を設定しておくことができる
詳しくはこちら|信託の変更の基本(信託内容を変更できる要件のバリエーション)
い 信託の変更に関する規定の主な項目
ア 変更の方法イ 変更を決められる者(変更権者)
4 遺言代用信託の変更に関するニーズと設定の例
遺言代用信託を作った後に変更したくなる状況にはいろいろなものがあります。大きく分けると,財産を渡す者と受け取る者の両方の立場で,前提としている事情が変わったということになります。
それぞれの立場にとって合理的な信託の変更の規定を作っておくと後から困ったことにならずに済みます。当然,将来生じることとして想定できないことが多いでしょうから,変更の方法(手続)をある程度緩和しておく方向性が好ましいでしょう。
<遺言代用信託の変更に関するニーズと設定の例>
あ 承継元(親)の立場の例
ア ニーズ
事情の変化によって,承継先を変更したい
イ 信託の変更の規定の例
第三者の判断で信託の内容(承継者)を変更できる
い 承継先(子)の立場の例
ア ニーズ
財産(特に株式)を自分が承継することを前提に行動する
→後から親が自由に撤回すると困る
イ 信託の変更の規定の例
信託の変更については(推定)相続人の全員の同意を要する
本記事では,遺言代用信託の成立後に変更することについて説明しました。
実際には,信託契約の設計の段階で,いろいろな状況変化を見越して変更に関する規定をしっかりと作っておかないと,後で思うように変更できずに困ることになります。
実際に遺言代用信託の利用をお考えの方や,既に作成した信託に関する問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。
2021年10月発売 / 収録時間:各巻60分
相続や離婚でもめる原因となる隠し財産の調査手法を紹介。調査する財産と入手経路を一覧表にまとめ、網羅解説。「ここに財産があるはず」という閃き、調査嘱託採用までのハードルの乗り越え方は、経験豊富な講師だから話せるノウハウです。