マイホーム購入のトラブルの種類・遭わないために/遭った場合の解決
1 マイホーム購入は『大きい買い物』→トラブルのダメージも大きい
2 マイホーム購入の典型トラブルのまとめ
3 不動産売買×不正なセールストーク|利益保証・環境保証
4 マイホーム購入トラブルを『回避するため』の方法
5 契約締結前によく確認することの間接的効果が2つある
6 マイホーム購入トラブルが発生してしまった後の解決法
7 トラブル発生後の解決は早さが重要
8 マイホーム購入トラブル|関連コンテンツ
1 マイホーム購入は『大きい買い物』→トラブルのダメージも大きい
マイホームの購入(売買)は,個人にとって,金額も高い,大きな買い物です。
とても大きな取引・決断です。
通常は,快適で新たな生活のスタートとなるという意味で,ハッピーなイベントでもあります。
一方,何らかのトラブルが生じると,金銭的・精神的なダメージも大きいと言えます。
実際の多くのトラブルの経緯やその解決の経験を踏まえて,『トラブル回避』や『トラブル解決』に関する概要を説明します。
2 マイホーム購入の典型トラブルのまとめ
マイホームを購入して,不幸にも,トラブルが生じたという実例が多くあります。
まずは,典型的なトラブルをまとめます。
<建物に関する『物理的』な欠陥>
ア 雨漏りイ シロアリの害ウ 建物構造上主要な部位の木部の腐蝕エ 給排水設備の故障オ 建築予定・設計と現状の食い違い
例;給排水設備・配管・PSの位置
カ 説明・表示と現実の違い(誤解)
例;2種類の床面積の誤表示・誤解
<土地に関する『物理的・法律的』な欠陥・不備>
ア 購入後に地中から産業廃棄物が出てきたイ 購入後に『文化財の埋蔵(掘削規制)』が発覚したウ 購入後に『地盤が弱い』ことが発覚したエ 購入後に『土壌汚染』が発覚したオ 購入後に『道路拡張計画の対象エリア』であることが発覚したカ 購入後に『河川拡張・水没』の予定があることが発覚したキ 購入後に上下水道の接続に高額の費用がかかることが発覚したク 購入後に土地の境界がハッキリしていないことが発覚したケ 購入後に『面積が足りない』ことが発覚したコ 購入後に,日照・騒音・悪臭の被害を受ける場所であることが発覚した
<建物の建築制限に関する『想定外』|例>
ア 購入後に『違法建築→建物増築不可』が発覚した
『検査済証』を得ていないなど
詳しくはこちら|違法建築→検査済証なし→増改築・用途変更・ローンNG|規制緩和方針
イ 購入後に『接道義務違反→建物再築不可』が発覚した
『建築制限付』なのにそのような説明がなされなかったケースなど
ウ 購入後に『耐震強度不足→大規模工事が必要』と発覚した
エ 購入後に『アスベスト使用あり→撤去が必要』と発覚した
<土地・建物に関する心理的な欠陥>
ア 購入後に『以前死亡事故があったこと』が発覚した
<建物の収益性に関する『想定外』(投資用・収益不動産)>
あ 『収益性』に関する事前の説明と,現実が異なっていた
ア 空室リスクを『小さめ』に説明されたイ サブリースによる『収入確実』をオーバーに説明されたウ 『表面利回り』のみを強調し『実質利回り』は説明不足だった
い 他の不利益な事情の説明が不足していた
ア 事業用ローンの『不利な内容』が説明不足だったイ 将来の売却見込みをオーバーに説明された
う 不正・強引なセールストーク
ア 社会経済の変動予測をオーバーに説明されたイ 特別な関係で『安く押さえた』と言われ急かされた
<建築工事の進行に関するトラブル|例>
ア 工事の進行の『遅れ』イ 建物完成時期の『遅れ』ウ 『仕様変更』の『増加費用』の負担
<売買契約の特約に関するトラブル>
ア ローン特約・資金調達特約
購入資金が調達できない場合に白紙解除できる特約
詳しくはこちら|ローン特約|全体・基本|内容・法的分類・トラブルの種類
イ 前提条件を設定する特約
典型例=農地転用許可・開発許可・建築
詳しくはこちら|解除できる特約・ローン特約以外|農地転用許可・建築条件・資金調達特約
ここでは,典型的なトラブルの種類(類型)だけの説明にとどめておきます。
各トラブルの特徴や解決法についての詳しい説明は別の項目に記載してあります。
リンクはこのページ末尾にまとめてありますのでご参照ください。
3 不動産売買×不正なセールストーク|利益保証・環境保証
不動産の売買の時には,セールストークが過剰になる傾向があります。
『セールストーク』で説明された利益や環境と現実が違っていたというケースです。
問題が大きくなりやすいのはリゾートマンション・投資用不動産の場合です。
マイホームの場合も問題になることはあります。
これらについては別記事で判例を中心に説明しています。
詳しくはこちら|セールストーク×法的責任|利益保証タイプ|値上がり約束・値下げしない約束
詳しくはこちら|セールストーク×法的責任|環境保証タイプ|眺望・日照・通風・騒音
4 マイホーム購入トラブルを『回避するため』の方法
(1)不動産の情報+契約書の内容をしっかりと把握する
マイホーム売買後に,欠陥や不備が発覚すると大きなトラブルとなります。
この発覚が,契約締結よりも前であれば,契約しないという確実なトラブル回避が実現できます。
そこで,事前に購入予定の不動産の情報をしっかりと入手することが重要となります。
一方で,契約書内容に不合理な条項があるために,売主の責任が回避される,ということもあります。
結局,不動産の情報と契約書の内容の両方をしっかりと把握することがトラブル回避の前提,と言えます。
(2)不動産の情報の把握と理解
通常,マイホームを購入する場合,仲介業者が関与しています。
仲介業者は,一定の重要な事項については,説明する義務があります。
詳しくはこちら|重要事項説明の対象となる事項は定められている
しかし,法律上の『重要事項』では,現実に『重要』な事項がすべて含まれているわけではありません。
例えば,建物の建築において,一見分からないような手抜き,がなされているかどうか,ということは『重要事項』に含まれません。
そこで,次のような方法で『不動産の情報の把握と理解』を徹底すると良いです。
<不動産の情報の把握と理解の方法>
あ 内見やそれ以外の時間帯で内部・周辺をよく観察する
い 仲介業者に欠陥・不備が生じやすい事項について質問する
回答は,売買契約書の『備考』や『特約』欄に記載してもらうとベストです。
それができないとしても,メール・録音など,記録化しておくとベターです。
う 購入予定者サイドで調査する
具体的には,コンサルタント・建築士に調査を依頼する,という方法があります。
当然ですが,コンサルタント等は信用できる方(会社)であることが前提です。
また,『事故物件』についての情報を蓄積しているサイトも有用です。
別サイト|大島てる|事故物件公示サイト
(3)契約書内容の把握と理解
売買契約書の内容の把握と理解も同時に進めておくとトラブルの未然な回避につながります。
<売買契約書の内容の把握と理解の方法>
あ 事前に契約書を受け取り,疑問を解消しておく
契約書の調印(締結)日より前に,調印予定の文面(契約書)を受け取っておくことが多いです。
購入予定者の方からも,契約書原案を事前にくれるように要請すると良いです。
難しい用語についても,仲介業者に質問し,疑問はすべて解消しておくべきです。
より慎重にチェックする場合は,契約書チェックだけを弁護士に依頼することもできます。
い 契約書調印日には全文の読み合わせを行ない,最終確認をする
契約締結日(調印日)には,関係者全員が揃って,契約書(や重要事項説明書)の読み合わせを行ないます。
一部でも省略せずに,全文を読み合わせるべきです。
内容確認の最終チャンスです。
少しでも不安に思ったことがあったら調印前にその場で質問すべきです。
仮に疑問が解消されない場合,調印しない(流す)勇気も必要です。
契約書の調印をしない場合,通常責任は発生しませんが,稀に例外もあります。
その場合はすみやかに弁護士に相談しておくことを強くお勧めします。
なお,みずほ中央では,このような案件を専門的に扱っています。
売買契約書等のチェックや,信頼できるコンサルタントのご紹介等も行っています。
5 契約締結前によく確認することの間接的効果が2つある
以上のように契約締結(調印)前にしっかりと確認しておくことで買うべきでない物件を買ってしまうということが回避できます。
さらに,2つ,副作用的なメリットもあります。
<契約締結前の確認を徹底するメリット>
あ 『事後的な責任追及を認めさせる』ということにつながる
説明内容を明確にしておくと,仮に後から不備・欠陥が見つかったら,『説明と違う』ということが言えます。
特に記録にしてあると,立証可能となるので,交渉や訴訟で有利になります。
い 仲介業者,売主が,『騙す』『曖昧に説明して言い逃れる』を防ぐことにつながる
確認を徹底するメリットは,トラブル後の責任だけではありません。
契約締結前のセールス(商談)段階に大きな影響があるのです。
確認や記録化を徹底すると,仲介業者や売主としては,後から『聞かれなかったから答えなかった』『そんな説明はしていない』と言い逃れることができなくなります。
要するに,仲介業者などが『騙しにくくなる』『説明を回避して責任を逃れる方法が取れなくなる』という効果があるのです。
6 マイホーム購入トラブルが発生してしまった後の解決法
現実に,残念ながら『マイホームという夢の実現』が『疑問・後悔に変わる』というケースもあります。
このように,マイホームを購入した後にトラブルが生じた,という場合にも,救済措置・解決方法はあります。
『トラブル』の内容がごく小さい問題である場合,『契約に含まれるリスク』として救済されないということもあります。
トラブルがある程度大きい場合は,法的な救済措置が適用されます。
解決の種類(類型)のうち,代表的なものをまとめます。
実際には,事情によっては,これら以外の形で解決に至ることもあります。
<瑕疵担保責任の具体的内容>
あ 修補請求
売主が修繕する・修繕費用を負担するという方法です。
い 損害賠償請求
十分に不動産を使用できなかったことについての損害賠償請求です。
う 解除
欠陥の程度が大きい場合,契約自体を解除できることもあります。
法的には,瑕疵担保責任だけではなく,錯誤や詐欺取消という規定を使うこともあります。
<手付解除による契約解消>
残金決済前で,一定の状況であれば,手付解除が可能です。
これは,既に払い済みの手付金を放棄することにより,契約を解消するものです。
手付解除では『理由』は不要です。
詳しくはこちら|手付を放棄することにより無条件の解除ができる;手付解除
<交渉→和解による契約解消>
売買トラブルについての実際の交渉においては,和解がまとまることも多いです。
和解の内容は幅広いです。
その1つとして,売主が物件を買い戻すというものがあります。
売主としても,改めて別の人に売った方が,トラブルが長期化するより良いと考えることもあるのです。
その条件(買い戻し金額)にもよりますが,実質的な解除と言えます。
7 トラブル発生後の解決は早さが重要
トラブルが発生・発覚した場合に,どのような解決が可能か,ということは多くの事情で決まります。
<トラブル解決を実現するポイント>
あ プロセスがどこまで進んでしまったのか
売買契約の実際の進み方は,『契約書調印(手付金支払)→残金決済・登記移転・引渡(転居)』というものです。
このプロセスが完了した時点でも,必ず救済措置が取れなくなるというわけではありません。
しかし,救済措置が適用されない可能性は上がってくることは事実です。
瑕疵担保責任などの法律上の規定は,一定の期間制限があるのです。
さらに,現実的に,古い話しとなってくると,証拠を揃えることが難しくなってきます。
詳しくはこちら|売買・請負に関する責任の期間制限と実務的な選択
い 実際に生じた不都合・損害の大きさ
う 証拠がどの程度確保できたか
一般的に,相手は素直に自分の責任を認めないことが多いです。
そこで,物件の現状や事前の仲介業者や売主の説明内容が記録(証拠)として確保できているかどうか,によって結論は大きく違ってきます。
以上のように事後的な解決を実現するカギは3つあります。
この点,仮に『い』や『う』が解決可能と言える場合でも,具体的アクションが遅いと,それだけで解決不可能となってしまいます。
ご自身で悩んだり考えたりしていて『手遅れになる』という傾向はよく見られます。
契約書調印後に,欠陥その他不審な点に気付いて,心配になる気持ちは当然のことです。
だからこそ,そのような場合はすぐに専門家に相談することを強くお勧めします。
8 マイホーム購入トラブル|関連コンテンツ
マイホーム購入に関するトラブルの特徴や解決について,ダイジェストで説明しました。
以上のテーマに関する詳しい説明は別に記載しています。
そのリンクをまとめておきます。
どうぞご参照ください。
上記のとおり,実際にトラブルが発覚・発生した場合は早めにご相談くださいますようお勧めします。
なお,みずほ中央では,不動産売買や建築に関するトラブルを専門的に扱っております。
当然,このような問題についてのご相談,ご依頼をお引き受けしております。
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